YMOイングリッシュリーディングクラブ



なぜいま読解なのか?


 「日本人は英語の読み書きはできるけれども会話はできない」という迷信ほどたちの悪いものはそうそうありません。英会話をやれば英語ができるようになるように錯覚して英会話学校の門をたたき、「自動車学校は卒業すると車を運転できるようになる。英会話学校は何年行っても話せるようにならない」(03年9月の朝日新聞に掲載された読者の声)という結果に終わるケースがあまりにも多いです。TOEICスコアを見ても日本人がリーディングに限って高いスコアを出しているケースは稀で、リーディングスコアもリスニングスコアも低いケースがほとんどです。
 もちろん英会話は重要な英語スキルであって、音声抜きの英語学習はきわめて不自然なものです。しかし文法を無視して外国語を習得するのははじめて訪れた街を地図を持たずに歩き回るようなものです。文部科学省主導の、文法を軽視して会話を重視した「ゆとり教育」は散々たる結果に終わりました。外国語を学ぶ際に文法を軽視するほど非効率的な話はありません。肝心なのは、基礎文法を押さえた上で大量にインプットすることで、一番効率のいいインプットはレベルにあった英文をたくさん読むことです。母語に訳さずに英語を英語のまま理解できるような英語頭ができれば、英会話も難なくこなせます。


日本の英語教育の現状
 
 日本の学校英語では従来、「読み書き中心」の英語教育が行われてきました。それならばリーディングはできるようになってもよさそうなものですが、現状はそうなっていません。一般的なTOEICスコアが低いのみならず、学校で英語が得意だったはずの公立中高の英語教員が、「せめて英検準1級は取得するように」と文部科学省から督励されている始末です。中学高校大学と十年にわたって英語を勉強しても英検準1級すら取得できず、英検2級合格程度(できのいい高校生レベル)に甘んじているケースが多いということは、日本の英語教育には構造的欠陥があると言わざるを得ません。
 日本の英語教育の最大の欠陥は、やたらに難しい教材を使うことによるインプット不足です。この弊害は中学、高校、大学と上に進むほど大きくなっています。大学の英語教育に至っては、英字新聞の三面記事が満足に読めない学生にTIMEを読ませるようなケースさえあり、これでは和訳せずに英語を理解するような英語頭ができるわけがありません。「バカと煙は高いところが好き」なようで、できの悪い英語教育関係者ほど難しい教材を使いたがります。その結果、できの悪い英語教育関係者ができの悪い英語教育関係者を再生産するという悪循環が続いてきました。
 「自動車学校は卒業すると車を運転できるようになる。英会話学校は何年行っても話せるようにならない」理由は簡単です。自動車学校のように基礎を固めてから上に進む教育が行われてこなかったから、何年学んでも英語が使えるようにならなかったわけです。しかし、基礎をしっかり固めて自動車学校の路上教習に似た大量インプットを行えば、英語は誰でも使えるようになります。


YMO(やさしく・短く・面白い)英語
 
 テレビの弊害は以前より指摘され、思考力の発達を阻害するとも言われています。ただ英語に限らず外国語習得に関しては、テレビが理解できるようになれば大成功です。日本語を学ぶ外国人がスポーツ新聞の品の良くない記事を読めるようになれば、これも大成功と言ってよいでしょう。外国語習得というのはその程度のもので、難しく考える必要は全くありません。訳さずに理解できるレベルの英語をたくさんインプットすれば確実に英語センスが良くなります。英語センスとはつまるところ、英語を英語のまま理解し英語を英語のまま発信する能力です。訳してやっと理解できるような難しい英文を読んだところで、英語センスは養成できません。
 ただ英文をインプットする際に一番大変なのは、自分のレベルにあった英文を選ぶことです。やさしすぎても力はつきませんし、難しすぎれば途中で挫折してしまいます。そこで、TIMEとNEWSWEEKのやさしい記事をピックアップして読んでいけばはじめて英文雑誌を読む人にもとっつきやすいという発想で2002年3月から始まったのが、YMO(やさしく短く面白い)イングリッシュリーディングクラブ主催の「TIMEを読む会」です。開講四年あまりでTIMEとNEWSWEEKからピックアップした800本以上の記事を消化し、実用英検1級合格、国連英検A級合格、さらにはTOEIC900点といった実績が出ています。特筆すべきはTOEICにおけるリスニングスコアの大幅アップが見られたことです。これはけっして不思議なことではなく、大量のリーディングを通して英語を英語のまま理解する能力を高めていけばリスニングにも応用できます。リーディング能力の向上もめざましいものがあり、TIME誌の中でも難解なTIMEエッセイを読めるようになった参加者も少なくありません。 ただ、広い範囲の英語学習者の参加を可能にするため、TIME誌の子ども版であるTIME FOR KIDSから読み始めるのが最近の「TIMEを読む会」です。開講当初の方針であるYMO(やさしく短く面白い)はいまも継続中です。
 レベル的には英検準2級〜1級以上まで、TOEIC400点台〜900点台までの参加者が、英語を英語の語順で理解する同時通訳式訳読を中心に最新のニュースから学んでいます。YMO(やさしく短く面白い)イングリッシュリーディングクラブで、大量に正確に読む英語を是非お試し下さい。現在開講しているのは宮城県のみですが、掲示板には全国の皆様の参加、反論等、歓迎します。


