| どちらの作品も死んだ人を通してそこに残された人たちの経験が著されています。 「ハードボイルド」は、ある女性が不思議なまるで深い夜のような深い霧の中に住むようなそんな女性千鶴と一緒に生活をし、肉体関係を持つまでにいたっていました。その不思議な女性と別れしばらくすると火事で死んでしまう。 ある日主人公の女性はハイキングに行き、石ころが積まれた何か不思議な力を感じる祠を見る。夜になってやっと安宿にたどり着くが、そこで不思議な夜の体験をする。 夜明けを待ち遠しくなるようなそんな夜。 宿に着く前に寄ったまずいうどん屋の中では、バッグから知らない石ころが転がり、その後にそのうどん屋はボヤを出す。あの祠の石か?火事・・・・・死んでしまった千鶴との関係? 主人公の女性は、何回も千鶴の夢を見る。知っている千鶴とはなんとなく違う。そのうえ怪しい女性の訪問を受ける。宿屋で自殺した女性の幽霊。 主人公も千鶴も幽霊も不幸を背負った女性ばかり。でも千鶴は生活音の中に人間の暖かさを感じて生きていた。別れを持ち出した主人公は、千鶴がどう思っていたか心配だった。このいやな夜も千鶴の不思議な力か?しかし人の暖かさを知る千鶴は、最後の夢に出てきて、はじめに見た夢のいやな千鶴は私ではなく、今見ている夢がほんとの私という。千鶴は主人公が邪悪な祠を見たので心配になってついてきた。 うどん屋がボヤで終わったのも千鶴が助けてくれたのか? 千鶴は邪悪なものから主人公を守ったようである。 主人公は、千鶴が自分を恨んでいたのではないかと心配であったが、この夢から、千鶴が心配をしていてくれたことがわかり、二人の生活を良い思いでとしていけるような終わり方である。 「ハードラック」は、脳死をした姉を通じて、姉の婚約者の兄と主人公とのふれあいである。婚約者を残し脳死状態の姉。それもその婚約者は弱気ですぐに婚約を解消するような人間。そんな姉が横たわるベットの前で知り合う。 お互いに生命維持装置をはずす直前の姉を前にして素直にはお互いの感情を出せずにいる。 維持装置がはずされた夜、人は死ぬ前に頭の中に響くような音楽響き渡るという話から、姉の好きなユーミンの歌を二人で歌う。このとき二人の姉へのこだわりが消えていく。二人はそれぞれの道へと進むが再開を約束する。 人の死は悲しみであるが、その死んだ人が愛してくれることによって自分は守られているというようなそんな不思議な気持ちを抱く二つの作品でした。 このように霊的なあるいは不思議な力のお話としてだけではなく、死んでいくときに自分が残す人々に何を残せるか、それが邪悪(というよりも悪い心か)なものか、幸せか。それは残された人々の心へしか残せないものである。 僕は不思議なお話という面ではなく、この心のこととして何か温かいものが読後に残りました。 |