黒崎壱哉の密かな願望
明るい光を感じ、壱哉は目を覚ました。 薄いカーテン越しに、朝の光が差し込んで来ている。 ゆっくりと半身を起こすと、壱哉は隣に目を落とした。 樋口は、俯伏せになって、まだぐっすりと眠っているようだった。 いつもはもう起きて一仕事しているくらいなのだが、昨夜は久しぶりだった事もあって、樋口が気絶するまで『して』しまったのだ。 確か、壱哉がやっと樋口を解放した時には既に日付が変わっていたから、まだ目を覚まさないのも無理はなかった。 「‥‥‥‥」 眠っているせいで無防備な樋口を、壱哉は目を細めて眺めた。 樋口の裸など、何度も見ているものだったが、こうして改めて見るのも悪くない。 園芸は力仕事だ、と言うだけあって、上半身は筋肉質な方だ。 肩幅も広くて、学生時代、あんなにチビだったのが嘘のようだ。 腕以外はいつも覆っているから、外で作業している割には色が白い。 昔は童顔で女みたいだったせいなのか、男の割には肌もきめ細かい方だと思う。 引き締まった体は、抱き心地も悪くない。 あまりゴツいのは好みではないが、かと言って女のように華奢過ぎるのもつまらない。 樋口の体は、壱哉には丁度いい具合なのだ。 特に仕込むような事をした覚えはないのだが、敏感で、すぐに反応を返してくるのも申し分ない。 そんな事を考えていた壱哉はふと、昨夜の事を思い出す。 行為の痕をそのままに気を失ってしまった樋口をバスルームに連れて行ってやろうとして、抱えあげようとしたのだが。 はっきり言って、樋口の体は重かった。 おかげで、殆ど離れていないバスルームに連れて行くのが精一杯で。 シャワーを浴びさせた後は、色気も何もなく肩を貸して引き摺って来る羽目になった。 いや、同じ男だし、こんなに筋肉質なのだから、当然と言えば当然なのだが。 でも壱哉としては、所謂『お姫様だっこ』で運んでやる、と言うのが結構好きだったりする。 良く見れば、樋口の二の腕は壱哉より明らかに太い。 肩や背中の筋肉もがっちりしている。 壱哉も定期的にジムでトレーニングはしているから、デスクワークが仕事の『実業家』にしては、バランスの取れた体格をしているのだが、当然樋口程の力はない。 多分、樋口が壱哉を抱き上げる方が苦労しないのではないのだろうか。 そんな事を考えると、壱哉は急に面白くなくなってくる。 まぁ実際、抱き心地はいいから、女のような頼りない体になってしまわれても困るのだが。 それはそれとして、やっぱり、同じ男として面白くない。 と、睨み付けられている気配に気付いた訳でもないだろうが、樋口が身じろぎして目を覚ます。 「んぁ‥‥おはよう‥‥‥いちや‥‥‥」 まだ微妙に寝ぼけているような様子で、樋口は壱哉を見上げた。 「崇文。お前、ダイエットしろ」 「‥‥‥は?」 起き抜けにいきなりそう言われ、樋口はきょとんとする。 「園芸なんか運動には入らん。贅肉のついた奴なんかを抱く趣味はないからな。もう少し痩せろ」 「へ‥‥だって、この前は‥‥‥」 忙しいと仕事量の割に食事が不規則になってしまって、少し痩せてしまった樋口に「もっと食べろ」と言ったのは壱哉ではなかったか。 「うるさい。ちゃんと食って、ちゃんと運動しろ。わかったな」 「う、うん‥‥‥」 怒っている壱哉に逆らうとろくな事にならないから、樋口は訳が判らないながらも頷いた。 しかし‥‥そんなに、自分は太ってしまったのだろうか? ここしばらく、あまり食べていなかったはずなのだが。 いや、それがかえってリバウンドしてしまったのだろうか。 自分で思っているより凄く太ってしまって、それで壱哉の機嫌を損ねてしまったのか? 深く考え込んでしまった樋口を横目に。 これから、ジムでの筋力トレーニングを少し増やそう、と壱哉は心に決める。 ボディビルダーのような筋肉をつける気は毛頭ないが、量より質だ。 今度来た時‥‥には無理としても、そのうち、樋口をお姫様だっこで連れ歩こう。 樋口が知ったら、真っ赤になって逃げ出しそうな事を目標に掲げる壱哉であった。 |
END |
だいえっとが必要なのはお前だろう、と自分自身に突っ込みたいです、はい。運動不足の雪だるまな体形してるもんなぁ。
あからさまなやっつけ‥‥(もぉえーっちゅーに)。いや、りにゅーあるで無駄に時間を食ってしまったもので、連休なのに何もやってなかったんですよ。
でも、リニューアルだけで何も更新がないってのもあんまりだよなぁ、と三十分くらいで書いてしまったものです。
オトコって、結構どーでもいい事にこだわってしまったりするものだと思います。あ、壱哉様は特にかも知れない。
攻め壱哉様って、絶対、樋口に負けると面白くないと思います(苦笑)。まぁ、自分がゴツくなるのは嫌いだと思うので、ちょっぴり筋肉を鍛える程度だと思いますけど。とある方の描かれた、樋口をお姫様抱っこしている壱哉様にときめいたんですが、実際にはツラいと思うんだよなぁ。