おすすめ英語学習法


@大学入試対策
 大学入試は基本的に落とすために作られた問題です。そのため、意地悪なひっかけ問題や難問・奇問が少なくありません。長文問題の難易度も総じて高く、日本語に訳して考えざるを得ない問題が多くを占めており、「下線部訳」といった古色蒼然たる設問もいまだにあります。英語を英語のまま理解する英語頭を養成するには不適当なものが大学入試問題の大部分を占めているといっても過言ではありません。
 そのため、少なくとも夏頃までは入試問題に本格的に取り組むのを避けて、やさしい英語に大量に触れて英語を英語のまま理解するような英語学習がおすすめです。難関大学では、英語の合格ラインが五割程度ということも珍しくありません。やさしい英文を速く正確に理解できれば、難しい英文が出題される大学入試でも合格ラインに近づけます。
 ネイティブの小学4〜7年生向けのニュースサイトであるTIME FOR KIDS(http://www.timeforkids.com/TFK/)とそれをやさしく書き直した(http://www.timeforkids.com/TFK/magazines/ns/archive/)のような、ネイティブがネイティブのために書いた英文を、ネット上の無料英英辞典(http://pewebdic2.cw.idm.fr/)を使いながら多読すれば、自然に英語力を伸ばせます。
 力試しにおすすめできるのが実用英検で、大学入試よりはるかに素直な問題が出題されています。大学入試前に実用英検準1級が取得できれば入試で大いに有利になるでしょうし、1級が取得できれば英語を入試の切り札にできるはずです。悪問が少なくない大学入試英語も、英語力があれば難なく突破できます。


A英検対策
 大学入試よりはるかに素直な問題が出題されるのが実用英検とはいえ、大きな欠点があります。それは一次合格ラインが六割前後であるため、基礎が未完成なまま上の級を受験してしまうシステムになっているということです。たとえば、実用英検3級では中学卒業程度の問題が出題されるとはいえ、3級合格者の大半は中学英語が不完全です。客観式の一次試験で六割の得点でも合格できるということは、確信をもって正解できた問題が五割程度でも受かってしまうということです。その結果受験生は上に行くほど伸び悩み何度も受験する結果、日本英語検定協会が儲かる構図になっています。
 できれば九割、最低でも八割正解できるようになってから上の級を受験するのがおすすめです。受験料を節約するには、過去問を本番と同じ条件で解いてみて六、七割できるようになるまでは受験しないことです。
 準1級一次で九割くらい取れるようでないと1級合格はおぼつきません。逆に、下の級を完璧にできるようになれば上の級の合格はかなり近くなります。隣接する級の出題範囲は相当重なっています。
 中一終了時点で5級の英語を完璧にし、中二終了時点で4級の英語を完璧にし、中三終了時点で3級の英語を完璧にし、高一終了時点で準2級の英語を完璧にし、高二終了時点で2級の英語を完璧にするような確実な学習を重ねていけば、高三で準1級合格は十分可能です。


BTOEIC対策
 高額な受験料を徴収しながら試験問題の持ち帰りも認めないTOEICは、非常にあこぎな試験です。実用英検2級の過去問で少なくとも六割程度得点できるようになるまでは、TOEICのジュニア版であるTOEIC Bridgeを受験する方が受験料の節約になります。
 多様なレベルの問題が出題されるTOEICでも、やさしい問題を確実に解くのがスコアアップのカギです。ニュース記事をネイティブの小学2〜3年生向けにやさしく書き直したサイト(http://www.timeforkids.com/TFK/magazines/ns/archive/)では、大量の過去記事を無料で読めます。こういった訳さずに理解できるレベルの英文を多読し、徐々にネイティブの4〜7年生向けに書かれたTIME FOR KIDS(http://www.timeforkids.com/TFK/)のサイトに移行すればTOEICは自然にスコアアップします。ネイティブの6年生ならば楽に900点台に到達できるのがTOEICで、けっして知的水準の高いテストではありません。リスニングであれリーディングであれ、スコアアップに欠かせないのは、和訳せずに理解することによるスピードです。
 テクニックで取ったスコアとナチュラルなスコアでは、同じスコアでも実際の英語力には大きな開きがあります。「TOEICスコアは伸びたけどさっぱり英語が使えるようにならない」という悲喜劇を回避するにはテクニックに走らず英語力をつけるのが先決です。


C単語力増強
 単語力をつけずに英語力向上はあり得ません。その際に英英辞典の定義で覚えていくようにすれば効果倍増です。定義を暗記しなくても、以下のような四択問題を自作して、英英辞典の定義を読んで素早く理解できるようにしていけば英語センスが大幅にアップします。昔の旧制高校受験生のように英和辞典を暗記したところで英語センスは向上しません。単語を増やすにあたっても肝心なのは、できるだけ日本語で考えずに英語で考えることです。

例1)@〜Cの定義とA〜Dの単語を合わせてください。
@to get pleasure from something
Ato form a picture or idea in your mind about what something could be like
Bto become a member of an organization, society, or group
Cto gain knowledge of a subject or skill, by experience, by studying it, or by being taught
A imagine(Ex : *Imagine life without hot water.)
B enjoy(Ex :Sandra *enjoys her job in the city.)
C learn(Ex : What's the best way to *learn a language?)
D join(Ex :When did you *join the Labour party?)

例2)@〜Cの定義とA〜Dの単語を合わせてください。
@ to reduce or limit something, especially something good
Ato start a major activity such as a military attack, a public INVESTIGATION, or a new career or project
B to treat someone unfairly in order to get some benefit for yourself
Cto get rid of something completely, especially something bad
A exploit (Ex :Children are being *exploited in many of these factories.)
B eradicate(Ex :We can *eradicate this disease from the world.)
C curtail(Ex :The new law will *curtail police powers.)
D launch(Ex :The organization has *launched a campaign to raise $150,000.)

例1)は誰もが知ってる基本単語で、例2)はTIME, NEWSWEEK超頻出単語です。
正解は例1)@BAABDCC、例2)@CADBACBとなります。
 未知の単語でも、英英辞典の定義と例文で素早く正解を導き出せるようになれば相当の英語力で、英語頭ができつつあると考えられます。

運営者

鈴木康 
運営者の略歴と論跡

活動内容

1.「TIME」を読む会&「TIME FOR KIDS」を読む会の御案内

開催日 毎週土曜日
場所 仙台市若林区荒町市民センター(022-266-3790)
時間 TIMEを読む会       (PM13:30〜17:00)
費用 1,000円/回(1回ごとにお支払いいただきます)
なお、最初の2回は無料となります。

2.掲示板
 最新のTIME,NEWSWEEKのYMO(やさしく・短く・面白い)記事を語彙解説と共に紹介しています。可能な限りご質問にもお答えしますので、ご利用下さい。



3..TIME,NEWSWEEKを読むための単語集
 収録は千語未満ながら、最近の実用英検1級一次語彙問題は、毎回二割前後この単語集から出題されています。
 2005年英検一級一次で出題された語彙問題50問のうち15問をカバーしていました。
 (aloof, indigenous, clout, impeccable, culprit, replenish, disgruntled, galvanize, upheaval, treacherous, atrocity, inadvertently, oblivious, sprout, zero in on) 
 2006年はどうなっているでしょう?


