第14回 矢沢宰賞

(注)学校名及び学年は応募時(平成18年度)で掲載してあります

第14回矢沢宰賞の審査を終えて    月岡 一治

 今年も、無事に選を終えることができました。1500編以上の応募の中 から、51名の小さな詩人達が生まれました。それぞれに光る個性を持って、さらに心の大きな人間に育っていって下さい。今年度も見附市長さんから、詩人になった証あかしのメダルがみなさんに贈られることでしょう。一生大切にして、つらいこと、悲しいことがあったなら、そっと手に握ってみて下さい。

 皆さんには、とてもすぐれたところがあります。自信をもって生きて下さい。人に一度もほめられることがなく、一生を終える人が大部分なのです。今日あなた方は、その胸に育てた純真な心をほめられました。ほめられた喜びは、メダルと共に、あなたを一生あたたかく励まし続けることでしょう。あなたが接する人たちと、見渡すかぎりの自然が与えてくれる、深い愛情に気がついて、それを心から喜び、次に自分に何ができるかを考える。人間に生まれて、とてもよい心の育ち方だと思います。励ましあい、支え合って生きることの大切さに、51名の誰もがもう気づいています。

  今回、生きる意味を問う作品が幾つもありました。平均寿命がのびて、漠然と自分たちに与えられた長い人生を思い、不安が心をよぎる。その心は、毎日を過ごすよりどころを求めているのです。すでに自分自身で立派に答えを見つけている作品がありました。でも陽が昇り、赤く沈んでいくように、私たちに与えられたのは一回きりの命なのです。皆さんが次第に気づく、生きることの深いさびしさを思うと、選者の私はただほほえんで見守るしかありません。

  どんなに支え合っていても、親子、夫婦にさえ、永遠に別れる日が来ます。その悲しみには、「ぼくたちは風のように生まれて、吹いて、消えていく。それは少しもさびしいことじゃないよ。悲しいことじゃないよ。ぼくたちは、くり返す自然の一部なんだから…」としか、私はこたえることができませんでした。

  入賞者の御両親、担任の先生方。悩みながらも伸びようとする子どもたちを、これからも変わることなく見守ってやって下さい。こんなにも明るく、やさしく、感性に満ちている子供たちです。この子供たちこそ、親から子、孫へと引き継がれていく、私たちにたくされた、美しい命の姿なのです。

 

最優秀賞・ポプラ賞

おーい!たいようくーん

      田村 美咲(京都府立盲学校小学部1年)

キラキラの光をありがとう。
わたしはね、光あそびをしているよ。
ポカポカのお天気をありがとう。
わたしはね、お外でコタロウと
あそんでいるよ。
ニコニコのおひさまありがとう。
水さいばいでヒヤシンスのお花が、
いいにおいでさいているよ。
ピカピカのあかりをありがとう。
わたしはね、おうだんほどうの白せんが
よくわかるよ。
マラソンのときも、あかりとかげで、
道あんないをしてくれてありがとう。

わたしのおかおは南
わたしのおしりは北
わたしのみぎては西
わたしのひだりては東
ぐるっとまわって、
わたしのおしりは南
わたしのおかおは北
わたしのみぎては東
わたしのひだりては西

たいようくんを
おててでさわってみたいな。
だって、わたしは、
ごきげんさんのたいようくんが
大すきだもの。

《選評》 小一の少女が、全身で太陽の輝きを浴びています。私に届いたまっ白な点字の詩。あなたを守る太陽のにおいがした。おとうさん、おかあさん、先生、近所の人も、みんなみさきちゃんを照らす太陽なんだよ。気づいていないけれど、みさきちゃん自身も、みんなの心をあったかくする明るい太陽になっているんだよ。

 

奨励賞・ポプラ賞

                 野川 真登(見附市立今町中学校3年)

稲は、人に大地に太陽に、たくさんの愛情をもらって
少しずつ大きく育つ

風がドミノ倒しのように倒してしまっても
稲はおいしい実を育てる。子を守る母親みたいに

僕は、お米が好きだ
人、大地、太陽に愛情をもらった稲は、
愛情をこめて、お米をつくる
そんな、愛情がなん重にもかさなったお米は、
とてもおいしい
自然の愛情はとてもおいしい

