第1章  研究の概要
 
1 研究主題
 
    「教師と児童のよりよい関係を目指した児童指導」
  今までの指導事例から自分自身を見つめ直して
 
2 主題設定の理由 
 
 主題設定の主の理由は次の4点である。
(1) 児童指導本来の考え方を知るため
  児童指導についてのイメージは、一般的に暗い。それは、今まで教師が子どもに対して行ってきた指導に、原因があるのかもしれない。しかし、児童指導は始めから暗いイ メージでスタートしたわけではないと思う。児童指導という用語はいつ頃誕生し、どの ような歴史的経緯を経てきたのだろうか。また児童指導本来の目的や定義とはいったい何なのだろうか、ということについて調べてみようと思ったわけである。
 
(2) 日常の児童指導上の悩みや行き詰まりを解消させるため
  自分の今までの児童指導を振り返ってみると、「廊下を走るな。」「教室で暴れるな。」 という否定的な言い方による指導と、「早く席に着きなさい。」「静かにしなさい。」という命令的な言い方による指導が多かったように思う。そのため、一時的に効き目はあ るが長続きしなかった、という悩みがあった。
  また、このような指導が続くと自分自身精神的に不安定な状態になってしまい、つい カッとなり、怒鳴ったり一喝したりしてしまう。その後何となく気まずい雰囲気になり、自分のとった行動に対して後悔したり、反省したりすることが多かった、という悩みも あった。
  今までの自分の児童指導は、過去に学生時代に受けてきた指導であったり、先輩や同 僚の教師の模倣だったりすることが多い。それでうまくいったときはよいが、失敗したときにはどのような指導をしていったらよいのだろうと、指導の行き詰まりを感じてしまうのである。
  このような悩みや行き詰まりが、何とか解消できないものかと考えたわけである。
 
(3) 自分の性格や価値観を見つめ直すため 
  こんな事を言ってしまうと教師として不謹慎かもしれないが、別になくてもよいので はないか、と自分で感じてしまう規則がある。しかし、他の教師から見ればどうしても 必要な規則でもあるわけだ。これは、一人一人の教師の性格や価値観の差から生じる問 題だと思う。それでは、なぜ自分はそのように考えたり感じたりするのだろうか。自分 の性格や価値観は一体どのようなものなのか。もしかすると、自分の児童指導にも影響 を与えているのかもしれない。是非この内留の期間に、自分自身をしっかり見つめ直してみようと考えたわけである。
 
(4) 失敗事例がなぜ失敗したのか、その原因と成功させるための方策を探るため
  同じことを何度言っても全く子どもがいうことを聞いてくれない。こちらがこんなに一生懸命話をしているのに、何故わかってくれないのだろうか。どうして自分の気持ち が子どもに伝わらないのだろうか。自分の児童指導のどこに問題があるのだろうか。その問題点を是非突き止めてみたいと考えたわけである。問題点がわかれば失敗事例も成功事例に導くことができるはずである。教師と子どもが、どのように向き合っていけばよりよい児童指導ができるのか、考えてみたいと思ったのである。
 
3 研究の内容
 
(1) 児童指導について
  ・いつ頃、児童指導という用語が日本で使われ始めたのか。また、どのような歴史的経緯を経  てきたのか調べる。
  ・児童指導本来の目的・定義について再確認してみる。
  ・児童指導のイメージはどのようなものなのか。また、今日児童指導とはどのように考えられ  ているのか、さらに、今後どう考えていくべきかを検討する。
 
(2) 自己の関わりを振り返って
  ・児童に対する見方の特徴をRCRTという方法で調べる。
  ・自我状態の在り方についてエゴグラムで分析してみる。
  ・コミュニケーションの特徴をThomas Gordon「教師学」の観点を参考にして検討する。