                                        LastUpdate 2006.12..30
TIMEを読む会資料集第191号巻頭言(06年12月16日発行)
早いもので今年最後の資料集発行になります。「英語はコツコツやればうまくなる」というものでもなく、コツコツに加えてまとまった時間を投入しないと壁は超えられません。コツコツのみで到達できるのは英検2級レベル前後かと思われます。
 まとまった時間を投入すると徐々に英語の思考回路ができていきます。長時間学習で疲れないコツは「訳さないこと」、そのためには訳さないで理解できるレベルの英文を教材に使うことです。冬休みの間、ぜひお試しください。


TIMEを読む会資料集第190号巻頭言(06年12月9日発行)
TIMEの子ども版であるTIMEFORKIDSは、おおむね高校生レベルから読めます。ああいったものをたくさん読めば自然に英語力は伸びるはずなのですが、日本の大学入試ではやたら難しい論説文等が出題されるため、圧倒的多数の英語学習者は高校レベルで伸び悩みます。
 英語力を伸ばすにためには、レベルにあった教材を選ぶことが欠かせません。そして力がついてくれば適確な教材を選べるようにもなります。先日、「TIMEFORKIDSとTIME、NEWSWEEKの中間的な教材はないか」という御要望を頂きました。おすすめできるのがCNNの記事の音声CDとスクリプトが一緒に発売されている。CNN English Expressです。 
 普段TIMEFORKIDSやTIME、NEWSWEEK を読むことに加えて、CNNの音声に触れて聞き取れなかった部分をスクリプトで確認すると理解度は高まります。漫然と定期購読するよりも、集中的に聴くのがリスニング能力アップのコツです。


TIMEを読む会資料集第189号巻頭言(06年12月2日発行)
TIMEを読む会にお越しの皆様は、レベル差はあっても英語力をつけたいという点では一緒だと思います。
 英語上達の理屈はそれほど複雑なものではなく、訳さずに理解できるレベルの英文を大量にインプットすれば誰でも上達します。英和辞典を使うのをやめて英英辞典を使えばさらに上達は加速します。そうすれば英語を英語のまま理解する「英語頭」ができるため、ハイレベルな英文もそれほど苦労せずに理解できるようになります。
 http://pewebdic2.cw.idm.fr/では、ロングマン英英辞典が無料で使えます。
 http://www.timeforkids.com/TFK/magazines/ns/archive/では、
TIMEFORKIDSの記事をやさしく書き直したものが無料で読めます。
 以下はネットで拾った、ギャグではなくどうやら真面目に書いているらしい大学教授の英語教育論です。(http://www2.he.tohoku.ac.jp/center/forum/gaikoku.htm)TIMEFORKIDが読めない学生にTIMEを読ませるようなことでは、「学生達に決意を喚起したにもかかわらず、成績は依然として悪く、平均点は30点台である」のも無理はありません。

(引用開始)
東北大学英語教育の危機的状況
言語文化部教授 野中 克彦

◇東北大学の学力レベル
 現在、本学では外国語教育改革に関する検討が行われていて、それはそれで結構なことなのだが、正当な見方に基づいた有効な議論が行われているとは認めがたい。その批判と提言を行う前に、一つのショッキングな事実を披露したい。
 それは1999年度前期の私の担当クラスの学生成績である。使用テキストはアメリカの週刊誌「TIME」である。工学部3年の「英語演習A」の履修人員は67名。放棄した者6名。100点満点で、0点6名、10点台9名、20点台11名、30点台9名。履修放棄者を除いて、実に61名中35名が40点にも達していない。平均点は37.27点である。

(中略)
 
◇学生にどのレベルを要求するのか
 確かに、注釈やマニュアルなしの実力のみで無作為にTIME誌を読むのは難しいだろう。例えば、コソボ情勢、NATOによる空爆に関する技術的な説明、インドネシアの人種問題、アジアの経済危機などの多岐にわたる記事の理解は、多様な知識が要求されて、研究者ですらまともに読めない者がいるのではないかと疑っている。学生が苦労するのは当たり前かもしれない。しかし、教室で一度詳しく読んで説明を受けた箇所からの出題であるとすれば、テストが0点ないしそれに近い点で終わるというのはいかにも異常ではないか。このレベルの英語を受け入れる能力が学生に完全に欠如しているが故に、読み直しても文意が全く頭に入らない、としか考えられない。

(中略)

【追記】99年度後期の成績が出た。前期の成績について、学生達に決意を喚起したにもかかわらず、成績は依然として悪く、平均点は30点台である。
(引用終了)


TIMEを読む会資料集第188号巻頭言(06年11月25日発行)
「英語ができる人」というと、通訳者のように訳す能力の高い人々のイメージが少なからずあります。ただ実際のところ通訳者の能力も、英語を英語のまま理解する基礎力の上に築かれています。そのためまっとうな通訳養成学校には、英検一級到達を通訳訓練開始の目安にしているところもあります。
 早い段階で通訳や翻訳に手を出すと日本語に訳して考える悪癖がつく結果、英語力アップが難しくなります。 効率よく英語を習得するには、日本語を介在させず学習を進めることが、欠かせません。
 音声教材を書き取る「ディクテーション」という練習方法があります。試してみるとわかるようにこれは猛烈に忙しい練習で、CNNの 全文ディクテーションなどは速記の心得でもなければ不可能と思われます。ただ、忙しさのあまり和訳するヒマがなくなるのは大きな長所です。ふと我に返ると、全然日本語を介在させずに英語だけで理解していることに気づくことがあります。
 CNNは速過ぎるという方には「VOA自己学習プログラム」のような速度を落とした英語がおすすめです。ポイントは日本語の混じらない英語だけの音声を書き取ることです。


