プレゼント
壱哉の誕生日が六月六日だと聞いたのは、その二日前だった。 確か、何かのきっかけで誕生日の話になって。 知り合った後に徹底的に調べられていたらしいから、当然壱哉は新の誕生日も何もかも知っている。 一方的に知られているのが面白くなくて、新も壱哉の誕生日を訊いてみたのだ。 壱哉は一応教えてはくれたのだが、何か触れたくない事でもあるらしく、すぐに話を逸らしてしまって、それ以上何も訊く事が出来なかった。 こうして一緒に暮らし始めてから、壱哉が今まで色々あったらしい事は薄々見当が付き始めていた。 家族にはあまりいい想い出がない事、学生時代からもう企業家として歩む道を決められ、普通の学生のような気楽な生活を送って来た訳ではない事、金持ちで色々な物を与えられながら育っても、新が考えていたような恵まれた生活ではなかった事‥‥。 勿論、壱哉がそんな過去を口にした訳ではないし、新も強いて具体的な話を聞こうとは思わなかった。 しかしこんな風に、壱哉が暗い影のようなものを見せる時、新は壱哉の中に刻まれた深い深い心の傷を感じさせられる。 そして、何も知らない自分が不用意にそれに触れてしまった事が、酷く悔やまれるのだ。 そんな事もあって、その時は適当に誤魔化して話を打ち切った。 「あの‥‥吉岡さん」 翌日、壱哉が仕事に篭っている時、新はこっそり吉岡に訊いてみた。 壱哉が学生の頃から共にいる吉岡ならば、何かを知っているかもしれないと思った。 「黒崎さん、誕生日にあんまりいい思い出ないの?」 新の言葉に、日頃動じる事など殆どない吉岡が、言葉に詰まった。 「あ‥‥ごめん、悪いこときいちゃって‥‥‥」 慌てて、新は謝った。 「いえ‥‥そうですね、壱哉様はあまり、誕生日を祝う、と言う行為を良く思われていないようです」 「そうなんだ‥‥‥」 いくら子どもではないとは言え、自分の誕生日を祝うのが嫌だなんて、とても寂しい事だと思う。 まるで自分の事のように表情を曇らせる新に、吉岡は少し困った顔をする。 「誕生日の事を言ってしまうと、不機嫌になられますが‥‥でも、『気持ち』を表すのは良い事だと思いますよ」 労わるような柔らかい言葉は、新と、壱哉に向けられたものだろう。 きっと吉岡は今まで、壱哉の『誕生日』をさりげない気遣いで祝って来たに違いない。 その気持ちを考えると、とても頭が下がると思う。 同時に、そんな吉岡から壱哉の一部を奪ってしまっている自分を思って、居たたまれないような気持ちになる。 しかし吉岡は、新の内心を読んだかのように微笑した。 「壱哉様の誕生日を、私の分まで祝ってあげてください。壱哉様の生まれた日は、私にとっても大切な日なのですから」 「吉岡さん‥‥‥」 「『もの』でなくていいんですよ。壱哉様は、金で買える物には不自由しておられないのですから。あなたにできる事でいいんです」 「う‥うん‥‥‥」 それ以上、吉岡の笑顔を見ていられなくて、新は目を伏せた。 そんな様子に苦笑した吉岡は、宥めるように軽く、新の肩を叩いた。 そして、吉岡は書類の束を抱えて出て行ってしまう。 一人、残された新は、吉岡の消えたドアを見詰めた。 自分に出来る事とはなんだろう。 吉岡以上に、自分が壱哉にしてやれる事などあるのだろうか‥‥。 新は、ぼんやりとそんな事を考えていた。 六月六日。 壱哉は、今日は朝から外で会議に追われていた。 吉岡が気を遣おうとしても、誕生日の事をまるっきり忘れている壱哉がさっさと予定を入れてしまったのだ。 新は、いつものように広いマンションで一人で留守番だ。 結局、吉岡の言った『自分にできること』が何なのかは良く判らなかった。 昨夜も、眠れなくなる程考えたのだけれど、やっぱりどうすればいいのか判らない。 