愛情をもらって育った僕
僕は人に愛情をあげられるだろうか
愛情をあげられる人に僕はなりたい

《選評》 君がこんなにも、稲を育てる人と自然の愛情に敏感になったのは、なぜだろうか。あなたを思う家族の愛情の深さに、気づいたからだと思う。「愛情をもらって育った僕」。君もきっと、愛情深いあったかい人間
になるよ。


同じ地球の

               佐藤 麻伊(見附市立西中学校2年)

ちっちぇな お前
そんな でっけぇ お荷物しょって
どこいく
なんで そこまで 足が動く

でっけぇな お前
そんな からだして お荷物はなしか
なんで そこで 立ち止まる

細い道 通りにくいな
太い道 通りやすいな
その繰り返しなんだよ 毎日

でもな デコボコの道
べチョベチョの道 カチカチの道
なんとなく通ってみる 価値はある

ちっちぇやつも でっけぇやつも
通る道は同じなんだよ 地球の

《選評》 おわりの二行が味わい深い。今の体の大小、心の荷物の大小に関係なく、最後ふり返ってみると私たちの人生に大きな違いはない。そうかも知れないね。すると、今を悲観したり悩んだりし過ぎることは、な
いね。

 

支え合う

               高桑  健(青森県立青森第一高等養護学校2年)

そんなに悩んでどうしたんだい
よかったら話してくれないか
頼りない兄だけど
同じ日に産まれ
同じ時間を過してきたんだから
少しは理解できると思う

君はいつも車いすに乗った僕を
支えてきてくれた
車いすがパンクした時は
家まで押してくれた
段差で転んだ時は
起こしてくれた
車いすが泥だらけになった時は額に汗して磨いてくれた
君の友達が遊びに誘いに来た時は
君は理由をつけて断っていた
僕を一人ぼっちにさせないように
僕を寂しくさせないように

今僕ができることといえば
話を聞いてうなずくことしかできないけれど
君が一人ぼっちにならないように
君が寂しくならないように
支えたいんだ
ほんのちょっと先に生まれただけだけど
僕は兄なんだから
支えたいんだ

選評》 双子の兄と弟。その深い兄弟愛に胸を打たれます。私にも双生児の息子たちがいて、同じく強い兄弟愛を見ているから。でもこれからだよ、お互いの気持ちをもっと正直に伝えあうようになるのは。

せかいじゅうの みんなへ

               北嶋 美鈴(福岡県立田主丸養護学校小学部6年)

いきていることが
ほんとに すごいんだよ。
やっぱり
わたしは それを つたえたい。

じさつとか しないでほしい。
いのちは ひとつしか ないんだよ。
だから どんなことがあっても
わたしたちは いきていきたいね。
まわりのみんなに こまったことが あったら
だれにでも いいから きんちょうしないで
いうことが たいせつだと おもいます。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と
おもったらいいよ。
それでも つらいことが あったら
ほんとうに
だれでもいいから いうんだよ。

選評》 やさしいなあ、あなたは。最後の五行は、本当にそうだね。あなたは、自分が実際に経験したことがあるのかも知れない。そのたびに、心がやさしくなるんだ。

冬のうみ

               水野  宗(佐渡市立金泉小学校2年)

うみが、おこった。
どどーん、ばしゃーん
どどーん、ばしゃーん
大きなうみの手が、
ぼくの町をおそう。
こんな日は、
うみのかみさまが、
やさしくなるように
ぼくは、
ふとんの中にもぐって、
目をとじていのるんだ。
明日、父ちゃんの船が、
ぶじに出られますようにって。

《選評》 命をかけて漁に出るおとうさん。夜ひとり、父の無事を祈る小さな息子。知ったお父さんの胸に、涙が浮かぶだろうな。海の味がする。

 

佳作

あきなのにせみ

               佐藤 健人 (見附市立新潟小学校1年

あきなのに
せみがきにとまっていたのは
びっくりしたよ。
あかいめをしてたよ。
なかまがいないから
木のしるがいっぱいすえるね。
さみしいね。

《選評》 最後の一行。きみは大切にしあっていっしょに生きることの大切さを、もう知っているんだ。

 

さんぽ

               川上 正太郎 (埼玉県立秩父養護学校小学部5年)