TIMEを読む会資料集第187号巻頭言(06年11月18日発行)
 必修科目未履修問題があちこちで発覚しています。何とも馬鹿正直なごまかし方をしたもので、もし世界史の時間にアメリカの小学生の歴史教科書を副読本に使うようなやり方をしていれば言い逃れは可能だったかもしれません。そうすれば、世界史を履修した形式を保ちながら、入試に有利な英語を強化できたはずです。
 たとえ小学生の歴史教科書を読むのであれ、英語を道具として使えば英語力は飛躍的にアップします。いちばん力がつかないのがいわゆる試験勉強です。力をつけることよりも点をとることを優先するようなことでは力がつくわけがありません。  力をつければどんな試験でもいい結果を出せます。しかし逆は必ずしも真ではありません。大切なのは点取りに精を出すことでも正解を暗記することでもなく、正解に至る考え方を身につけることです。


TIMEを読む会資料集第186号巻頭言(06年11月11日発行)
 ヒアリングマラソンのアルク社に「タイムマラソン」という通信講座がかつてありました。内容的には充実していたにもかかわらずなくなってしまったのはたぶん、受講者減によるものと思われます。
 解説つきの通信講座でも、一般的日本人英語学習者がTIMEやNEWSWEEEKを読むのはたやすいことではありません。理由は簡単で、やさしい英文を読んだ経験が不足しているからです。しかしやさしい英文を正確に読めるようになれば、TIMEやNEWSWEEEKもそれほど難しくはなくなります。
 以下はTIME FOR KIDS, NEWSWEEKに最近登場した「挿入構文」です。

(A)Each year, judges choose a Peace Prize winner whose work for peace, in their opinion, is most important to the world.(TIME FOR KIDS)

(B)He has gone from being an obscure and not-so-powerful politician?Iran is a theocracy, remember, so the mullahs are ultimately in control?to a central player in the Middle East simply by goading the United States and watching Washington take the bait.(NEWSWEEK)

 内容は(B)が複雑とはいえ、同じ挿入構文であることは御理解いただけると思います。
(B)を読めるようになるには(A)を正確に読めるようになることが 不可欠です。
 あらためてTIME FOR KIDSのHPアドレスを御紹介します。

ネイティブの4〜7年生向けに書かれた大量の記事が読めるのが、
http://www.timeforkids.com/TFK/magazines/wr/archive/

2〜3年生向けにやさしく書き直された大量の記事が読めるのが
http://www.timeforkids.com/TFK/magazines/ns です。

やさしい英文を訳さずに多読すれば、英語は誰でもできるようになります。


TIMEを読む会資料集第185号巻頭言(06年11月4日発行)
 実用英検2級二次試験では、ずいぶん前から英文の音読が評価対象になっています。これは実に理に適った方針で、音読の巧拙を見ればだいたい英語力の見当はつきます。むやみやたらと読み間違いを重ねるようでは、正確な読解ができようはずはありません。
 もちろん音読だけで英語がうまくなるわけではないにしても、音読は英語学習の基本中の基本で、最近話題の脳トレーニング本も音読を推奨しています。「同時通訳的訳読」を中心にしているTIMEを読む会においても、音読の正確性と読解の正確性はかなり相関性があります。予習復習に音読を組み込むと非常に有効で、読解力アップにつながります。
 言葉を習得するにあたっては頭と体の両方を使うことが欠かせません。いい文章にはリズム感があるのは日本語も英語も一緒で、音読によってリズム感を体で覚えることができます。


TIMEを読む会資料集第184号巻頭言(06年10月28日発行)
 英英辞典には大きな学習効果があるとはいえ、とっつきにくいのは一面の事実です。しかし最近は「英英和辞典」というものがあり、なかでも英語による定義文の訳文がすべて掲載された以下の英英和辞典は超おすすめです。
 ワードパワー英英和辞典 (単行本) 島岡 丘 (編集)Z会¥ 3,360 (税込)
『merchant → a person whose job is to buy and sell goods, usually of one particular type, in large amounts → 通常ある特定の種類の商品を大量に売買することを仕事にする人 → 商人
dealer → a person whose business is buying and selling things → 物の売買を仕事としている人 → 業者、販売人、~商
seller → (しばしば複合語で) a person or business that sells → 物を売る人または企業 → 売り手、販売人、販売業者』
という記述がされているため、英英の定義文が無理なく理解でき、読むだけで英語センスがよくなります。


TIMEを読む会資料集第183号巻頭言(06年10月14日発行)
 英検の季節がやってきました。落とすために作られた大学入試とは違って実用英検は比較的素直な問題が多いです。やたら難しかった1級一次語彙問題も最近は改善され、TIME,NEWSWEEKを読んでいれば正解できるものがほとんどです。
 とはいえ、英検の問題の中にも、正解がないように見えたり、正解が二問あるように見えるようなひねくれた問題が散見されます。文法的、論理的必然性をもって正解を導き出せないとしたら、それは悪問と考えて差し支えないと思います。
 大方の試験は「力を測る」ためのもので、試験問題ばかりやっても必ずしも「力がつく」ことにはなりません。英語力を伸ばすためには、「力をつける」日常学習と、「力を測る」問題演習の使い分けが必要になります。


TIMEを読む会資料集第182号巻頭言(06年10月7日発行)
TIME,NEWSWEEKを読むにあたって基礎英文法はきわめて重要です。いわゆる五文型のうち第四文型はSVOOの語順となり、ふたつのOに関してO≠Oとなります。
We made her a book.(her ≠a book ) といった文が第四文型で、〜「に」〜「を」と解することができます。
 これに対して第五文型はSVOCの語順になりO=Cです。
They call her Ann. (her =Ann )
The news made me sad. (me =sad )
He named the dog Jun.(dog =Jun )
He made her happy.(her =happy )
といった文が第五文型で、
「OをCに」もしくは「OをCと」と解することができます。

