決別
「もう、貴様の言いなりになって汚れ役をやらされるのは飽き飽きだ。俺は、俺のやりたいようにさせてもらう」 「儂の傘下から抜け出したところで、他の都市に潰されるのがオチだぞ」 「黙って潰されるつもりはないさ。潰し合いをしていた方が、貴様の機嫌を取っているより、余程楽だ」 「‥‥‥勝手にするがいい。お前がそのつもりなら、儂も、遠慮無くお前を潰してやる」 「できるものなら、やってみればいいさ!」 そんな捨て台詞を投げつけ、黒崎壱哉は、父親であり、太陽系内でも有数の巨大コンツェルントップでもある西條貴之と決別した。 これからは、自分を支配していたものと戦わなければならないのだ。 巨大な権力の庇護下から好んで抜け出そうとする者に味方などあるはずはなく、彼に従ったのは唯一無二の片腕である吉岡啓一郎だけだった。 壱哉が、西條のコンツェルンから、関連企業を含む地盤都市『AZUMA』ごと独立して数ヶ月が経った。 独立してみて初めて、壱哉は、好むと好まざるとに係わらず、自分が『西條グループ』の傘に守られていたのだと知らされていた。 各惑星には、数多くの都市国家群が林立している。 より大くの都市を傘下に収めたグループが権力を握る構図になっている為、コンツェルンや軍、果ては犯罪組織などが勢力範囲の拡大にしのぎを削り、さながら陣取りゲームのような様相を呈していた。 そんな中で、一都市が単独で生き残るのは簡単な事ではなかった。 独立直後から激増した、他の都市、或いは犯罪組織などの破壊工作に、壱哉は頭を痛める事となったのだ。 しかし、だからと言って今更誰かの庇護を受けるなど、壱哉のプライドが許さない。 大体、それでは今までと何も変わらないではないか。 自由とは、自分の手で守るものだ。 独立を考えた時から、壱哉はそう覚悟していた。 幸い、壱哉は今までのグループ経営から、この都市に最先端科学研究所や重機械工場などを確保していた。 金融業を経営の柱のひとつにしていた事もあり、資金には不自由しない。 必要なのは資金と技術、そして――戦力。 何も合法的な手段にこだわる必要もない。要は、負けなければいいのだ。 「‥‥‥ふん。小さな都市でもどれだけの事が出来るか、見ているがいい」 壱哉は、たくさんの『敵』に向けて呟いた。 |
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えらく短いですが、壱哉様、独立です!いや、一応このあたりの話は書いとかなきゃならんかなと思いまして。
ちなみに、『AZUMA』なんてどこから引っ張り出して来たかとゆーと、話の都合上、都市の名前を何とかつけなくちゃならなくて、ネットをうろうろしてたんですよ。そしたら、『黒崎』と言う苗字と言うのは栃木県に比較的多いのだそうで。で、栃木県で良さげな地名を探していてこれに落ち着きました。だって『UTUNOMIYA』とかだとあまりにもあからさまだし(苦笑)。
まぁ、西條氏は首都圏でしょうから、ちょっと離れた所と言うイメージで。