おとうさんと
おかあさんと
ともと
ぼくと
さんぽにいった。

ふみきりを とおった。
「ぽー」
って、おとがした。

《選評》 家族がいっしょに踏切を通ったこと。一生忘れない。「ぽー」っていう音のあたたかさともの悲しさと共に。とってもいい詩。

 

はつもうで

               伊藤 由圭 (大阪市立盲学校小学部4年)

はつもうでにいきました
おにいちゃんがごうかくしますよう
にって いのりました
おにいちゃんが しけんにうかって
いぬをかうことになりました
はつもうでが せいこうしました
わたしのねんりきのおかげ

《選評》 お兄ちゃんは気づいていません。犬も。あなたの優しい気持ちは、神様だけがほほえんで知っています。

 

太陽が水平線にしずむころ

               関  将志 (小千谷市立川井小学校4年)

太陽が水平線にしずむ時
なんてきれいなんだ
そのきれいさが
もやもやを
おいはらう
太陽が水平線にしずむ時
いやな心がふっ飛ぶ
まばたきしたくない
一秒もむだにしたくない時だ
とうとうしずんだ
またあしただね太陽

《選評》 大人なら、きみの気持ちがよくわかる。始まりと終わり。一日にも、一生にもあって、燃えながら消えていく姿が、いつも私たちの命のあり方に重なる。

 

おとうさんの花火

               黒崎  嶺 (小千谷市立片貝小学校2年)

片貝といえば
片貝まつり
おとうさんは
みんなの花火をあげる
赤ちゃんが生まれた花火
入学やそつぎょうの花火
せい人や六十さいの花火
おわかれの花火
みんな 花火をまっている
あげると ありがとうと言ってくれる
おとうさんは うなずく
ぼくは うれしくなる

《選評》 花火には、いろんな人のいろんな思いがつまっていたんだ。だからあんなにも美しい。その花火を見て、お父さんもうれしい。きみも、うれしい。

 

おかあさんの手

               長谷川 杏奈 (見附市立田井小学校2年)

会しゃで、
しごとをしていて、
家にかえっても、
しごとをしている。
土曜日も、
日曜日も、
いつもしごとを、
している。
たまに、
おかあさんの手を、
見ると、
つめたそうだった。

《選評》 おかあさんの心までつめたくなる日がある。あなたのこの詩が、お母さんの心をいつまでもあったかくする。

しゅう字

                坂下 雛子 (佐渡市立金泉小学校1年)

わたしは「もち」という字を
しゅう字で書いたよ。
おばあちゃんが
「もちかたがうまい。」
といったよ。
おとうさんが
「よこぼうがうまい。」
といったよ。
なん日かたって、おしらせがきたら
とくせんだったよ。
そして、しゅう字の本がきたら
おなじ「ひな子」という名まえの人が、
三人もいたよ。
みんなじょうずだったよ。

《選評》 ひな子ちゃんは、三月生まれかな?お父さん、お母さん、おばあちゃん、今日まで何千回も「ひなちゃん」と呼んだよ。その声も、ひなちゃんの笑顔も、「とくせん」だよ。

 

しゃぼん玉

               林田 望来 (佐渡市立西三川小学校3年)

小さなしゃぼん玉の
大きなにじは
ほんの数秒しか
生きられない
いのちのかがやきです
ほんの数秒を
せいいっぱい生きる
しゃぼん玉の
いのちのあかしなのです

わたしたちの
いのちのあかしは
今ここにいて
いきをしている
ことなのです

人もしゃぼん玉も
一秒一秒を
大切にして
夢をもって
生きています

《選評》 私の命って何だったんだろう。たくさんのつぶやきが聞こえては消えていく。みんなきれいな七色をもらって生まれてきたのに。ぼくたちも、しゃぼん玉なんだね。

 

ねん土
               田中  碧 (見附市立新潟小学校6年)

こんなねん土の
かたまりが
いろんなものに
かわるように
人間だって
やろうと思えば
いろんなことが
できるんだ

《選評》 そうなんだね。自分という人間をどう作るかは、自分しだいなんだね。わたしは「もち」という字を
しゅう字でかいたよ。

 

大変

                石月 尚宏 (三条市立大浦小学校4年)