けれど何もしないのも嫌だったから、今日の晩御飯は壱哉の好きなものばかり作ろうと思う。 ‥‥もっとも、こうして壱哉が会議に追われている日は、会議が長引いて帰って来なかったり、外で食事を済ませて来たりする時が多かったけれど。 「まぁいいや。俺が勝手に作りすぎちゃうだけだし」 自分にそう言い訳して、新は夕食の支度に取り掛かった。 ――――――――― 陽が落ちて外が暗くなっても、壱哉は帰って来なかった。 勿論、まだ連絡の一本もない。 会議が予定より長引いてしまったりすると良くある事だ。 そうなるかも知れないとは思っていたけれど、それでも少し寂しい。 新は、今日何度目かのため息をついた。 舞い上がっていた訳ではないが、やっぱり壱哉の誕生日は――大切な人の誕生日は、どこか嬉しかった。 だからつい、弾む気持ちで夕食の準備もしたのだけれど。 『誕生日』と言うものを良く思っていない壱哉にとっては、今日はいつもと変わらない普通の日なのかも知れない。 白い布がかけられた食卓と、知り合いだと言う花屋から今日届けられた薔薇の花束が、どこか寂しく、まだ戻らない主賓を待っている。 「黒崎さん‥‥‥」 何となく切なくなって、新はテーブルに置いた腕に突っ伏した。 「‥‥こんなに長引くとは思わなかったな」 やっと会議を終え、壱哉はため息をついた。 「会議ひとつまともに進められないのでは事業の方も高が知れている。もう少し、人事配置を見直さなければならんな」 今日の会議が長引いたひとつの原因が、設営を行った中堅クラスの連中の手際の悪さだった。 外部の人間も入れての会議だったのだが、言いがかりに近い発言でかき回されたばかりかその対処法もまずくて、妙に話がこじれてしまった。 手足となって働く係長以下の人間がそこそこの人材だったおかげで、何とか収拾できたようなものだ。 あれが、設営した連中だけだったらまだ終わっていなかったろう。 「はい‥‥‥」 少しだけ、苦い表情で吉岡が頷く。 こんな連中が幅を利かせているから壱哉の仕事が減らないのだ。 「かなり遅くなってしまったが‥‥吉岡、どこかで夕飯でも食って行くか」 壱哉の言葉に、吉岡は少し呆れたような顔をした。 「なんだ?」 真顔で訊き帰す壱哉に、吉岡はため息をついた。 「壱哉様。今日が何日かご存知ですか?」 「?六月六日だろう」 「壱哉様の誕生日ですよ」 「‥‥‥‥‥」 まるっきり、見事に忘れていた壱哉は黙り込む。 「ですから、今日はすぐにお帰りください。マンションで待っている者がおります」 「吉岡‥‥‥」 そう言えば、吉岡は毎年、壱哉が強いて忘れようとしていた誕生日をしっかり覚えていて、手作りの食事など、小さな祝いをしてくれたものだ。 「私は、今年は遠慮させていただきます。‥‥それから、明日一日は予定を入れませんので、ゆっくりお休みください」 「‥‥‥すまんな、吉岡」 いつもながら、吉岡の気遣いには頭が下がる。 「お前の言葉に甘えて、帰らせてもらうよ」 立ち上がった壱哉に、吉岡は苦笑めいた、どこか複雑な表情を浮かべる。 「お誕生日おめでとうございます、壱哉様」 立ち去る後姿に声をかけると、振り返った壱哉は少し照れたような顔をしていた。 「あぁ、ありがとう」 おそらく初めて、素直に返された言葉に、吉岡は淡く笑って頭を下げた。 早足で歩いて行く壱哉の後姿を、吉岡はどこか寂しげな、しかし優しい表情で見送った。 ――――――――― 壱哉がマンションに帰った時には、もう十時近くになっていた。 「今帰った」 そう言って玄関をくぐるが、今日は出迎えがない。 まさか、拗ねて出かけてしまったのだろうか。 慌てて玄関先の靴を見ると、新のスニーカーはちゃんとそこにあった。 ホッとしながらリビングに入ると、やはり新はいない。 