第69話神さまのご開運を祈るとは・・・ |
ふつうは神社で祈願する場合、「神さまに自分の開運を祈る」ものですが、 私がお勧めしている祈り方は「神さまのご開運を祈る」ことです。 この逆転の発想の祈り方は、幕末の神道家「黒住宗忠(くろずみむねただ)」が 提唱されたものです。 宗忠はその生涯で六度、伊勢神宮へ参拝していますが、参宮のたびに通常の 人とは全く違う祈願をしていたのです。 ある神官が 「先生には毎度、遠路のところをご参拝になりますのはまことに感心 いたしますが、いったい何をお祈りなされるのですか?」 と尋ねたところ、 宗忠は 「私には他に祈ることなどございません。 ただ、天照太神のご開運をお祈りするだけです」 と、答えたのでした・・・ ***** ***** ***** ***** 神のご開運とは、神徳がこの世に大きく顕現することを祈ることです。 人間一人ひとりは、神さまの分神をいただいた子神であると言われています。 そして、「親神である神さまにどうすれば喜んでもらえるか?」という子神 から親神への敬意と感謝の親孝行の気持ちが、親神さまのご開運の祈りと なるのです。 子どもが両親に対して 「大好きなお父さん、お母さん、ありがとう! 今後も元気でさらに素敵に輝いてね。」 と、願っている感じです。 宗忠の「天照太神のご開運を祈る」は、父母への親孝行をとことん極めて、 さらに天地の父母である親神への大孝に至ったのです。 宗忠は、 「本当の父母は生まれぬ先にあるなり。 その生まれぬ先の父母とはすなわち、かたじけなくも日の大御神なり。 日月天地が誠に大元の父母なり」 と言っています。 太陽系宇宙に住んでいる人類の実質的な最高神は「太陽神(天照太神)」です。 特に日本は、日の本の国といわれ、太陽信仰が受け継がれています。 ***** ***** ***** ***** 私たちは、生きているというより、天地自然に生かされている存在です。 太陽はどんな存在にも分け隔てなく光を与えてくださいますが、そのことに 対して何の要求もされません。 宗忠は「一切わが物と申すもの少しもなき神」と言っています。 生かされていることへの感謝と、それに対する「せめてもの恩返し」が 「神さまへのご開運を祈る」ことになったのです。 太陽、大地をはじめ、恵みを与えてくださっている存在や見えない世界から 見守ってくださっているおかげ様に心を向け、ご開運を祈り、感謝と賛美の 言霊をとなえていると、親子の愛情のような温かい交流が生まれ、自分と 神さまとの距離がグンと近くなっていきます。 親である神さまは人間を育み、守り、それに人間が感謝するために祭りを 行って神さまに喜んでいただくという、もちつもたれつの関係が神道である と私は思っています。 そして、その根底になる心のあり方は「親孝行」のような気がします。 また、親神孝行しようとすると、 「神さまはどんなことを人間に望んでいるのだろうか?」 と、神さまの立場で考えるので、神さまが何を望んでいるのかも気がつく ようになっていきます。 ***** ***** ***** ***** これからの信仰は、もちろん自分が心地よくなるために参拝することも とっても素晴らしいこととは思いますが、できれば・・・ 「この神社の神さまはどんな気持ちでおられるだろうか・・・」 「この神さまを元気に喜んでいただくには、何をすればいいだろう?」 「今の自分に対して、神さまは何とおっしゃるだろう?」 という視点で参拝されると、より感慨深く、充実した参拝になります。 このような参拝を体験されたい方は、ぜひ「山けんの濃い?参拝ツアー」に ご参加くださいませ。 参考文献・・・太陽の神人 黒住宗忠 山田雅晴著 ![]() ![]() |