栗子山登頂失敗の記


ここ数年、かれこれ十度以上はここに出掛けたに違いない。
それほど万世大路が好きなようだ。
自分が子供の頃、いや、それ以前にタイムスリップしたような隧道や橋が
山中深く忘れられたようにひっそりと佇み風雪に耐える姿は
否が応でも「もののあわれ」を感じさせる。



福島側の万世大路から、栗子山が見えるのは僅かな区間である。
大平橋の付近まで行かないと見ることができない。
何年か前から、この山に登ってみたいと考えていた。
もとより登山道などは無い。
照葉樹の葉が落ち、雪の降るまでの季節か
雪解けの葉が茂るまでかの僅かな期間に挑戦するしかない。



とりあえず今の季節にトライすることにした。(H16.11.28)



出だしから東栗子トンネルからの取り付けの上がり口付近で、スタックしてしまった。
少々慌てたが何とか脱出。
やれやれと思いつつ二ッ小屋隧道付近まで来ると
あやーっ!」。
何と倒木で道が塞がれているではないの。
消防団の同僚F班長とポカ〜ンと途方にくれつつ対策を練る。
この山側から突き出ている木を切断出来れば、何とか通れそうである。
小生の持ち物の物置と化している車の中を探すと、上手いことに鋸が出てきた。
ちなみに阪神大震災で一番役に立ったのが、鋸とバールだそうである。
直径20センチはあろうかと思われる。
生木であったので切りやすかったが、二人掛かりで10分はかかった。
ここで都合20分はロスタイム。(10分はポカ〜ン)
大平橋手前の小広場まで車で侵入し、一路、出発点となる栗子隧道まで急ぐ。(気持ちだけ)

葉が落ち、以前のお散歩の折、おにぎりを食べた所である二段の滝がはっきりと見渡せる。
車を置いた小広場からここまで30分。
やれやれ、ここから始まるのかい。
(もう疲れたで。)

地形図には描かれていない栗子隧道の福島側抗門の位置を特定する事ができた。
(一番下の図を参照)
何かと話題に出る、坑門上の謎の穴・・らしい。
昭和の大改良では、この隧道を掘り下げる形で造ったため、これが明治の隧道の天井部分ではないか、との推測。 
ウム・・そうかも。
栗子隧道の上に出て、これから登る方向を見る。
こんな感じであれば、何とかなるかなぁ・・とも思うが、何となく不安。
前日もそうだったが、今日も風が強い。
おまけに何か白いものが舞っている。
雪というほどではないが、霰(アラレ)とでもいうのだろうか。
小枝が多くて非常に歩きにくい。
自分で避けた枝が思わぬ方向から「バシッ」と顔面を直撃する。
(イデェ〜!どこに怒ったらいいんだぁ!)) 

傾斜は覚悟の上とは言え、息が切れる。
登っているのはこのくらいの傾斜である。
10メートル登っては息を入れるという具合。
だんだんとガスが濃くなってきた。
山頂から見下ろす万世大路を楽しみにしていたのに、これでは期待できそうにない。
おまけに時折吹雪くような按配になってきた。
空気が何となくスキー場みたいな感じがする。
雪の匂いなのかも知れない。
街での雪で感じたことはない、澄んだ匂いだ。
標高1050メートルを過ぎたあたりから植生が変わってきた。
猛烈な熊笹だ。
藪歩きはお得意のはずだが、さすがに泣きが入ってきた。
標高1100メートル地点。
時間ばかり過ぎて距離を稼げない。
既に2時間を経過している。ちょっと掛かりすぎている。
熊笹の藪はまだ続きそうである。
時計を見る。
この悪天候の中で帰りに日が暮れるようなことになっては一大事である。
F班長と相談して、「今日はここまで」とした。
帰り道といえども楽ではない。
小生とF班長の二人して5・6回は滑ってころんだ。
中腹の比較的平らな所で休憩をとる。
後ろを振り返ると、何とまぁ、綺麗なことよ。
樺の木の一種だと思うのだが、知識がないので分からない。(今度勉強の必要あり)
今降りてきた所は、「こんなにも綺麗な所だったかね?」などとF班長と話す。
何か馬鹿にされているような綺麗さだ。
空を見上げると、モノトーンの世界が広がっていた。

デジカメの設定をいろいろ試して、何とかここまで撮れた。
帰り道。
たまには二人して記念写真。
(杭甲橋の親柱の上にカメラを置いて撮影)
左が小生で、右がF班長。
(遺影・・にならない様にしなくちゃ)
予定より早く下山したので時間に余裕がある。
あちこち見渡しながらぷらぷらと歩く。
大平橋のちょっと米沢側に小暗渠があるということは他の方のサイトで読んだが、未確認だった。
今回探した訳ではないが、労せずして気がついた。

(マウスを左の画像の上に置くと今年の6月に撮った杭甲橋の先の暗渠が見られます。)
大平橋の下に降り、旧橋の痕跡を探す。
以前にも探したことがあったのだが、樹木に邪魔され、、あっさりと諦めた。
この機会に探索するも成果、全く無し。
完全に消滅しているようである。

(左の画像にマウスを乗せると、工事の時の写真が見られます。)
夏場、橋上から見下ろすと、岩魚が4〜5匹見ることができる。
今はまったく魚影はない。

(マウスを左の画像の上に置くと、6月の時の様子が見られます。)
今までこの看板にはまったく気づかなかった。
が、新しい訳でもなさそう。(?)
とにかく十条製紙がこの山に231ヘクタールもの山林をもっているらしい。
百米四方が231個? 
スゲェーけど、ここじゃぁ、地価が安いだろうから、たいした金額ではないな・・などと考える。
ここにも新しい看板が一つ出来た。
「火の用心」だって? 
そんなに来るの?ここに?
今年の6月に撮影した栗子山(間違っていたらゴメン)。
ここの一等三角点は、果たして見ることが出来るのやら・・・



今回は尻尾をまいて退散することになってしまったが、
また同じルートで挑戦するか、別路を取るか、
来年までゆっくりと考えることにする。



帰り道、飯坂温泉の「八幡の湯」(100円)に行く。
いやぁー47℃の熱さは「たすけてくれ〜」でした。