いそがしくて
大変だ
いろんなことで
大変だ
やりたいことがいっぱいあるし
やらなきゃいけないことも
いっぱいあるし
ようちえんのころ
早く大きくなりたいなぁと思ってた
大きくなったら
いろんなことができるからって・・・
いろんなことができるようになったけど
その分、大変なこともふえてきた
大変だ
大変だ
いそがしくて大変だ
でも
大変だけど
がんばらなくちゃ

選評》 大きくなるほど、やらなきゃならないことの方がふえてくる。大変だけど、がんばらなくちゃ、ね。


               舘 海香子 (見附市立葛巻小学校4年)

草はどんどんのびていく
どんどんどんのびていく
と中で葉に
のびるよのびるよ見て見て
といいながらのびていく
土と水に
ありがとう
といい虫たちにあいさつをしてのびていく
がんばるぞ
といいながら

選評》 この草は、あなたのことだね。お父さん、お母さん、土、水、すべてにありがとうといってのびていく。がんばる
ぞ、といいながら。

 

なんのために

               水谷 優子 (新潟県立吉田養護学校高等部2年)

人はなんのために生まれ
なんのために生きる?
『生まれる』になんの意味がある
『生きる』になんの意味がある
その答えはなんだろう?

人はなんのために生まれる?

『生きるために生まれる』

人はなんのために生きる?

『これから歩む未来を培うために生きる』

そうか…人は生きるために生まれ
これから歩む未来を培うために生きる

それが答えなのだな…

《選評》 大人でもわからないことに、あなたはもう答えを出した。私と同じ答えです。ただ、一回きりの命だということのさびしさに、あなたは気づく日が来ます。

 

たん生日

               小川 栞奈 (見附市立名木野小学校5年)

子供のときのたん生日はうれしい、
けれど、
大人になると、
いやだな、
と思ってしまうだろう。
それはなぜだろう。
それは年をとってしまうからかな。
それじゃあ、
なぜ子供のときはうれしいのかな。
それは、
はやく学校に行きたい、
中学生になりたい、
と思っているからかな。
それは、
ゆめをもっているからかな。

《選評》 それは、子どものときは家族全員が心から祝ってくれるから。大人になるほど、年をとることの意味がわかってくるから。

おばあちゃん

                倉重 ももこ (見附市立見附中学校2年)

私のおばあちゃんは ぼけていった
私は思った
人は生まれ 育ち 大人になり
年老いて 死にちかづいて行くごとに
人は子供に戻ってゆく
赤ちゃんのようにおばあちゃんは オムツをはいていた
そして 歩けなくなっていった
死にちかづいて行く経過を
みんな見守っていた
私は そして家族は
おばあちゃんから
たくさんの愛情と知恵をもらった
そんなおばあちゃんを
一生忘れたくない

《選評》 おばあちゃんはあなたに、人間の一生をすべて見せました。そうすることで、立派に祖母の役目を果たしました。あなたの心にたくさんの愛情と知恵を残して。

 

人生

               網屋 洋平 (長崎県立希望が丘高等養護学校1年)

朝起きて、夜ねて、また起きる
いつも食事を食べる
人間は繰り返し
日々同じ事を繰り返す

何のために生きるのか
何のために死ぬのか
まるで自分がなぜ生きるのかを
探しているみたいに
死んだとき
その答えが見つかることを願っている

《選評》 私たちは深く気づかなければならない。私たちの生涯が一日一日のくり返しであることに。そのほとんどが、同じことのくり返しであることに。あたり前のことをあたり前に行う。そのくり返しが私たちを幸せに老いさせていくことに。

 

入 選   (50音順)

わたし

               相澤 優芽 (新発田市立佐々木小学校3年)

わたしは、自分がすき
元気なところがすき
みんなとなかよく遊んでいるとき
がすき、
べんきょうをがんばってやりとげ
ている自分がすき

わらっているときがすき
ないているとき、おこっていると
きもすき
だってさいごには、え顔にもどる
から
わたしは、自分が、大すき

みんなは、自分がすき?