文型を把握できればTIME,NEWSWEEKの一見複雑な文が容易に読みとれるのは次のような例です。

SVOOの文型
◇"The government says we Chinese are atheist, but I thought I should give the Christian view a fair hearing," Li says.
(http://www.msnbc.msn.com/id/13879416/site/newsweek/)
           ↓
◇"The government says we Chinese are atheist, but I thought
*I(S) should give(V) 〈the Christian view〉(O) 〈a fair hearing〉(O),"
Li says.
(http://www.msnbc.msn.com/id/13879416/site/newsweek/)
〈the Christian view〉(O)≠〈a fair hearing〉(O)

SVOCの文型
◇China's official buzzword these days is "harmony." Whether the audience is Chinese or foreign, rich or poor, Beijing's leaders are spreading the message: can't we all just get along? After becoming president in 2003, *Hu Jintao made the pursuit of a "harmonious society" his personal mantra.
(March 20, 2006 issue , http://www.msnbc.msn.com/id/11788162/site/newsweek/)
                 ↓
*Hu Jintao(S) made(V) 〈the pursuit of a "harmonious society"〉(O)   〈his personal mantra〉(C).

〈the pursuit of a "harmonious society"〉(O)=〈his personal mantra〉(C)

◇Although welfare reform was mainly a Republican project, President Clinton (who had pledged to end "welfare as we know it") provided general support, as did many Democrats who voted for the final bill. All agreed that the system was broken. *Bipartisanship makes big changes in policies more acceptable to the public by signaling a broad consensus.(NEWSWEEK,August 7, 2006 )http://www.msnbc.msn.com/id/14096483/site/newsweek/page/2/
     ↓
Bipartisanship(S) makes(V) 〈big changes in policies〉(O) 〈more acceptable〉(C) to the public by signaling a broad consensus.

〈big changes in policies〉(O)=〈more acceptable〉(C)


TIMEを読む会資料集第175号巻頭言(06年7月15日発行)
英文法の要所を意識しながら読むと、TIMEやNEWSWEEKも格段に読みやすくなります。以下は最近作成したビジネスマン向けの文法解説です。TIMEを読む会にお越しの皆様にはわかりきった内容でしょうけれども、お役に立てば幸いです。不適切な解説でしたらご指摘下さい。

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※整序問題の解説で、「ここは動詞→目的語の直結で切り離せません」といったコメントは、たくさんの方に何度もお届けしています。じつはこれは、英語を必要としている多くの日本人ビジネスマンに共通する弱点になっています。
なぜそうなっているかというと、日本語の基本構造は「主語→目的語→動詞」であるのに対して、英語の基本構造は「主語→動詞→目的語」だからです。
同じアジア人でも「主語→動詞→目的語」という構造の言語を母語にする中国人は英語の上達が早いという説もあるくらいで、「主語→動詞→目的語」という英語の語順、いうなれば英語の発想が身につけば、英語を読むに際しても書くに際しても確実にレベルアップします。たとえば英文を読んでいて意味が取れない際には、動詞の近くに目的語があることを頭に置いて読み直してみると意味が取れることが多いです。
I do hope you will understand the reasons preventing my attendance.
( なにとぞ,出席できない事情をお察し下さいますようお願いいたします。)のように、一文の中で動詞→目的語の直結が何度もあることも珍しくはありません。(ここでは、understand→the reasonsとpreventing→my attendanceが動詞→目的語の直結です)なります。
ただしすべての動詞が目的語をとるわけではありません。目的語をとる動詞を他動詞、目的語をとらない動詞を自動詞と言います。The sun rises in the east.におけるrisesは目的語をとらない自動詞です。太陽が東から昇ろうと西から昇ろうと東は東で、riseは太陽のみに関わります。in the eastは修飾語句で、たとえin the eastがなくてもThe sun rises.というひとつの立派な文です。一方、I raised my hand.におけるraisedは、my handを目的語とする他動詞です。I raised .では文になりません。自動詞にしかならない動詞や他動詞にしかならない動詞がある一方、文脈によって自動詞にも他動詞にもある動詞があります。
たとえば、boilという動詞のロングマン英英辞典による定義は以下のようになっております。
when a liquid boils, or when you boil it, it becomes hot enough to turn into gas
liquid boilsにおけるboilは「沸騰する」という意味の自動詞です。ここではliquidが主語になり目的語はありません。一方、when you boil itにおけるboilは直後のitを目的語とする他動詞で、「沸騰させる」という意味になります。itが指しているのは言うまでもなくliquidです。
また必ずしも単語が目的語になるわけではなく、
expect=to think that something will happenのように、that以下すべてが動詞thinkの目的語になるケースや、evidence(証拠)= facts or physical signs that help to prove somethingのように、to prove somethingという不定詞の名詞的用法が動詞helpの目的語になるケースもあります。常に意味を考えながら英文を作っていくことが肝心です。
それから、イディオム(熟語)の場合はイディオムの後に目的語が来ます。たとえば、いまや日本語になっているcareという単語は、英英辞典で以下のように定義されています。
care=the activity, skill, or profession of looking after someone who needs help or protection
ここは、look after(面倒を見る)というイディオム(熟語)があるから、 looking someone after とはならないわけです。look after全体を動詞と考えれば、この定義でも動詞(look after)→目的語(someone)の直結になっています。

※最近の誤読でencouragingを「奨励している」と解釈した例がありました。しかし他動詞的に「奨励している」のならば何を奨励しているのか目的語が必要になります。encouragingが単独で使われている場合は形容詞で「心強い」という意味になります。


TIMEを読む会資料集第174号巻頭言(06年7月8日発行)
タイムを読む会では「やさしい記事を正確に読む」ことを眼目にしているものの、あとで誤読が判明することがあります。
 先日読んだサッカーの記事で、
 
Tennis has adopted Hawk-Eye technology, which uses multiple digital cameras to track and predict ball trajectories in 3-D. Time was when the tennis, rugby-union and cricket establishments were bywords for conservative, 19th century attitudes to their games. Now it's football ? in many respects, the great modern game ? that looks set in its ways. If you think that makes sense, you didn't watch Japan vs. Australia in a bar with a bunch of outraged Sydneysiders.