ふと、思い付いてキッチンに入ってみる。 と‥‥新がテーブルに突っ伏すようにしていた。 壱哉が入って行ったのにも気付かないのは、眠っている為らしい。 テーブルの上の布を取ると、もう全部冷めてしまっていたけれど、壱哉の好きなものばかりがずらりと並んでいた。 夕食の用意をして壱哉を待っているうち、眠ってしまったのだろう。 「一人で食べていてもいいのに‥‥‥」 もし壱哉が帰らなかったら、新は夕食抜きになってしまう所だ。 「‥‥‥まったく、呆れた奴だ」 何故か鼻の奥が熱くなって、それを誤魔化すのに、壱哉は小さく呟いた。 「おい、新」 肩を揺すられ、新は目を覚ました。 「あ‥‥黒崎さん」 顔を上げると、何故か上機嫌に見える壱哉の顔がある。 無意識に時計を見ると、もう十時を回っている。 「もうこんな時間かよ?!」 うっかり眠ってしまったとは言え、こんな時間まで戻らなかった壱哉も壱哉だ。 「遅くなるんなら連絡してくれよ、片付かねえだろ?」 今日のうちに帰って来てくれたのが嬉しいはずなのに、新はつい、ぶっきらぼうに文句を言ってしまう。 「あぁ‥‥悪かった」 壱哉は、上機嫌なまま、立ち上がってガスを止める。 「味噌汁は温めなおしたぞ」 意外な言葉に、新は目を見張った。 壱哉には悪いが、料理音痴で常識知らずのはずなのに良くそんな真似が出来たと思う。 しかし壱哉は、得意げに胸を張る。 「俺だって、多少は進歩するからな」 「‥‥自慢するようなことかよ」 憎まれ口を叩くが、壱哉は気にする様子もなく、味噌汁をよそって手渡して来る。 思わず受け取ってしまってから、新は壱哉に全部やらせてしまっている事に気付いた。 「そんなの、俺が‥‥‥」 しかし次に山盛りのご飯を渡されてしまう。 「あ、ありがとう‥‥‥」 自分の分もよそって向かい側に座った壱哉は、上機嫌で箸を取った。 呆然としている新に、壱哉はけげんそうな顔をした。 「なんだ、まだ食べてないんだろう?」 「そりゃそうだけど‥‥‥」 箸を取った新は、思い出して口を開く。 「吉岡さんは?」 「今日は戻らないと言っていた」 事も無げに言う壱哉に、新は戸惑った。 それは‥‥吉岡が気を利かせてくれたと言う事なのだろうか。 「明日は一日、休みだからな。一緒にいられる」 「あ‥そうなんだ」 壱哉の言葉がとても嬉しかったけれど、ちょっと照れくさくて、新は味噌汁を飲むふりをして誤魔化してしまう。 何故か胸がドキドキしてしまっているのは、久しぶりに壱哉と長い時間一緒にいられるせいだと思う。 何となく気恥ずかしくて、新は目を伏せて食べるのに集中するふりをしていた。 しかし、正直な新の顔は耳まで赤くなってしまっている。 そんな新を、壱哉は目を細めて見詰めていた。 ――――――――― 夕食の後片付けを終えてリビングに入ると、壱哉は薔薇の花束に添えられていたカードを眺めていた。 その表情が酷く柔らかいものに見えて、新は戸惑った。 「それ‥‥知り合いから?」 ちょっと気になって、新は訊いてみる。 「あぁ‥‥そんなものだ」 軽く答えた壱哉は、面白そうに新を見上げた。 「なんだ、やきもちか?」 「そっ‥‥そんなんじゃねーよ!」 思わず真っ赤になって言い返してしまったが、むきになったように聞こえたかもしれない。 楽しげな笑いを浮かべた壱哉は、立ち上がると、新の身体を抱き締める。 「なっ、なんだよいきなり‥‥!」 もがこうとするが、もう慣れている壱哉の腕はびくともしない。 「気にするな。俺には、お前だけなんだからな」 臆面もなく言われ、新は脱力してしまう。 いつも思うが、壱哉はこんなセリフを良く恥ずかしくもなく言えるものだ。 新がおとなしいのをいい事に、壱哉は新のシャツの下に手を入れて来る。 