04 唇にのせた想い お互いに「好き」だなんて口が裂けても言わなかった――否、言えなかった。 立場が。 周囲が。 運命が。 それを許してはくれなかった。 人目を忍んで、お世辞にも長いとは言えない逢瀬をくり返すのが精一杯で。それでも、けして離れられなくて。 ……今日もまた、二人は落ち合った。 でも、苦しくて切なくて、何よりも愛おしい時はすぐに過ぎ去ってしまうのだろう。 だから二人は、くちづけを交わす。 唇に、あふれんばかりの想いをのせて。 ――ああいっそ。このままあふれて溺れ死ねればよいのに。 戻る |