13 もう、いらない
昔、欲しかったもの。
父の。
母の。
友の。
……人の、温もり。
欲しくて欲しくてもたまらなかった。
一人はさみしくて、とてもとても寒いから。
――でももういい。
どんなに手を伸ばしても、どんなにつかもうとしても、全部指の隙間からこぼれてゆくだけとわかってしまったから。
だから、もういいのだ。
「いらない。何もいらない」
同じ時を生きられないなら、同じ思いを抱けないなら。
「もう、いらない」
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