「If you think that makes sense, you didn't watch Japan vs. Australia in a bar with a bunch of outraged Sydneysiders.となる理由がよくわからない」と仙台で申し上げていたところ、古川の参加者からset in one's waysは「凝り固まっている」という意味のイディオムであるという御指摘を頂きました。 
 なるほどそうすれば、「フットボールがいま凝り固まってるようだ。もしそのあり方をもっともだと思うなら、日豪戦を見てなかったんだ」となり、論理的にもすっきり流れます。
 「違和感を感じたら単語の意外な意味かイディオムの可能性を疑う」というのはTIME,NEWSWEEKを読む際の有効な教訓です。自戒をこめつつお伝えします。


TIMEを読む会資料集第173号巻頭言(06年7月1日発行)
日本人英語学習者が伸び悩む原因として、
◇日本語に訳して理解する悪癖
◇日本語の語順に直して理解する悪癖
◇やたら難しいものをやりたがる(やらせたがる)悪癖
あたりは三大悪癖と呼んで差し支えないと思われます。タイムを読む会で「訳読」というスタイルを採用しているのは、理解度を確認するための必要悪とお考えください。英語は和訳せず英語のまま理解するのが基本です。そのためには資料集の読み応えのある記事ばかりではなくTime For Kidsレベルのやさしい記事を多読する訓練が欠かせません。
 以下のサイトではTime For Kidsの記事と、2〜3年生向けに書き直した大量の記事を無料で読めます。
http://www.timeforkids.com/TFK/magazines/archive
 実力よりやさしい英文を読まないことにはなかなか、「英語を英語のまま理解する」ようにはなれません。しかし多読を通して日本語を介在させずに英語を理解できるようになれば英語の思考回路ができたことになります。そうなればしめたもので、ことさらに練習しなくても英会話も充分こなせます。


TIMEを読む会資料集第172号巻頭言(06年6月24日発行)
 TIME ,NEWSWEEKは論調の違いこそあれアメリカの体制側のメディアです。レベルは高いとはいえ、守備範囲には限界があります。資料集で取り上げたNEWSWEEKの記事に対する面白い反論をネットで見つけましたので掲載します。
 
This Anti-Imperialist Thing Isn't Over
The corporate media is on the war path against Latin American leftists, and they're willing to use any weapons in the war against socialism. Newsweek's weapon of choice is lies and half-truths, as is displayed in Ruchir Sharma's column entitled This Chavez Thing Is Over. What Sharma and his corporate allies fail to recognize is that this "Chavez thing" isn't about Hugo Chavez at all - it's about liberating Latin America from the grip of multinational corporations and empowering them to determine their own destinies. Sharma's thesis rests on two fallacious planks: the ideas that the leftward tilt of Latin America is a new phenomenon and that this radical shift is over.

The column begins with a passionate denunciation of the nationalization of natural resources by Hugo Chavez and Bolivia's Evo Morales, and then claims that this economic restructuring isn't indicative of Latin American leftism. This is far from the truth; the socialist economic measures of both Bolivia and Venezuela have been hailed by their populations. Morales and Chavez have both had consistent approval ratings topping 80%. Both leaders are following the will of their people; Morales' nationalization of the hydrocarbon industry was the result of a 2004 referendum in which 95% of Bolivians voted in favor of nationalization. Bolivia's program hasn't been in effect long enough to see the benefits, but Venezuela's state controlled oil industry has reaped huge profits. These profits translate directly into social programs and poverty relief for the average Venezuelan, including programs stressing literacy and public health. Nationalization won't end with Bolivia and Venezuela; Daniel Ortega and Ollanta Humala, running for the presidencies of Nicaragua and Peru respectively, both promise to implement similar plans.

Of course, the concept that this trend towards socialist and radical economies is newfound is absurd. The Latin American socialist saga, and subsequent U.S. repression, began in 1951 with the election of Jacobo Arbenz Guzman, who's successful redistribution of corporate land caused the United States to replace the Guatemalan government with a brutal military junta. In 1971, Chile's Salvador Allende nationalized the mining industry and used the revenues to pay for education and food. Allende's plan would have come to full fruition had the United States not backed Augusto Pinochet's overthrow of the Chilean government. Ronald Reagan continued the war against the economic rights of sovereign nations throughout the 1980's by waging a terrorist campaign against the leftist Sandinista Government in Nicaragua. For the past ten years or so, the United States has managed to keep a lid on Latin America's socialist heritage, but the elections of Chavez, Morales, and their kin indicate that we can't keep the lid on people's liberation any longer.

Ruchir Sharma's anti-nationalization hypothesis is clearly not derived from any political reality, but rather from a desire to keep poor Latin Americans in economic shackles so that American corporations can expand their markets and resources. This "Chavez Thing" isn't over, it's only beginning.
posted by Mike Schafer at Sunday, May 21, 2006 (Think Socialistというサイトから引用)


TIMEを読む会資料集第171号巻頭言(06年6月17日発行)
 TIMEもNEWSWEEKもアメリカのニュース週刊誌ですので、アメリカの政治に関しての知識が必要になることがあります。ただそれほど高度な知識が必要なわけではなく、高校の地歴がある程度わかっていればかなり役に立ちます。そして断片的な知識よりもはるかに大切なのは歴史的因果関係です。
 インターネットを検索したところ、
「民主党はなぜ南部諸州の支持を失ったのか?」という歴史クイズがありました。解答は、1960年代の公民権運動を民主党が支持し、民主党のジョンソン大統領が1964年に公民権法案に署名したためです。これによって、南部諸州の白人保守層は、南北戦争以来の民主党支持をやめ、共和党支持へと変わりました。
 以前の資料集で扱った記事の
Lyndon Johnson famously predicted, after he signed the 1964 Civil Rights Act, that the South would be lost to his party for a generation. という予測が示すように、黒人に選挙権を与える公民権法案は民主党に対する白人保守層の離反を招きました。
 「一見民主的に見えるアメリカで1960年代半ばまで黒人には選挙権がなかった」、「一見進歩的に見える民主党も歴史的には南部の地主層を支持基盤とする政党で、奴隷解放には反対した」といった歴史の流れの要所を押さえておくと、記事の論理の流れも見えてくることが多いです。