「ちょっ、こんなとこで‥‥!」 じたばたする間もあらばこそ、新はあっさりシャツを脱がされ、ソファに押し倒されてしまう。 全く、この手際のよさは何なのだろう? そんな事を考えていると、するり、と首に冷たいものが触れる。 「なに‥‥?」 抵抗する間もなく巻かれたそれは、花束に結ばれていた太いリボンだった。しかも、深紅の。 壱哉は、事もあろうにリボンを新の首に巻き、大きな蝶結びを作ってしまう。 結び終えると、壱哉は手を離し、実に満足そうな様子で新の姿を眺めている。 新に自分の姿は見えないが、そんなもの、見たくもない。 大体、見なくてもこのとんでもない姿は想像がつく。 慌てて解こうとした手は、しっかりと押さえつけられてしまった。 「なっ、なっ‥‥!」 とっさに抗議の言葉も思い付かない新に、壱哉は嬉しそうに目を細めた。 「この歳になって誕生日プレゼント、と言うのも何だがな」 「はあ?!」 壱哉の唐突な振る舞いと言葉に、新の頭はフリーズ寸前である。 普通、プレゼントにはリボンが付き物で。と、言う事は、もしかして自分が誕生日プレゼントと言う事なのか?! 混乱したままの新に、壱哉はそっと口付けて来た。 強引に押さえ込んだ手際とは裏腹な、とても優しいキス。 甘い唇に、新の身体から力は抜けてしまう。 情けない事に、ジーンズの前はそれだけで窮屈になってしまった。 勿論それは、壱哉にしっかりばれている。 「‥‥‥ふっ‥‥」 口付けたまま、熱くなったものを握りこまれ、新は眉をひそめた。 軽く、しごき上げられるだけで新の表情には余裕がなくなって行く。 切なげにも見える新の表情に、壱哉は一旦、手を休めた。 「あ‥‥‥」 唇が開放され、新は大きく息をついた。 その間に、壱哉は新のジーンズも下着も取り払ってしまった。 つまり、今の新が身に付けているのは首の真っ赤なリボンだけだ。 あまりにも恥ずかしくて抵抗しようとしたのだが、心得たように大きく脚を開かれて、壱哉の指が後ろの窄まりをつつく。 反射的に身体が震えるが、もう何度も壱哉を受け入れたその場所は、これから来る刺激と快楽を期待して緩み始める。 「んっ‥‥」 侵入して来た指に、新は頭を仰け反らせた。 しなやかな指はそのまま、ゆっくりと深くまで入り込み、弱いポイントを刺激する。 「ぁあ、ん‥っ‥‥」 思わず腰が跳ね上がり、吐息に甘い響きが混じる。 首元のリボンが、どこか悩ましげに、誘うように揺れている。 既に夥しい先走りを流しながら、熱く、固くなっているものを、壱哉は軽くしごき上げた。 「そんっ、な、さわられたら‥あ、あぁぁっ!」 ビクン、と背筋を反らし、新は高い声を上げた。 勢い良く迸った精が、壱哉の手を汚し、薄い胸肌にも転々と散る。 「あ‥‥‥」 性急に高められ、あっさり上り詰めさせられた新はぐったりと力を抜く。 赤く上気した頬と、熱に潤んだ目元にうっすらと涙のようなものが浮かんでいる様子は、ドキリとする程艶っぽく見えた。 「新‥‥‥」 壱哉の息も荒くなる。 慣らすのもそこそこに、壱哉は既に熱くなっていた屹立をあてがった。 「んっ、う‥‥‥」 強烈な刺激と異物感に、新は掠れた呻きを上げた。 徐々に押し込まれて来る、火傷しそうなほど熱いものを、自分の身体がきつく締め付けているのが自覚出来る。 壱哉は根元まで収めると、宥めるように抱き締めて来た。 「ん‥‥‥」 大丈夫だ、と告げる代わりに壱哉の背中に手を回す。 壱哉がゆっくりと動き始めると、強烈な快感が背筋を突き上げた。 痛みなどとうに消えてしまっていて、弱い部分と内壁を太いものが擦りたてる感触が、気の遠くなりそうな快感だった。 「くろ‥さき、さん‥‥‥」 いつものように快楽の波に飲み込まれそうになりながら、新は壱哉の身体をもっと求めるように強くしがみついていた。 