《選評》 自分が好き。お父さんとお母さんを半分ずつもらって生まれてきた自分が好き。お父さん、お母さんがうれしくて
目を細めているよ。

 

野原の風

               安達 梨乃 (小千谷市立片貝小学校2年)

野原には 草が生えている
名前も知らない草
野原に 風がふいた
そしたら 草がゆれた
草たちが
うたっているように見えた
名前も知らない草が

《選評》 野原には、僕たちが気づかない世界がある、名も知らない草も、風も、野原では生きている。君はその世界に気が
ついた。

 

自然のかおり

               五十嵐 悠輝 (柏崎市立日吉小学校4年)

ぼくは
自然のかおりが分かる。
雨の日
地面から
石や土や木から

天気がいい日
空から
雪のにおいを感じる。

なんだか不思議だけど
ぼくは
このにおいが すきだ。

《選評》 それが、きみの能力。ぼくたちは、この自然の中から生まれて来たんだ。そしてまた帰っていく。

 

幸せ

              石沢 杏茄 (見附市立今町中学校1年)

幸せって何だろう

ほしい物を買ってもらった時?
おいしい物を食べた時?

だけど幸せって
すぐ近くにあるんだね

友達と話している時
人に優しくしている時
みんなで遊んでいる時

それがみんな集まって
幸せになるんだよ

《選評》 ぼくたちが気づかなければならないものは、みんなすぐそばにあるんだ。でも近すぎて、見えにくいんだ。とくに
幸せは。

 

泣かないよ。

              井上 祐治 (東京都立八王子盲学校中学部1年)

みんなの大事な人が死んだ。
それは、94才のひいおばあちゃんです。
色が白くて小さな人。
ずーと元気で長生きするって…
100才まで生きるって、約束したんだ。
お陽様のあたるいつものあたたかい場所に座ってた。
もう、いないんだね。

ひいおばあちゃん、お化粧したんだね。
出かけるんだね。
ひいおじいちゃんが、待ってるんだね。

《選評》 大変長いので、最初だけ採りました。最後の五行が、私たちの心を打ちます。そうなんだね。
泣かないよ。

 


              大島 菜央 (新潟市立五十嵐小学校4年)

鏡にうつってる自分。
すると、
鏡の中のわたしが
手をふっていた。

自分にはげまされて、
あきらめかけていた気持ちが、
「もう一度」の気持ちに変わった。

《選評》 みんな、自分で自分をはげましながら暮らしていると思う。影でさえ、そんなぼくたちを支えてくれているんだ。

 

教室

               太田 穂奈美 (見附市立今町中学校3年)

ここから始まった物語
それぞれ主役は違うけど
過ごした時間は同じだった
見慣れた景色にいつもの笑い声
時には泣いたり 怒ったり
そんな時間も終わりに近づいて
皆ここから歩いてく
長いようで短い物語
だけど大切な物語
全部がここに詰まってる

《選評》 一人ひとりの生涯は、長いようで短い大切な物語だと思った。卒業が気づかせた教室の姿。

 

根っこと土と地球

              大野 優和 (小千谷市立片貝小学校3年)

根っこは 力もち
だって あんなに大きな木を軽々と 持ちあげられるんだもん
でも 根っこより土の方が 力もち
だって 木や根っこを
軽々と 持ちあげられるんだもん
でも 地球の方が 力もち
だって 木や根っこや土を
軽々と 持ちあげられるんだもん

《選評》 根っこと土と地球の三つをよく見ています。とってもいい詩。もっともっと、高く評価しなければならなかった…。

 

先生ありがとう

              緒方 愛美 (新潟市立五十嵐小学校5年)

風は綿毛の私を
いい土へと運んでくれます

雨は綿毛の私に
たくさんの栄養をくれます

太陽は綿毛の私に
人を信じること愛することの
喜びを教えてくれます

綿毛の私がきれいな花になるまで…

《選評》 あなたが自分という花をきれいに咲かせるまで、人も自然もおしみなく力を貸してくれます。気がついたんだね。

 

月の雫

              久保 香奈子(福井県立嶺南西養護学校中学部1年)

 

満ちゆく月に、
月うさぎが光を注ぐ。

欠けゆく月から地上へと、
月うさぎが光をこぼす。

うさぎの手からこぼれた雫、
私の乾いた心へ、ふりそそぐ。
優しく、やわらかな慰めの雨になって。

《選評》 とてもいい詩です。やっと明るくなった月が、また自分の心を暗くしていく。きっと月と月うさぎには、忘れられ
ない悲しいことがあるんだ。月うさぎがこぼすしずくは、あなたにもやさしい。