TIMEを読む会資料集第169号巻頭言(06年6月3日発行)
國広正雄という英語の達人は、只管打坐(ただひたすら座る)という禅の教えをもじって只管朗読(ただひたすら朗読する)という英語学習法を提唱しています。たしかに教科書を暗記するくらいになるまで読みこめば英語力の向上は間違いないでしょう。ただこれは、モノの乏しい戦中派の英語学習法という印象を否めません。
 現代人の英語学習法はもっと贅沢なものであっていいと思います。毎回の資料集の記事で、面白いと思えるものだけを徹底的に読みこんでみることをおすすめします。
 報道記事であれ論説記事であれ、よくできた記事を読みこんで英文の構造を自分の中にたたき込めば、新しい記事を読む際の武器になります。日本のメディアではなかなかお目にかかれないような論理性をもった記事を読みこめば、論理的思考力も伸ばせます。
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TIMEを読む会資料集第168号巻頭言(06年5月27日発行)
 TIME FOR KIDSで生じた誤読と、TIMEやNEWSWEEKを読んだ際の誤読が全く同じパターンであることは珍しくありません。
 たとえば、以下はTIME FOR KIDSを読んだ際の誤読です。 

◆Nemo, Woody, Sully and Jimmy Neutron are big movie stars. But they share another significant trait: All four are male. Where are the females? That's the question posed in a recent study of popular kids' movies. The answer: For every female character, there are three male characters. (× すべての女性登場人物に対して、三人の男性登場人物がいる)Just 28% of the speaking characters in G-rated kids' movies are female.

正解は、「女性登場人物ひとりに対して、三人の男性登場人物がいる」となります。
everyは必ずしも「すべて」ではなく、「から毎」という意味を知っていれば避けられる誤読で、それができれば以下のNEWSWEEKの一文も正しく読めるはずです。

◆After all, Indian entrepreneurs accounted for one of every three Silicon Valley start-ups.

 TIME FOR KIDSを正確に読めるようになることは、TIMEやNEWSWEEKを読む際の必須条件です。


TIMEを読む会資料集第166号巻頭言(06年5月13日発行)
 ホームページの掲示板に「誤読の研究」を掲載しています。とりあげた誤読はいずれも英語学習者の参考になる誤読で、突飛な誤読は除外しています。同じような誤読を繰り返さないように注意するだけでも相当の進歩が見込めます。

 以下のふたつの誤読もじつに勉強になる誤読です。
> TIME FOR KIDSのA Very Happy Homecomingという、炭鉱事故の後で奇跡的に生還した鉱夫の記事を読んでいた際に、以下のような誤読がありました。
> ◆McCloy's friends and family have stood by his side. He says they are responsible for his recovery. (×彼が言うには、彼らは彼の回復に責任がある)"The people who are there for you create a world where you can get better," he said. "It's love, really."

◇responsibleには、「責任がある」という意味に加えて「原因である」という意味もあり、しばしば肯定的な文脈で使われます。
 以下はマクミラン英英辞典の定義と用例です。

※responsible for : if something or someone is responsible for a situation or event, they are the cause of it:
 ・He was responsible for the accident.

 正しくは、McCloy's friends and family have stood by his side. He says they are responsible for his recovery. (○彼が言うには、彼らのおかげで彼は回復した)"となります。
 状況を考えれば「彼らは回復に責任がある」と解釈するよりも、「彼らは回復の原因である」すなわち「彼らのおかげで回復できた」と解釈するほうが自然でしょう。

> TIME FOR KIDSのA Farewell to Arms in Spainという、バスク独立運動の過激派であるETAの武装解除を報じた記事を読んでいた際に、以下のような誤読がありました。
> ◆A violent group that has terrorized southern Europe vowed to lay down its weapons last week. (×南ヨーロッパでテロ行為をはたらいてきた暴力集団が、先週武器を置くことを誓った)In a videotaped statement, masked members of the terrorist organization ETA declared "a permanent cease-fire as of March 24, 2006." ETA attacks have caused more than 800 deaths.
◇正しくは、A violent group that has terrorized southern Europe vowed to lay down its weapons last week. (○南ヨーロッパを暴力で震撼させてきた暴力集団が、先週武器を置くことを誓った)となります。
 以下が、マクミラン英英辞典による動詞terrorizeの定義と用例です。
※to frighten people by threatening them or by using violence:

・The leaders of the coup ousted the president and terrorized the nation for three years.
・This gang terrorized the entire community.

 すなわち動詞terrorizeには「(実際に)テロ行為をはたらく」という意味よりも、「(テロ行為)で脅す」という意味合いが強いわけです。
 terrorismという言葉はterrorから来ており、これは激しい恐怖や不安を意味します。terribleやterrifyとも関連のある言葉です。暴力そのものを意味する日本語のテロの意味合いと、英語のterrorizeの意味合いは微妙に違いますので、日本語に引きずられない解釈が必要になります。

 ※多くの誤読は、英単語に対応する日本語の意味を固定的に考えることから発生しています。
 英語は外国語である以上、日本語の単語とぴったい合わない単語がでてくるのは当然のことで、そのことが頭に入っていれば、citizen=市民あるいはcritic=評論家と決めつけて、ほかの解釈の可能性を考えないような悪癖を脱却できます。たしかにcitizen=市民、critic=評論家という意味は英和にも英英にも掲載されていますが、citizen=国民、critic=批判者という意味合いで使われることが多いです。外国語を学ぶにあたって一番肝心なのは外国語の発想を理解することです。いちいち母語におきかえないと気が済まないような保守的なことでは、上達はどうしても遅れます。日常的に英和辞典を使うのを我慢して英英辞典を使うようにするだけでも、かなり英語センスはよくなります。


