金子みすゞ

金子みすゞの略歴  1903年(明治36年生まれ)。早くから天才詩人と期待されながら26歳で自殺した。

大 漁

土と草

積もった雪

まゆと はか

朝焼け小焼けだ
大漁だ
大羽鰮の
大漁だ。

浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう。

母さん知らぬ 
草の子を、
なん千萬の 
草の子を、
土はひとりで
育てます。

草があをあを
茂ったら、
土はかくれて
しまふのに。

上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしてゐて。
下の雪
重かろな。
何百人ものせてゐて。

中の雪
さみしかろな。
空も地面も見えないで。

かいこは まゆに はいります、
きゅうくつそうな あの まゆに。

けれど かいこは うれしかろ、
ちょうちょに なって とべるのよ。

ひとは おはかへ はいります、
くらい さみしい あの はかへ。

そして いいこは はねが はえ、
てんしになって とべるのよ。

「童謡詩人金子みすゞの生涯」の本を刊行した矢崎節夫氏はこの大漁の詩ををはじめて読んだ時の感想を次のように書いている。
それまで読んできた『日本童謡集』の中の作品が全て消えてしまうほどの、激しい衝撃を受けた。人間中心の自分の目の位置をひっくり返される、深い、優しい、鮮烈さだった。

矢崎氏は大学1年の時にこの一遍の詩に心を動かされ、みすゞ探しの旅が始まり、それから16年後に512編の作品に巡り会いそれらの作品を「金子みすゞ全集」として昭和59年、世に送り出している。
金子みすゞの作品は時代の壁が全くなくて時空を超えて今日本中に静かに浸透している。ぜひ一度は手に取っていただいてその中の一つでもあなたの心に響く詩を探し出して胸の奥深く刻み込んでいただければ幸です。

手元にあるみすゞ作品

■ 金子みすゞ生涯
■ わたしと小鳥とすずと
■ このみちをゆこうよ
■ 明るいほうへ
■ みすゞコスモス
■ みすゞさんの手紙
■ ふうちゃんの詩
■ ほしとたんぽぽ
■ 空のかあさま