第56話

いのちの水への認識を変えよう!


現在、いのちの源である水が、危機的状況にあります。

世界八十ヵ国が水不足問題を抱え、10億人以上が安全な水を飲めず、毎年1000万人が汚れた水を飲み、 病気に感染して命を落としています。
国によっては、水をくむために1キロ離れた自宅からてんびん棒で担いで運んでいる地方もあれば、 顔を洗った水で食器を洗い、洗濯をし、最後は家畜に飲ませている国もあるのです。

その中で、日本では、蛇口をひねれば、簡単に水が出てくる利便さも影響してか、 一人一日あたりの生活用水使用量は約320リットルといわれています。

そんなに多い?と思われるでしょうが、たとえば、1分間水を出しっぱなしにするだけで、 約10リットルの水が流れてしまい、シャワーを5分すれば、約50リットルの水がなくなってしまいます。
そのほか、トイレ、手洗い、食事、洗い物、風呂、洗濯等もあるとすると、このような数字になってしまうのですね。

せめて、水道で歯を磨いたり、顔を洗うときは、水を出しっぱなしにせず、必要最小限の節水は 心がけたいものです。

ちなみに、世界中には一人一日あたりの生活用水使用量が50リットル以下の国が55ヵ国あり、 30リットル以下の国が38ヵ国あるそうです。
世界の学者が提唱している、人間らしい生活のできる最低限度の生活用水の量は、 一人一日50リットルといわれていますが、私もふくめて水に対して贅沢な今の日本人には、 難しい数値のようです。

また、日本人はこれだけの膨大な水の量を消費して、なおかつ飲み水には、「おいしさ」 「安全性」を厳しく求めます。
確かに飲み水の安全性は大切なのですが、排水に関しては無頓着な傾向があり、 排水による汚染で、山も川も海も自浄作用を失いつつあるのが現実なのです。

※このあたりの情報や水に関する問題に興味のおありの方は
 「水問題の重要性に気づいていない日本人」橋本淳司氏著(PHP研究所)
   http://www.aqua-sphere.net/
 をお読みいただくことをお勧めします。


日本が今こうして水が豊富で水の恩恵をいただいているのは、我々の祖先が水を いのちの源と考え、水に対する感謝と水を神さまとして崇めてきた精神性が引き継がれてきた おかげさまだと私は思っています。

わがご先祖さまたちは、水を恵んでくれるのは山であるとし、山を神さまとして祭り、 山の森は神さまの住む神聖な場所として大切にしてきたのです。
「山の神」は、春になると、雪解け水と一緒に村里に下りてきて「田の神」と なって農地を見守ってくださるので、人々は里に神社を建てて、神さまをお祭りして、 感謝と水が途切れることのないように神さまに祈ったのです。

京都の北に「貴船神社」があり、「高おかみの神」をお祭りしています。
「おかみ」という漢字は、「雨かんむりに口を三つ、その下に龍」と書き、雨を降らすための 神事で龍神さまをお呼びすることを表しています。
また、水の神として「闇おかみの神」が奈良県の吉野郡の「丹生川上神社」にお祭りされていますが、 高おかみの神が、山上龍神に対して、闇おかみの神は、谷の龍神とされています。

龍神は、雲や雨を司る神として、水田耕作や農耕儀礼と結びつきましたが、さらに都のある所には、 その土地の国魂を守護する神としても、恐れ敬ってお祭りしていました。

奈良に都があったときには、吉野川上流の丹生川の水源地に、水の神を祭る「丹生川上神社」を崇敬し、 日照りや長雨がつづいた時、また国家有事の際には必ず勅使(天皇のお遣い)が差し向けられ、 祈念がこめられていたのです。

そして、都が京都に移ってからは、国魂神として「上賀茂・下鴨神社」を祭り、 水魂神として「貴船神社」を崇敬していたのでした。
貴船は、玉依姫(龍神と関係が深い)が乗ってこられた黄船から名前が起こっているともいわれ、 玉依姫が「この船の留まるところに社殿を建てて、そこの神様を大事にお祀りすれば国土を潤し、 庶民に福運を与えん」とのお告げがあり、その船は淀川、鴨川をさかのぼって、水の湧き出るところに 船を留め、そこに貴船神社の御社殿を建てたと伝えられています。

このような水への信仰のおかげもあって、京都は都として守られていたといっても過言ではないと 思っています。
つまり、日本人にとって、水は国力そのものでもあるのです。

人はもとより、動植物にいたるまで、すべての生物は水によって生かされています。
また、汚いものを洗い流し、清らかな水は、心の中の汚れまでも清めてくれます。
心が洗われると元気がよみがえります。
そして、水が清浄な神社や森には、元気な神さまがおられ、そこにお参りすると元気になり、 開運にもつながっていきます。

神道の基本は祓いであり、その本質は水にあります。

今後は、こんな大切な水を、あるのが当たり前と思って無駄使いするのではなく、 水を神さまと思って、感謝して大切にいただき、使った水は循環して、浄化して再び いただけるように水の環境を整えていくことに目を向けてみませんか・・・

では、水に感謝をこめて・・・ 「おかげさまです」


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