TIMEを読む会資料集第155号巻頭言(06年2月4日発行)
 日本語が流暢に使えても日本語の文法に精通している日本人はそう多くはありません。同じことは英語を母語にする人々についても言えると思います。しかし、ノンネイティブが外国語を学ぶに当ってある程度の文法知識は不可欠です。文法を知らないと、ネイティブなみの大量インプットが必要になります。
 いままで再三、英語はインプット量に応じて上達すると申し上げてきました。しかし日本で生活している以上どんなに頑張ってもインプットに限界があります。文法を知っていれば一のインプットを二にも三にもできます。
 きわめておおざっぱなことを言えば、
 「英語力=文法力×インプット量」としてもそれほど間違ってはいないと思います。
 もちろんタイムエッセイレベルの英文を読みこなすためには雑学やら論理的思考力も必要になります。しかし、一般的なニュース記事を読みこなす程度の英語力ならば、文法を固めてやさしい英文をたくさんインプットするだけでも十分養成できます。
 しばらく前に文部科学省が導入した「ゆとりの教育」というものは世紀の愚行で、文法を軽視して英会話の重視に走りました。これでは英語ができるようになるわけはありません。英会話をやっても大量インプットが困難なのは、英会話スクールに通った方ならよくおわかりと思います。さらに、文法重視という数少ない日本の英語教育の長所も「ゆとりの教育」によって壊滅させられたといっても過言ではないでしょう。「ゆとりの教育」の直撃を受けた現在の20代の人々の中には、中学英語どころか中一英語もおぼつかない例が少なくありません。
 最近TIMEを読む会の複数の参加者から「いい文法書はないか」というお問い合わせを頂きました。一般論として言えばいい文法書は必要事項をコンパクトにまとめた薄い文法書です。英文法解説(江川泰一郎著)のような古典的名著は厚すぎる上、翻訳の技法といった大多数の英語学習者には必要のない解説が相当掲載されています。
 これに対して、「超基礎がためわかる!英文法」(旺文社)は文字通り基礎重視でありながら、副詞とは何か?句とは何か?節とは何か?といった根源的なことまで遡っての解説がなされており、TIMEやNEWSWEEKを読む文法もかなり習得できます。Basic Grammer in useは全編英語で書かれていますがきわめてやさしい英語で、文法を学びながら英語力全般を強化できます。ALL IN ONEは最近新訂版が出ました。文字通り一冊で文法も単語も読解も強化できます。同時通訳的な直読直解による解説がALL IN ONEの特長で、首都圏ではベストセラーになっている英語学習書です。


TIMEを読む会資料集第154号巻頭言(06年1月28日発行)
TIMEを読む会の現在の資料集はTIMEとNEWSWEEKの短い記事4本から構成され、難易度はやさしいものから難しいものまで多様です。YMO(やさしく・短く・面白い)イングリッシュリーディングクラブとしてTIMEを読む会を四年前に始めた当初は、そうではありませんでした。
 その頃はとにかくやさしい記事を探して資料集を作っていました。やさしい記事の方が参加者にとって敷居が低いという思惑、下手に難しい記事を扱って立ち往生したり誤読したりするようなことがあっては参加者が居着いてくれなくなるという思惑があったのは事実です。ところが開講半年位たって参加者の顔ぶれも落ち着いた頃、割合やさしめに見えたタイムエッセイを資料集に入れてみたところ何とか読めてしまいました。結構評判が良かったので、それ以来タイムエッセイに限らず論説記事を一本資料集に入れるようにしています。最近ではかなり難しいものも扱っています。
 正直言ってこれは「想定の範囲外」の事態で、YMO(やさしく・短く・面白い)イングリッシュリーディングクラブという看板といささかずれが生じているのは否めません。とはいえ記事の面白さで英語学習が進む面もありますので、多少難しいけれども面白い記事は今後も扱っていくつもりです。
 注意していただきたいのは、難しい記事に挑戦すればすぐに読めるようになるわけではないということです。難しい記事を読めるようになるためには、やさしい記事をたくさん読む蓄積が不可欠です。開講当初の参加者が半年でタイムエッセイを読めるようになったのは、もともと英語力があったことに加えてひたすらやさしい記事を読んだ効果が大きかったと思います。外国語習得の基本は学問ではなくトレーニングですので、難しい記事を呻吟しながら読むよりもやさしい記事をたくさん楽しく読んだ方が効率が上がります。だから、どの記事を担当するか迷った際にはTime For Kidsの記事、もしくは資料集前半のやさしい記事を選ぶことをおすすめします。参加者から「私に合った記事を選んでください」と頼まれることもありますが、こういったご要望は常に歓迎します。
 「やさしくたくさん」という英語学習はいまや最先端の学習法といっても過言ではありません。comprehensive input(理解可能なインプット)という第二言語獲得理論もあるそうです。「英語は『やさしくたくさん』」といったスチューデントタイムズ編集長による著書も出ていますので、一読をおすすめします。「日本での伝統的英語学習は『難しく少し』だから効果が上がらなかった」といった指摘は傾聴に値します。「やさしくたくさん」は英会話にも有効です。英語で話しかけられていちいち日本語に訳してから返事を日本語で考えてそれを英訳するようなスローモーなことでは、とても会話のスピードにはついていけません。「やさしくたくさん」によって英語を英語のまま理解する思考回路とスピードを養うことができます。


TIMEを読む会資料集第153号巻頭言(06年1月21日発行)
まもなくTIMEを読む会は開講四周年を迎えます。これだけやっていますと英語力を伸ばせる参加者のパターンがある程度見えてきます。
 TIMEを読む会で英語力を伸ばせる人は、
 ◇ニュース英語が好きです。(嫌いでは続きません)
 ◇出席率と記事担当率が高いです。(記事を譲り合うような日本的悪徳を脱却しないことにはTIMEやNEWSWEEKは読めません)
 ◇声が明瞭です。(間違いを恐れて小声で訳読するようでは伸びません)
 ◇疑問点を抱え込みません。(人に聞いてみるとわかることは少なくないです)

 先日、英英辞典による語注がわかりにくいという声を頂いてなるほどと思いました。英英辞典にはさまざまなメリットがあるとはいえ、未知の単語の定義を読んですぐ理解できるようになるまでにはそれなりの訓練が必要です。英英辞典を使いこなすためにはとにかく、知ってる単語の定義を読みまくることをおすすめします。定義文に使われる語彙数は限られていますから、いったん習熟すれば未知の単語の定義も理解できるようになります。