12 その笑みは贖罪ゆえに



 いつでも笑っている青年がいる。
 どんなに辛くても、悲しくても、いつもほのかな笑みを浮かべ彼はただそこにいる。
 泣きたい時でさえ必死にそれをこらえていることに気づいたのはいつだったろうか。
 泣きたいなら泣けばいいのだと八つ当たり気味に言って返ってきたのは、少し歪んだもののやはり笑みだった。

「な、なんで君が泣くんだい?!」
 慌てた声にざまあみろと思いつつ、それでもまだその顔が完璧にはくずれないことに苛立った。
「あんたが泣かないからっ、だから代わりに泣いてんの!」
「いや……えっと、その……ありがとう?」
「なんでそこでお礼なのさこの馬鹿ーーーっ!!」
「うえええっ!?」

 とんちんかんな言葉に罵声を浴びせながら、それでも涙は止まらなかった。
「ごめん……でもやっぱり、ありがとうだと思うんだ」
「……なんで」
「僕は泣けないし、怒れないから。笑うことが、約束だから」
 だから「ありがとう」なのだと。
 言われて思い出す。彼が昔自分のミスで恋人を失っていることを。
 約束のためというよりも贖罪のためという方がふさわしく思えるその笑みに、また切なくなった。
「あんた……本当に馬鹿だ」
「……うん、そうだね」


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