シャワーを浴び、一緒にベッドに入った頃には、既に日付は変わっていた。 「黒崎さん‥‥誕生日、おめでとう。もう、次の日になっちまったけど」 新の言葉に、壱哉は苦笑した、 「お前に祝ってもらうなら、構わないさ。こんなにいいプレゼントももらった事だしな?」 からかうように唇に指を当てられ、新は赤面した。 「あのさ‥‥誕生日とか言われるの、あんま好きじゃないのかと思ってた」 躊躇いがちに付け加えられ、壱哉は口元に自嘲気味の笑みを刻む。 「まぁ、な。誕生日などつまらん日だと、ずっと思っていたが‥‥‥」 壱哉は、とても穏やかな顔になって新を見詰めた。 「お前や、吉岡が祝ってくれたから、嫌いではなくなった。それに‥‥‥」 一旦、言葉を切った壱哉は、悪戯っぽい顔になった。 「毎年、こんなプレゼントがもらえるなら、誕生日が楽しみになる」 「‥‥‥‥‥」 こんなプレゼント、とは考えるまでもなく新の事だろう。 「あのさ、黒崎さん」 新は、ジト目になって壱哉を見上げた。 「黒崎さんの誕生日プレゼントが俺だとしたら、俺の誕生日の時は何くれるんだよ」 まるっきりの嫌がらせで言ってみたというのに。 「当然、俺をやるよ。一日中、じっくり可愛がってやる」 「それじゃおんなじだろ!」 「嫌なのか?」 「うっ‥‥‥」 嫌だ、と言えない自分が情けない。 頭を抱える新に、壱哉は声を上げて笑った。 普段は殆ど見る事が出来ないような笑いに、新もつられて笑い始める。 声を上げて笑うと、色々な嫌な事が全部出て行ってしまうような気がするから不思議だ。 ひとしきり、笑いあって、とても暖かいものを胸の中に感じながら、新は壱哉を見上げた。 「新‥‥‥」 壱哉は、酷く真面目な顔になって新を抱き締めた。 「お前が、こうして傍にいてくれるなら‥‥何もいらない。それが‥‥俺にとって、最高のプレゼントだ」 抱き締められているから、新からは壱哉の顔は見えない。 けれど、きっと、初めて気持ちが通じ合った時と同じ顔をしているのではないか。 新は、そんな事を思った。 しばし無言で新を抱き締めていた壱哉は、ようやく身体を離した。 けれど、まるで失う事を恐れるかのように手をしっかり握ったままだ。 しかしこれはちょっと恥ずかしい。 と言うか、この体格差では何となく、子どもが眠れなくて兄貴に手を握ってもらっている光景を連想してしまう。 「手をつなぐ、っていうのは‥‥なんか‥‥‥」 居心地が悪そうな新に、壱哉は渋々手を離した。 しかし、少しだけ不安そうにしている壱哉に、新は呆れた。これでは、どっちが年上か判らない。 「いなくなったりしねえってば。まだ不安なら‥‥‥」 新は、壱哉の傍に身体を摺り寄せた。 パジャマ越しとは言え、身体同士が密着する。 「ほら、これならいいだろ?」 「‥‥‥あぁ」 壱哉の手が、遠慮がちに軽く回される。 涙が出そうな程幸せなぬくもりを感じながら、二人は眠りへと引き込まれた―――。 |
END |
社長、お誕生日祝い話第二弾。ふと気付けばものすご〜〜〜くイチャついてる気がするんですが。あ、いつもか‥‥‥。
ウチの場合、新ラブEDの時の秘書は新に父性愛のようなものを感じてしまっているので、壱哉様への気持ちはあるんですが、新の事も放って置けないと言う‥‥。なので、自分の気持ちを胸に仕舞って二人を見守っている感じですね。‥‥‥自分で書いてても気の毒だと思いました。
樋口の話に比べて短かったので新のえっちしーん初書きしてみたんですが、やっぱ力尽きてしまった‥‥。いえ、単に裸の新にリボン結びたかっただけです。ピンクのリボンは樋口用だと思うので(爆)、赤にしてみました。しかしこのタイトルもそのまんまだ‥‥(泣)。