 

僕のいきる道

               子  翔 (長崎県立希望が丘高等養護学校3年)

みんなはいきるって
どう思っているのだろう

生きる道ってあるんだろうか

もしも僕らの生きる道があるのなら
僕は自分自身でその道を作りたい
地ならしして舗装された道よりも
坂ばかりの道
石ころばかりの道
どんな道でも僕は僕の造った道を行きたい

一人しか通れない道じゃなく
みんなと通れる道をつくりたい

道の先がどうなっているのかを
一緒に話しをしながら
笑いあいながら
時にはけんかしながら
はげましあいながら
一緒に前を見て歩いていける

そんな道を僕はつくりたい

そして未来っていうせかいを
大切に、大切にいきたい。
きっとできる

《選評》 僕たちの毎日は、先が見えるようで見えない。ぼくたちの体と心は、はかないものばかりでできている。大切なこ
と、それは人と支えあって生きていくことだ。

 

生きる

               小島 泰平 (十日町市立川西中学校2年)

何かがいやになって
何かから逃げたくて
死にたくなったこと
ありますか

何をやってもうまくいかない
自分が皆からきらわれて
ひとりになって
死にたくなったこと
ありますか

僕もいろいろと
非常に辛かったこともあった
でも生きている

何かやり残した事が
あるような気がして

《選評》 君の御両親にも、そんな時があったと思う。でも一生けん命働いて、今君を育てている。ありがとうと、心の中で
拍手しようよ。その二人の強さを、君も引き継いでいるよ。

 

ありがとう

               古清水 萌絵 (北九州市立門司養護学校中学部3年)

いつもありがとう
そばにいてくれてありがとう
悩みを聞いてくれてありがとう
いつも話かけてくれてありがとう
いつも一緒に笑ってくれてありが
とう
君の優しさ
君のぬくみ
君と歩く道
すべてに今感謝して
いつも
いつも
ありがとう

《選評》 あなたがありがとうと思ったことを、人がしてもらうと「ありがとう」と言うでしょう。あなたが「ありがとう」
と言いたい人が、回りにはまだ幾人もいるんだよ。

 

黒板

               坂井 大介(見附市立葛巻小学校4年)

ワハハハ
チョークが黒板を
くすぐっている
ワハハハ
こんどはおもしろい絵で
わらってる

《選評》 君は明るいね。そしてものの見方がおもしろい。まわりに笑いが絶えない。

 

               佐々木 聡 (広島県立広島西養護学校高等部2年)

僕は金持ちになっていた
億万長者で有名になっていた
本当の自由を手に入れるために
僕は金持ちになっていた

僕は結婚していた
お金はないが幸せに暮らしていた
本当の自由を手に入れるために
僕は結婚していた

僕は空を飛んでいた
大空を飛びまわる鳥になっていた
本当の自由を手に入れるために
僕は空を飛んでいた

僕は夢から醒めていた
将来の不安を抱きながら眠っていた
本当の自由を手に入れるために
僕は夢から醒めていた

《選評》 最後の四行がいいなあ。現実の自分を見る。望む夢とくらべてみる。人はわずかな生甲斐でもあれば、幸せに生き
ていける。もうじき、わかる。

 

雪のふる夜

               末永 幸仁 (長崎県立希望が丘高等養護学校1年)

僕は雪が降る夜がすきだ
しんしんと静かにふる雪
外にでてみる
まるで宝石のように空からまいおりる
「小さな小さな妖精たちが
僕にふれてきえていく
なんだか僕にあうために」
僕は雪が降る夜がすきだ
ひらひらと
まるい雪がまい降る
僕の手のひらで、きえていく
おどりたいように雪がおりてくる
「僕もおどりたくなってきた
胸がわくわくあつくなってくる」
僕はおどる
僕はうたう

《選評》 君にふれるために、空からまいおりてくるものがある。何て幸せなんだろ
う。僕にはそれが、空にいる父と母だといいなあ。

 


               鈴木 理那 (長岡市立宮内中学校1年)

