仮死、もういっちょう

死んだと思って安心していたらまた起き出してくる仮死

死んだと思って悲しんでいたらまた別の名前をもらっている仮死
こらこら、おまえはまださっき死んだばかりではないかの仮死
まだ涙さえかわいていないんだこちらでは仮死
それなのにおまえはもう生きてこようとしているのか仮死
おれたちがこっちでおまえを見送ったばかりだというのに仮死
そこでもうおまえはしっかり別な身体をもっちゃって仮死
でもそれを止める権利も義務もおれたちにはないぞ仮死
紛らわしいからこっちの死体は焼いておくぞ仮死
それともそっちに通し番号でもふっておくか仮死
どこまで続くこの仮死仮死
いったいこれじゃう生きているってなんなんだ仮死
もぐらたたきみたいじゃないか仮死
たたいてもたたいてもつぎからつぎから現れては仮死
トラブルをこさえては嘆いたり悩んだり恨んだりして仮死
こんな人生にだれがしたなんて辛いときは当たりちらして仮死
嬉しいときには自分のものだからえっへっへ仮死
反省も進歩もあったもんじゃない仮死
魂があればおまえのために泣いているぞ仮死
だからまた生まれさせられるんだ仮死
おれのことならほっといてさっさとそいつを焼いてくれ仮死
おれはまたおれでこの身体で生きていくんだから仮死
それがこのぼくだったりなんかしているわけだ仮死
このぼくが終わってまた別のぼくになってしまうのなら仮死
いったいぼくってなんなのだ仮死
ただの明滅する因果交流電灯なんか仮死
だったらぼくという自己に固執することはないぞ仮死
ひとにくれてしまえばいいぞ仮死
ぼくにはからだがあります仮死
どうぞおつかいください仮死
ところがそこまで割り切れなくて仮死
ぐずぐずと家族と暮らしているんだぞ仮死
だってぼくは妻が好きなんだぞ仮死
息子のことも大好きなんだぞ仮死
なによりこの自分というぼくが好きなんだぞ
これって幸せとかっていうやつか仮死
おもしろいから仮死
もうすこし生きててみっか仮死

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