栗子山一等三角点登頂記


平成18年6月11日(日)  



万世大路を歩くたびに、間近に見える栗子山山頂を
いつか登ってみたいものだと思い始めるようになった。



それから3,4年は経過しただろう。
東側(福島側)からは一昨年、昨年と二度ほどチャレンジしたことがあるが
高木樹林帯を過ぎてからのブッシュに阻まれ
いずれもあえなく失敗。
高度1千五十米を過ぎると身動きすら出来ない状況だった。



しかし、その失敗が思わぬ情報をいただけるという
幸運を招くことになった。



HNを「弘法」さんという測量調査会社に勤める方からの情報である。
平成17年の秋、国土地理院の依頼を受け栗子山の
一等三角点まで登り調査した、その際、機材を運ぶ
ルートを開削したので、それを利用すれば良かろう、
ついては来年いっぱいくらいは利用可能であろう、
というものであった。



このチャンスを逃せば、素人ではほとんど不可となる。
雪解けを待ち、樹木の茂りが最盛期を迎える前が
条件的には良いはずである。
天候状況をみながら、前日に急遽決行が決まった。



メンバーはいつもの「F班長」
まちセンのH氏
そして当日早朝にメールを見て
おっとり刀で駆けつけてくれたsunnypandaさんである。




国交省栗子出張所で落ち合い、一路米沢砕石のゲートまで。
平坦路とはいえ、ここから登り口である滝の岩上橋まで約2km.の道のりはつらい。
準備体操と思ってアキラメルしかない。 (現在時刻 8時30分)
先頭を歩く小生の後続組がついてこない。何やら騒がしい。さかんに水溜りのほうを指さしている。
原因はこれだった。
モリアオガエルの卵では?というものだった。
ちなみに帰り道で、まちセンのH氏が触ってみたところ、「マシュマロみたいだ」とのたまっていた。
途中で道草を食いながらの歩きであったため、予定より10分ほど遅い到着。
ここから登りである。 (9時00分)
変化に乏しい米沢側の万世大路。
見所は数少ない。
その数少ないうちの一つである切通しのある地点で休憩。
(9時55分)
見えるはずの栗子山が雲に隠れて姿をあらわさない。
天気予報では雨の降る確率は低かったのだが、この様子ではどうか。
間もなく、栗子隧道に到着。
予定より10分ほど早く到達した。
(10時30分)
まちセンのH氏、sunnypandaさんは初めての隧道見学である。
明治の隧道の鑿跡を撮るサニパンさん。
一応、隧道にもご挨拶を。

あまりのガスのかかりのせいで、三角点は無理だろうなと思い始める。
とりあえず『おチャする』ことにして、トンネル脇の沢からの水でお湯をわかす。
持参のおにぎりも半分食べることにした。
ここまで来て、まったくチャレンジしない訳にもいかないので、様子見がてら、あまり気乗りしないまま、斜面を登りはじめる。

一つ一つ、弘法さん達が付けたのであろうリボンを確認しながら登る。

前夜来の雨のせいで足場が悪いが、突き出た枝などが払われており、その点では歩き易い。
しかし、斜面を直登に近いので息がきれる。
(11時20分)
風が吹き出すとブナ林がわさわさと騒ぎ出す。葉に付いた水滴が落ちるのか、雨のような按配だ。
本当の雨なのか、水しづくか、判断に迷う。
ブナの林地帯を抜ける。
これがルート上の最後のブナの木である。
(12時30分)
ブナ林を抜けると低潅木地帯。
開削されてなければ、10米進むのに10分かかる地帯である。
普通であれば、ここらへんでギブアップせざるを得ない地点である。
GPSは急な斜面であるのでうまく電波がキャッチできないでいる。
もう少し登ると稜線に到達しそうに見えるので、それに騙され騙されしてここまで到達。
ガスに阻まれて視界は利かないものの、誰が見ても稜線まであと僅かだ。
稜線に到達。
もう少しもう少しと歩いてきてしまったが、とうとう稜線まで届いた。
しかし、視界が悪い。栗子山頂方面を向いても確認できない。
GPSで現在地点を確認する。
山頂まではこの稜線上を500米ほど歩く必要がある。
一応、メンバーにこれからどうするか確認をとる。
稜線上とはいえ、けっして歩き易いわけではない。
強烈な横殴りの風もある。
既に時刻は12時55分である。
相談の結果、「ここまで来たら行くしかない」ということで計画完遂することになった。
あいかわらず視界は利かない。
稜線上でも背丈が埋まるくらいのブッシュの箇所もある。
風も強く、視界の利かない所でブッシュに埋まるのはひどく不安である。
随分と歩いたような気がするが、距離感がつかめない。先行していると、一坪ほどの空間が整備されている地点に出た。。
ここで後続のメンバーを待つことにした。
GPSで調べてみると、この地点より20米以内に三角点があるはずである。
(13時27分)
何のことはない。
ものの5m.と先へ行かないうちに三角点は存在していた。
これが栗子山1216m.の一等三角点である。
多分、二度とこの地を踏むことは無いと思われるので、石標をナデナデしてきた。
途中、どこで引き返すか、そればかり考えながらとうとう登ってきてしまった。
とりあえず先ほどの空間で「お茶」にして残りのおにぎりを食べる。
そうこうしているうちに、ガスは益々濃くなり、夕方のような暗さになってきた。おまけに一番恐れていた雨も落ちてきたのだ。早々に下山をはじめる。
(13時58分)
斜面と違って稜線上のリボンは見つけ難い。間隔が長いのだ。そして枝払いもあまりされておらず、ルートの不明箇所もある。早く下山しなければ、と気ばかり焦る。
重大なミスも犯していた。
稜線に出た地点を明確に記憶していなかった。
「シマッタ!」と思ったが、まちセンのH氏がそつなく見つけ出してくれたので、ほっと一息。
雨にうたれ、全身びしょ濡れである。
そうでなくとも藪こぎでズボンがビショビショだった。
メンバーの一人に膝痛が出た。
ルートさえ判れば、安全に帰れるので、急がず、さらに転んで怪我をしないように気をつけながら下山することにした。6月は日が長いのでそういう点は助かる。
下まで降りてくると、雨の降った様子はなかった。
ここいら辺の高度は470m.。ここから1216m.まで登ったのだから、こりゃーやっぱりご苦労さんでした、という他ない。
全員、ビショビショのまるで関が原の合戦の落ち武者のような格好で下りてきた。
(18時22分)


ひどい一日だった。
びしょ濡れの体は徐々に深部まで体温を奪っていった。
帰りの車の中でヒーターをガンガンたいても
家へ着くまで温まることはなかった。



他のメンバーの健康状態を心配していたが
案外、皆丈夫らしく、筋肉痛くらいで済んだようだ。



こういうモノズキな企画をやる連中は丈夫なんだろうか?