私達の前に
道はあるの
その道を歩いていかなきゃいけないの
それは 自分で決めること

みんな 別の未来があって
みんな 決まった未来はない

だから 君も迷ったら
一歩ふみ出してみればいいよ
その先には 君の未来へつづく
道があるから

《選評》 あなたは自分に言いきかせる。そして人にも伝えようとする。一生、自分にくり返し、言いきかせる。

 

手話

               高桑  光 (青森県立青森第一高等養護学校2年)

「人さし指で自分の胸を指し」
「君を見つめながら手のひらを向
け」
「親指と人差し指をのど元からつ
まむようにして前に出す」

僕は人前に出ると言葉が出ない
言葉を出そうとするけれど
口から出るのは空気だけ
言葉はのどに引っかかって出てき
てくれない
周りの視線は冷たく感じられ
ますます言葉が出てこない

そんな僕にほほえんでくれたのは
君だけだった

君と話をするために
手話を覚えようと
テキストを買って
指を曲げたり
腕を伸ばしたり
表情にあわせて練習した

君と会ってから一年が過ぎたけど
今、一番最初に覚えた手話で
君に思いを伝えよう

「わたしは」
「あなたが」
「すきです」

《選評》 「わたしは、あなたが、すきです」。大切な人にそのことを言うために、私たちは生まれてきた。

 

おじいちゃん

               竹林 香奈 (富山県立高志養護学校高等部3年)


ねぇ ねぇ じいちゃん
そういえば
いつもここにすわっていたなぁ

いっぱいはなしたいです
今がんばっとること
ワープロ メール ごみすて

いつも学校来とるけど
本当は 学校でも思い出します

今はいません
泣きたいです さびしいです
いっしょにいたかったです
思い出は いっぱいあって
うれしいけど

あんまり泣いたらジョウブツできんから
わかっています でも
ついつい思い出してしまいます

《選評》 長いので前半だけ採りました。今は空の中、風の中にいる、おじいちゃんを思って。おじいちゃん、守ってやって
下さいね。

 

アリ

               谷井 大地 (見附市立名木野小学校1年)

アリって 小さいな。
だけど にもつは大きいな。
アリって なかまが いっぱいい
るね。いっぱいいて いいな。
いっぱい いっぱい おうちがあるな。
いっぱい いっぱい ともだちいるね。

しゅうだん下校を しているね。

一れつになって しごとをしているね。

人とアリは にているね。

《選評》 本当に人とアリはにているね。アリにもうれしいこと、悲しいことが、あるのかなあ。

 

Birthday

               田畑 杏梨 (熊本県立盲学校高等部1年)

誕生日。
12時ピタリに受信したあなたからのメール。
「おめでとう」、その一言が嬉しくて
どんなに辛く苦しい事があっても
「生まれてきてよかった」と思える。
あなたは「おおげさだ」と笑うけど、
本当に心からそう思えた。
普段は恥ずかしくて面と向かって言えないけど
「いつもいつも、本当にありがとう。」

《選評》 支えあって私たちは生きる。大切なことだよね。

 


               土田 絵美 (新潟県立吉田養護学校高等部2年)

 

生きたいと願いながらも
君の手首には無数の傷
その傷を減らすことが僕にはできない
それでも君の心の
大きな
大きな
傷を僕は癒やしたいと思うんだ
手首の傷よりも心の傷を治した方が
きっと君は笑うだろうから
ゆっくり
ゆっくり
君の傷を癒やしてみせよう

《選評》 大切なこと。人の心の傷に気づいて、それをそっといやそうとする心。

 

僕とけやき

                中野 美砂輝 (群馬県立赤城養護学校小児医療センター分校中学部1年)

 

また入院になってしまった
あの痛くて
不快な注射がぼくを待ち構えている
体中からおもりがぶらさがっているみたいだ
厚い扉が僕を閉じ込める
しばらく家へ帰れない

ある朝窓の向こうに大きなけやきが見えた
秋風にふかれて
けやきが僕に手を振った
「がんばれよ」
と言っているようだった
その日からいつも目の前にいた

あれから三ヶ月
けやきはすっかり葉を落としてし
まった
けれど
その幹は
赤城おろしにもびくともしない
天に向けて大きく手を広げ
堂々と立っている
「負けないぞ」
と指の先まで力を入れて

