第63話

霊峰比叡山と日吉大社


琵琶湖を望む比叡山は、霊峰であり、京都の都の鬼門(東北)に位置することからも 王城鎮護(都を守る)の山とされています。
比叡山には延暦寺という名の建物はなく、比叡山そのものが延暦寺を表しており、 延暦寺は三塔十六谷の堂塔の総称となっています。
延暦寺は最澄が創建し、天台宗の総本山として有名ですが、それだけでなく法然(浄土宗)、 親鸞(浄土真宗)、栄西(臨済宗)、道元(曹洞宗)、日蓮(日蓮宗)など、日本仏教史上著名な 宗派の開祖の多くが比叡山で修行して、学んでいることから、「日本仏教の母山」とも言われています。 (ユネスコの世界文化遺産にも登録されています)

また、「12年籠山行」「千日回峯行」など、血のにじむような厳しい修行が 現代まで続けられている修行の聖地としても有名です。

そして、この比叡山延暦寺を守護し、京都の鬼門を守り続けてきた地主神を お祭りしている神社が大津市坂本にある「日吉大社」です。
日吉大社は「山王さん」と呼ばれ、全国の山王社(日吉神社・日枝神社)の総本宮です。
鳥居の上が△(山王鳥居)になっており、まさに山の神を表しています。
また、日吉大社は比叡山の天台宗と結びつき、天台宗の発展とともに神さま の神威も増していった神仏習合(山王権現)の神社です。
東京赤坂にある「日枝神社」も比叡(日枝)山を示しており、主祭神は 「日吉大社」と同じく「大山咋神(おおやまくいのかみ)」になっています。
「咋」(クイ)は主という意味でもあり、山の樹木やその麓の田畑の五穀を グイグイと伸ばし育てて下さる御神徳を指しています。
赤坂の日枝神社は、江戸(東京)鎮護の神として、江戸市民から崇敬されて いますが、京都を守る「日吉大社」の東京版のような感じになります。

興味深いのは、日吉大社の境内に地主神の大山咋神をお祭りする「東本宮」 に対して、奈良の大和国三輪山「大神神社」より、ご神霊をお迎えして 「西本宮」としているところです。
さらに境内には、宇佐宮、白山宮、東照宮があり、まさに国家鎮護の神々が 集まっています(昔は境内108社・境外108社と言われていました)
そして、現在は多くの社殿が国宝・重要文化財に指定されているのですが、 残念なのは、神社の境内に入るのに入園料(300円)がいるので、地元で 度々参拝したいと思われる方には、ちょっと痛手かも知れませんね。

このような歴史的信仰の聖地である比叡山延暦寺と日吉大社を恐れ多くも 焼き討ちした人物が、あの織田信長です。
信仰心のある人なら、とても許されない行動であり、信じがたい出来事です。
ところが、当時の比叡山は、腐敗堕落した僧兵・僧達が多数存在していて、 堂塔も坊舎も荒れ果て、修行もせずに現世にうつつを抜かし、それでいて 傍若無人であったので、天皇でさえ、仏罰を恐れて一歩退く・・・といった 状態であり、僧兵たちが少々エラそうな態度に出ても、誰も正面から立ち 向かえない状況だったとも言われています。

そう考えると、比叡山焼き討ちの動機は違っていたにせよ、信長の常識外れ の破壊行動は歴史の流れを改革する上で必然であったようにも思えます。 (歴史は観方によって変わるものです)
ただ、この非情な焼き討ちによって、比叡山は神仏も含め、犠牲になった 多くのご存在や人間の悲しみ、苦しみの想いが今も残っていることでしょう。

信長の死後、廃墟と化した日吉大社を復興させたのは豊臣秀吉です。
秀吉の幼名は「日吉丸」であり、あだ名が猿であったことと、日吉大社の 神の使いが猿であることも秀吉との縁の深さを物語っています。

また、徳川家康と日吉大社・比叡山との関わりも深く、関が原の戦いの後、 天海僧正と出会ったことで、家康の死後は山王神道の流れで「東照大権現」 の神号で祀られ、その後の徳川の時代が長く続いていくのです。

東京上野の「東叡山寛永寺」は江戸鎮護の目的で東の比叡山として 建立され、時代も京都から江戸に移っていきます。
そして、比叡山も秀吉、家康によって各僧坊は再建され、延暦寺根本中堂 は三代将軍徳川家光によって、さらに規模を大きくして再建され、現在に 至っています。
根本中堂の堂内には、今も1200年間絶やされることなく、「不滅の法灯」が 燃え続けていますが、この歴史・伝統の重み、荘厳さには日本民族としての 誇りを感じざるを得ません。

※ただし、この法灯は信長の焼き討ちで一時途絶えつつも、山形県の立石寺に分灯されていたものを移して現在に伝わっています。

日本仏教の母山であり、神仏習合の聖地である「比叡山延暦寺」と「日吉大社」 には、今後の日本のためにも自分・ご先祖・子孫のためにもじっくり参拝される ことをお勧めします。
できれば、日吉大社⇒延暦寺の順でお参りされるといいでしょう。

ちなみに、5月25日には「山けんと行く比叡山・日吉大社参拝ツアー(日帰り)」を 計画しています。
初夏の比叡山の清清しさと歴史の息吹を感じながら、私と一緒に神仏のご開運 をお祈りして、嬉しく、楽しく神仏を喜ばせて徳積みをしてみませんか?


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