特別養護老人ホーム「樋谷荘」
平成17年度 事業実績

 ◆ 指定介護老人福祉施設 「樋谷荘」

平成17年度は、18年4月の抜本的制度改革を前に居住費・食費の全額利用者負担が10月から前倒しで施行されました。これにより、利用者の負担が増えたばかりでなく、介護報酬も合わせて減額されたため、施設にとっても大変な減収となりました。この前倒しにより、介護給付費は平成17年度予算ベースで1,300億円、平年度ベースでは3,000億円の減額が見込まれ、本年4月からは更なる介護報酬の減額や包括化が行われています。
増大する介護給付費の抑制そのものが制度改革の目的となり、「水際作戦」という基本理念を無視したすり替え理論により軽介護者を切り離し、効果の検証も不十分な「介護予防・予防給付」という観点からの限定サービスの押し付けを行う制度になっているのが現状です。

その様な制度改革の中で、17年度は「時代に即した組織としての職員意識の変革と、地域ニーズに対応できる介護力の更なる向上」を目標とし、どんなに施設の置かれる環境が変わろうとも、福祉に携わる上での基本的な意識や視点は変わってはならないとの認識から、業務の標準化とプロ意識の向上に努めてきました。具体的方策としては以前から継続している「個別ケア」「認知症ケア」「ターミナルケア」の実践を行う中で、利用者の尊厳をどう支えるかという視点で倫理観や福祉観を醸成する職員教育・人材育成を中心に取り組んできました。

そうした中、12月の天皇誕生日に際しては、天皇陛下より事業を奨励するための御下賜金が伝達されました。これは、全国にある全ての福祉施設・団体の中から17年度は61団体、愛媛県に於いては樋谷荘1施設が知事の推薦により選ばれたものであり、樋谷荘開設以来少しずつ積み上げてきた信頼が評価されたものとして、光栄に思うと同時に、今後も地域からの信頼を得られるようさらに努力して行かねばならないと思っています。

樋谷荘の3月末現在の平均介護度は、4.38と全国平均値3.72を大きく上回り、また、年間平均入居率は、全国平均の95.9%に対し、前年度と同じ98.7%となっています。死亡による退居者も年間で9名と開設以来一番少なかった前年度の8名に次いで少ない人数となりました。これは、協力医療機関との連携による体調変化への迅速な対応ときめ細かなチームケアによるサービス管理ができたことと、今回の制度改正でも施設運営基準上に位置づけられた感染症への対応を、これまでの樋谷荘におけるインフルエンザ予防対策指針や食中毒予防対策指針から「感染症対策マニュアル」として再編し、感染症予防対策委員会を中心とした予防対策を徹底することで、インフルエンザやノロウイルスなどの集団感染を出さないケアができたことの成果であると思います。

年々入居者の要介護度が高まる中、現在樋谷荘入居者の平均年齢は約87.1歳、90歳以上の方が31名在籍され、その内、最高齢の106歳の方2名を始め、100歳以上の方が6名在籍されています。

「リスク管理」の面では、「身体拘束廃止検討委員会 平成17年度報告書」より、転倒・転落等の年間事故発生件数は161件(前年度131件)で、その内入院につながる事故は0件(前年度1件)、ヒヤリハットケースの報告件数は360件(前年度547件)となっています。ヒヤリハット報告件数が前年度より減少し事故報告件数が増加しているのは、予防的な意味も込めて、事故の捉え方のボーダーラインを引き下げ、事故の概念の幅を広くした為であります。毎月のヒヤリハット報告書と事故報告書を集計し、リスクマネジメント委員会で傾向と対策を検討し、職員間で周知徹底することで、大きな事故を未然に防ぐよう努めています。

「人材育成」の面では、年間53件の外部研修に、延べ83名が参加し、これまで通り内部での研修報告会を定期的に行うことにより、研修成果を一人のものとせず職種を超えて知識を広め、他職種の業務の理解にも繋げています。また、資格取得についても介護福祉士の受験資格のある正規の介護職員は、全て有資格者となったため、17年度は受験資格のできたパート職員が2名受験し、1名が合格しました。介護支援専門員の試験にも2名が合格し、4月からは、居宅介護支援事業所のケアマネージャーを兼務することになっています。常に向上心を持ち勉強する姿勢を皆が持つことで、お互いが刺激しあい、かつ、自主的に勉強会を開き、疑問点は上司や仲間に質問するなど、施設内のコミュニケーションも良好となっています。

実習生・研修生等の受入については、年間の延べ受入人数は573名となっており、常時外部の人が施設にいることにより、施設内の風通しも良く、職員のモラルとレベルの向上にも大いに役立っているものと思っています。加えて18年度は、これまでも受けてきた愛媛県教育委員会からの長期社会体験研修事業で、教職員を1年間に亘り受け入れて行く予定となっています。
最後に、本年4月には、初めて医療報酬と介護報酬の同時改定が行われ、医療機関・介護保険事業者ともに厳しい中身の改定となりました。最初にも触れましたが、特に、特養では10月からの前倒し分を含め3.45%の減額となり、これまで利益率の高かった在宅関連事業についても、大幅な減額と包括化が行われ、新規参入事業者も多い中、更に厳しい時代へと突入しています。そのような中で、生き残ってゆくためには、やはり介護事業の基盤となる「介護力」「組織力」を高め、常に「サービスの質の向上」を意識した取り組みを実践するとともに、今、地域に求められているものは何かを見極める目を持った組織・集団でなければならないと思っています。また、利用者に質の高いサービスを提供して行くためには、利益を生める運営も大切なポイントとなるため、職員一丸となり、更なる事業能率の向上にも努めて行きたいと思います。