けやきは僕のやる気の元
ともに頑張っている仲間

《選評》 けやきの姿に励ましを感じるのは、きみの心の中によくなるぞという強い思いがあるからだよ。けやきがきみを守っ
てくれる、きっと。

 

私が私でいるために

               橋爪 大貴 (見附市立今町中学校1年)

木のように
どんな苦しい時が来ようとも
自分の足で立っていよう

風のように
つらい未来が待っていても
今を走り続けよう

雪のように
たくさんの友達がいるのだから
幸せをたくさん降らせよう

花のように
いつか命が枯れるその日まで
今を美しく咲いていよう

そして太陽のように
すべてを明るく照らしていこう

《選評》 私たちは、自分を励まして生きていきます。自分らしく生きるために。気持ちのいい詩です。

 

短針

               長谷川 祐介 (見附市立今町中学校3年)

時計を見ていると
長針は進むが
短針は気がついたら進んでいる
僕は短針みたいになりたい
コツコツ努力する人に

《選評》 人の性格、タイプの違いをわかりやすく表現しました。でも誰にも同じ早さで、時が流れていくんだ。

 

あい

               久冨 昭澄 (福岡県立田主丸養護学校小学部5年)


あいは心を広げる
みんなのせかいは
あいにまもられている
いつも心にあいがある
ぼくにはみんなのあいがみえる
ほっとするなぁー

《選評》 おわりの二行がいいなあ。家族と先生の愛情が、きみの心に大きな愛を育てたんだなあ。

 

自分だって

                僕の空 (新潟県立吉田養護学校高等部1年)

ぼくは優れていないから
いつもぼくは自分を傷つける。
そんな自分だって
きっと……と
言い聞かせられればいいのに。
こんな自分だっていい所が
きっと……
あるはずなんだ
絶対に。

こんな自分にしたのはだれだ。
人のせいにする前に
まず自分を見ろ。
自分が善くないから
こうなったんだ
絶対に。

自分という鎧は
自分で作れ
自分で磨け
自分で守れ
愚か者め。

《選評》 自分の心の弱さに気づき、克服する方法を見つけています。でも、自分を傷つけてはいけないよ。きみの心のやさ
しさは、人よりずっと深くてきれいなんだから。それで十分、きみはすぐれている。

 

カマキリ

               星名 翔太 (川口町立泉水小学校3年)

カマキリのかまは、
のこぎりだ。
カマキリのつばさは、
とてもかっこいい。
「ははっオレのかまさえあればむ
てきだ。」
と、じまんしておきながら、
弱い虫しかたおせない。
オレはカマキリだ。

カマキリのかまは、
のこぎりだ。
カマキリのつばさは、
とてもかっこいい。
「おれはみんなをこわがらせてや
るぞ。」
と、言っておきながら、
ただこわがって自分を守っていか
くする。
オレはカマキリだ。

《選評》 このカマキリとおんなじ人間もいるよね、きっと。でも、そのうち人もカマキリも本当に強くなるんだ。その時ま
で、涙をかくして生きていく。

 

うれしい

               宮田 祐美 (大阪市立盲学校小学部3年)

たいいくのあとで
ともだちがあばれて
わたしにぶつかってきた

わたしはこけた
わたしはないた
えーんえーんってないた

たなかせんせいが
「こらーっ!」ておこってくれた

わたしはたなかせんせいにぎゅーってだきついた
たなかせんせいはおおきかった
うれしいきもちになって
なきやんだ

《選評》 学校でも、あなたを守ってくれる人がいる。家族も守ってくれる。よかった、本当によかった。

 

私の秋

               吉田 愛生(富山県立高志養護学校高等部2年)

もみじだ
もみじ
りんごみたいに
赤い色
もうすっかり
秋だなぁ

ヒュウヒュウ
ヒュウヒュウ
いっている
なんだか少し冷たいな
なんだか少し人恋しい
なんだか涙が出てくるよ
北風 北風
吹いてきた

早く大人になりたい

ヒラヒラ
もみじが枯れていく
すべての生き物が
年老いていく
年をとるのは怖いなぁ
まるで
もみじは
人間のようだ

《選評》 「年をとるのは怖いなあ」。十七歳でもう、そう感じるんだね。ぼくたちは風のように生まれて、風のように消えて
いく。少しも、こわいことじゃ、ないんだよ。自然の一部なんだから。