02 あの日に戻れるなら ずっとずっと、後悔ばかりだった気がする。 愛してると言ってくれた、あの人の手をはねのけてから、ずっと――。 正直になればよかったと、いったい何度思っただろう。 自分の名前を呼んでくれる彼女を、大切だと感じていたはずなのに。 弱い自分はその事実をけして認めなかった、認められなかった。 切り捨てたというならばそのまま思い出さなければいいものを、自分はそれも出来なくて。 今も目をつぶればあの日のままの彼女が見える。耳を澄ませば名を呼ぶ声が聞こえる。 あのとき差し出された手を取っていれば――彼女は今も生きていただろうか。 そんなこと、いまさら思っても詮のないこと。 それでも何度も愚かな考えをくり返してしまうのは。 「愛してた、のかな……?」 あの日に戻れるなら、それもわかるのだろうか。 戻る |