短期入所生活介護事業では9床のベッドに対し、年間利用率74.4%、1日平均6.7名、延べ2433名の利用となり、前年度よりやや増加しています。介護度4〜5の利用者が多く、平均年齢も87.5歳と高くなっています。短期入所についても認知症の方が多くなっており、在宅での介護は大変になっていることが想像され、これまで以上に上手く利用していただけるよう、これからも柔軟な受け入れ体制を取りたいと思います。
通所介護事業では、年間延べ利用者数が5139名、生きがいデイが延べ300名、身体障害者デイが44名で、計5483名、1日平均22.3名の利用となり通所介護事業単独では年間延べ259名の利用者増となっています。通所については、17年度より新たにパート職員1名を配置し、人員不足による減算請求が出ないよう対応してきました。また、通所サービスは送迎費用の包括化や軽度者の報酬が減額されるなど、今回の介護保険制度改革の一番影響の大きい部分であり、今後は予防通所介護事業の指定や土曜日の営業開始、昨年度から取り組んでいる夕食後までの時間延長サービスの利用拡大を図って行きたいと思います。
在宅介護支援センター事業は、専任の社会福祉士による年間800件の実態把握と1206件の相談への対応と、健康フェスティバルや思いやり体験の他、地域に出て行っての介護予防教室を年間12回、延べ227名の参加者を得て開催しました。
在宅介護支援センター事業は、市からの委託事業として平成3年から受託してきましたが、17年度で「在宅介護支援センター事業」としての委託は終了し、18年度からは新たな制度として市が設置する地域包括支援センターのブランチとして、その窓口業務などの委託を受けることとなります。
 居宅介護支援事業は、2名の専従の介護支援専門員と兼務の5名で対応してきました。3月末のケアプラン受け持ち件数が194件で、年間給付管理総数が1853件、訪問調査は年間126件となっています。年間給付管理総数は対前年比で128件の増となっています。

 


     【入居定員】            70名

     【平均入居率】           98.7%

     【入居者の入居前居所】
        
居宅                10名
        介護福祉施設           4名
        介護老人保健施設       38名
        介護療養施設           1名
        医療機関             12名
        社会福祉施設           1名
        その他                4名
          計               70名

      【平均年齢】        87.10歳
         男            79.33歳
         女            89.26歳

      【入居者の要介護度】
        要介護1             0名
        要介護2             1名
        要介護3             9名
        要介護4            22名
        要介護5            38名
          計              70名

      【平均要介護度】          4.4

      【日常生活自立度】
         ランクA            7名
         ランクB           36名
         ランクC           27名
          計             70名

      【痴呆性老人日常生活自立度】
         痴呆なし            1名
         ランクT            2名
         ランクU           15名
         ランクV           27名
         ランクW           17名
         ランクM            8名
           計             70名

      【年間事故発生件数】        161件
          内 入院事故          0件

      【年間ヒヤリハット件数】     360件

      【年間研修参加件数】        53件

      【年間延べ研修参加者数】      83名

      【有資格者数】
         介護支援専門員        12名
         社会福祉士           5名
         介護福祉士          35名

      【実習生・研修生等受入人数】
         福祉実習     5校  延べ  429名
         ワークキャンプ  10班  延べ  68名
         その他の研修生 5団体 延べ 76名
                計            573名

 

◆短期入所生活介護事業所 樋谷荘

 

短期入所生活介護事業は、利用率が1日平均6.6名、73.6%となっています。15年度に比較し、介護度3〜4のご利用者の増加が顕著で、ご利用者の平均年齢も86.7歳と高くなっています。短期入所についても認知症の方が多くなっており、これまで以上に上手く利用していただけるよう柔軟な受け入れ体制を取って行きたいと思います。

 
       【1日平均利用者数】       6.7名
       【1日平均利用率】       74.4%
       【要介護度別利用延べ人数】

         要支援              3名
         要介護1           168名
         要介護2           216名
         要介護3           515名
         要介護4           929名
         要介護5           590名
           計           2,433名

 

◆ 通所介護事業所 樋谷荘

 

 通所介護事業は、年間延べ利用者数が4880名、生きがいデイサービスが延べ278名、入浴サービスが51名で計5,209名、1日平均21名の利用となっています。通所サービスは、次期介護保険制度改革の一番影響の大きい部分でありますので、動向をよく見ながら予防通所介護事業の指定や昨年度から取り組んでいる夕食後までの時間延長サービスの利用拡大を図って行きたいと思います。

        【年間開所日数】        246日

        【年間実利用者数】       875名

        【年間延べ利用者数】    5,139名

        【1日平均利用者数】       21名

        【要介護度別利用延べ人数】
          要支援           783人
          要介護1        1,149人
          要介護2        1,151人
          要介護3          785人
          要介護4          763人
          要介護5          249人
            計          4,880人

        【生きがいデイ年間延べ利用者数】300人

        【生きがいデイ1日平均利用者数】1.2人

        【身体障害者デイ年間延べ利用者数】 44名




Copyright 2003. aibikai. All rights reserved.
hinotani
i@sea.plala.or.jp