ブダペスト西駅は19線路を持つブダペスト最大の美しい駅で、エステルゴム行きのレールバスが出発している。1000年前に王宮と教会が建築されてハンガリー王朝が始まった歴史的な街でドナウ川の向うはスロヴァキアだ。駅に入って19番線の車掌に尋ねるとこの電車で一つ次の駅で乗り換えれば良いと言う。昨年に1番線に入線していたレールバスを撮影していたので、当然西駅から始発と思っていたが違う様だ。ハンディ発券器でキップを購入して3両編成の背の高いMAV(ハンガリー国鉄)に飛び乗ると発車した。 |
ブダペスト西駅駅前にて | MAVの電車 |
次のラーコシュレンデゼー駅は広い操車場のある鉄道基地だった。乗って来た電車を見送ると左手に4両編成のレールバスが入って来て全べて乗客が降りる。この列車が折返しエステルゴム行であった。バスといっても車内は荷物棚が付いた座席も対面の広い造りである。14時05分直ぐに発車したが乗客は2割程度だった。二つ目の駅が地下鉄3号線と連絡していた為に乗客は5割に増えてから左にカーブするとドナウ川のトラスト鉄橋だ。空模様が怪しくなりブダペストの街が見える南の空からわずかな日差しがドナウの川面に注いでいた。 駅の間隔が短い為にたびたび停車する。最初は駅を数えていたのが、ゆっくり走るジーゼル車に眠気を誘われ途中で放棄してしまった。1時間を過ぎた頃に対向列車待ちで暫く停車した駅は残雪で白くなっていた。どんよりと曇った空の下をのんびり走ったレールバスは、右の方向にカーブして終着エステルゴム駅に到着したのは15時43分、乗客も疎らになっていた。 |
ドナウ川を渡る | レールバス |
線路を渡って道路に出ると、幅広い道が緩やかな坂になっている。坂道の方角には街の屋根越しに聖イシュトヴァーン大聖堂の伽藍が覗いていた。バスもタクシーも見当たらないので駅周辺を散策して構内に入ると、あまり明るくないがテーブルとカウンターのある休息所があった。ビール瓶が170Ft(約75円)栓付きで出されたので「ここで飲むよ」と合図すると紙コップと空き瓶の代金20Ftを返却してくれる。ビール500tが65円で飲める勘定だ。地元の人が座っている席に着いてハンガリー語の数字を手話で教えてもらい、しばらく楽しんだ。 駅舎の建物も歴史が在りそうな古いものだが、現在も内部は手入れの工事中であった。入口扉の上に「鉄の車輪に羽の付いた紋章」が掲っていたが、ヨーロッパの鉄道小荷物切手でよく見掛けた図案だ。出札口でキップを購入すると硬券で嬉しかった。53q約1時間40分の乗車が348Ft(153円)とJRの6分の一の料金である。折返し列車が到着したのでホームに出ると車掌が駅で飼っている犬と戯れていた。冬の日の暮は早く、闇夜になった17時17分発の4両編成で再びブダペストに出発した。 |
エステルゴム駅の入口と紋章 | 出札口 | 車掌と駅員の飼い犬 |
4両のレールバスは両端が動力車で中間の2両は付随車となっている。デッキの出入り口部分は喫煙室でロング・シートが設置してある為に連結部に通路は無い。その為に車掌の検札は停車駅で車両を乗り継いで巡回して来る。タバコを吸っていると青年がやって来た。病院事務員で勤務帰りだと言って3日に一度通勤していると言う。そこへ車内の行商人がやって来た。皮カバンが金属の料理セットになっていて1万フォリントで買えと言う、安いが「空港で機内持ちこみが面倒だ」と断っても必要に迫ってくる。もう一人が衣類を出して安いから買えといって来た。結局パジャマを約千円で購入して収まった。彼等はルーマニア人で行商の為にブダペストに行く途中だったが、私を日本人だと知って格好の餌食にしたのだった。私もビールのアテにしていた残り物のピーナツを提供して結構楽しんでいた。 |
自分とハンガリー青年 | 硬券 | ルーマニアの行商人 |
ドナウ川を渡って地下鉄の連絡駅でルーマニア人と私達も下車し、3号線に乗換ることにした。彼等5人は賑やかに「バイバイ、グッバイ」とホームの階段を降りていった。私は青年と一緒に西駅に行き世界一美しいマクドナルドとして有名な店内に入った。店内は沢山の鈴蘭灯が飾られて、ファーストフード店とは思えない好い雰囲気のテーブルだ。西駅構内のショッピング・モールはもう西欧に戻ってきた様に明るくて活気があった。 1999年11月18日 |
ブダペストの地下鉄車両 | マクドナルドの店内 |