第39話

杉について


今、杉が嫌われているようです。

何を隠そう私もついにスギ花粉症になってしまいました。
今年は特に去年の猛暑のせいもあり、スギ花粉が例年以上に日本中に飛散して国民を困らせています。
杉が嫌われている原因はそれだけではありません。

植林された杉は根が浅く、広葉樹に較べて土壌の保水力が低いため、強い雨が降れば、川が増水し、 日照が続けば渇水になりやすいのです。
そして、広葉樹にくらべて大気浄化能力が低いとも言われています。
また、木が腐りにくいため、土が腐葉土にならず、栄養のある土壌になりにくいことなど、 杉の植林によって森全体のパワーが失われていることからも嫌われているのです。

針葉樹は高くなることで生存競争に勝つ仕組みなのに対して、広葉樹は枝葉を大きく張って 日光をほかの木より多く受けることで生き残っていこうとする特長があります。
確かに現在の森林状態のことを考えるなら、熊の食料にもなる落葉広葉樹を増やすことが いいのかも知れません。

ところで、日本ではどうしてこれほどの杉を植林したのでしょうか・・・

昭和20年、戦争によって都会は焼け野原になっていました。
住宅を再建するには大量の木材が必要だったのです。
もちろん、敗戦国日本には外材を輸入することなどとても無理でした。
(食料さえ輸入できずに米国から援助してもらっていました)
「とにかく大急ぎで山に植林しよう!」ということになり、住宅資材で一番早く生長する木と いうことで、杉がエースとして起用されたのです。

あれから50年が経ち、あの時植えた杉がやっと大きく育ちました。
しかし、日本は金持ちになり、木を世界中から買うことで、杉を必要としなくなったのです。
森林の所有者は経済的な効果が得られないことや山村の高齢化と過疎化により、山への関心が薄れ、 杉をだんだん放置してしまいました。
植えるだけ植えて、あとは知らない・・・
いきなり、狭い範囲で植えられて根も広げられず、それでも何とか大きくなり、 やっと花を咲かせるようになれば、花粉で嫌がられ、お前は害になっても全く役には立たないと いわれているような状況が今なのです。

自分が杉だったら、怒りませんか?
ひょっとすると杉はヤケクソになって花粉をばらまいているのかも知れません。

杉のおかげで家が建ち、人間はたくさんの恩恵を受けています。
樹齢が約7200年と言われる縄文杉は、屋久島の大自然と融合して今も神々しく、 杉の祖先神のように存在し、観る人間の心を癒しています。
杉はまっすぐで軽く、加工しやすい木材として縄文時代から御神木や並木などとして親しまれ、 日本人にとって身近でありがたい樹木だったのです。
それなのに感謝もせず不満だけいうのは、まさにエゴそのものだと思うのです。

まず、杉に「ごめんなさい」とお詫びをして「ありがとう」と感謝をする。
そして、杉をもっと活かせることを考えることがこれからの日本人の叡智です。
人間が、大自然との調和を心がけ、目先のことではなく、50年100年後を念頭に 置いた植林とその手入れをすることで、杉は今のように人間を苦しめることはなくなり、 ありがたい樹木になることでしょう。

今回、スギ花粉症になることでいろんな気づきがあり、かえってありがたく受け とめることができました。

あ〜 ありがたし・・・  ありがたし・・・


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