(注)学校名及び学年は応募時(平成17年度)で掲載してあります
第13回矢沢宰賞の審査を終えて 月岡 一治
今年度は中学生の作品に心を引きつけられました。そして内容的にはどう考えて生きていけばいいのかを悩み、けなげに自分を励ましている作品が目立ちました。
両親も、学校の先生方も、とても同級生にも、答えられない深い問いかけなのでした。詩の形をとって私に尋ねてくるので、私は自分の考えを選評にして書きました。
私が逃げたら、子供たちの心の迷いは更に深まってしまいますもの。御両親、先生方はどうか参考程度になさってお読み下さい。もう一つの内容の傾向は、子どもたちがしきりに「ありがとう」と、家族や友だちに感謝の気持ちを持ち、言葉にしていることでした。私は心がなごみました。そ
して逆に、今の子供たちは大切にされることが少なく、大事にされることに餓えているのかと、不安になりました。私の勘違いであってくれればと思います。今年度から入賞者全員に、記念のメダルが贈呈されることになりました。一生大切にして下さいね。私にもっと力があれば、もっと早くから小さな詩人たちの首に、
おめでとうと祝福してかけてあげられたのに。申し訳ない気持ちで一杯です。見附市長さんには心から感謝申し上げます。佳作と入選作品との間には、ほとんど差がありません。今年度は入選の皆さんにも選評を添えさせて頂きました。もし私の選が今年で最後になることがあれば、つ
ぎの選者にも入賞者全員への選評をお願いしたい気持ちでおります。私は、人目にはつかないけれど、我が子や教え子にできる限りの愛情を注いでおられる御両親、祖父母、教諭の皆様と、見上げて大切にされる幸せをかみしめてい
る子供たちの姿を見ることが、何よりもうれしく思う人間です。互いの心を伝えあって、手を取りあって生きていこうではありませんか。
最優秀賞・ポプラ賞
机の中に
濱野 沙苗(佐渡市立高千中学校2年)
ガランと空っぽの机の中に
そっとしまったものがある授業中、問題が解けたときの
炭酸水がはじけるような
スカッとする気持ち
しまっておこうあと五分で授業が終わるってときの
風船いっぱいにつまった空気みたいな
つーんとする気持ち
しまっておこう休み時間、おしゃべり中の
太陽みたいなオレンジの
あまずっぱい気持ち
しまっておこうこんなにつまって
ぎゅうぎゅうに重たくなった
この私の机を
誰にもつかわれたくない
っていう
誰にも触れられたくない
っていう…気持ちそっと奥にしまっておこう
《選評》 目には見えないあなたの気持ちが、まるで目に見えるように感じられます。いろいろな気持ちが生まれて、あなたの心の引き出しにしまわれて、あなたは大人になっていきます。とてもすぐれた感性があります。
奨励賞・ポプラ賞
輝
内田 萌子(新潟市立五十嵐中学校1年)
生きるって こういうものなんだね
やっと 気づいた人と ケンカしたり
笑いあったり
時には 泪(なみだ) も流したりしてね
大きな声を だして ふざけたり
時には 親にも 怒られたりするもの
見上げれば 空は凛と 澄んでいて
川は キラキラ 光っているの
木は 風で ゆれていたり・・・
するものだよね
悔いの ないように
ずっと 生きつづけたい
たとえ 命は 短くても
人生は
定められたわけじゃなく
変えられることが きっと 出来るよ
だって 生きてるからさぁ
未来を 信じていけば・・・
きっと 生きていけるよね
もう 私
つまづかないよ・・・《選評》 本当に、生きるってこういうものなんだね。「だって、生きてるからさぁ」。私たちは生きるために生まれてきました。あとは、どう生きるかということ…、つまずいたっていいんだよ。
兄
伊石 成司(新潟県立吉田養護学校中学部2年)
兄から 小二の時に守ってもらった 。
泣きながら、自分をしかりなが ら
自分の同級生にどなってた 。兄が
コンビニに行く時に
「何かいるか。」
と自分に言った。
「おまけつきのおかし。」
と言うと「わかった。」
と、言ったが、嫌な顔して出ていった。
何分もすると
帰ってきた。
安いおまけつきのおかしだった。
安くても、うれしかった。兄はアホ だ
中一の時、テストで、悪い点をとったの で
さんざん兄を笑った 。
自分が中一になった ら
それより下の悪い点をとった 。兄はアホ だ
アホの兄が一番い い
アホの兄 が
大好きだ 。《選評》 兄が大好きなんだ。いいなあ、こんな弟思いのお兄さんがいて。一生助け合っていくんだよ。大切なお兄さんだよ。
人間の不思議さ
岡崎 愛未(大阪市立聾学校中学部2年)
『意地張って死ぬ位なら一生懸命もがいてでも生きようや。』
絶望した人や、生きる気力を失った人が立直ると言うのは、だれかに、背を押されたということだ。
もしそいつが強ければ自分に背を押されたということだ。
人って不思議な生き物だ。
観察していておもしろくもあれば醜いのもある。
それが人間だ。
『孤独のまま生きる気力を失う位ならかっこ悪くあがいて、一生懸命生きて最後には丸くなって死のうや。』
人間の不思議さ
《選評》 『 』の中の言葉が誰かの言葉だとしても、私たち人間は自分で自分の背を押して生きていくということに気づいたあなた。本当に、人間は不思議な生き物だね。
蝶
佐野 愛実(見附市立今町小学校5年)
二つ折りの四つ葉のクローバー
うれしそうに
ふわっ
ふわっ
と、まい上がる
春がきたことをしらせに
《選評》 蝶が舞い上がったのは、あなたの心の中の空。みずみずしい感性に、思わず拍手。
強い翼
大川 友栄(群馬県立赤城養護学校小児医療センター分校中学部1年)
鳩の群れが飛んでいる
僕も鳩のように
翼が欲しい
手術した足の痛み
リハビリの苦しみ
みんな忘れて
苦痛のない世界へ
飛んで行きたい鳩たちに語りかけてみる
寒くないかい
鳩たちは
北に向かって
羽を大きく翻した
鷹や鷲のような
鋭いくちばしも
広い翼も持たない
か弱い鳩が
吹雪く風を切り
谷川岳の方に
消えて行った鳩よ
足の傷の痛み
リハビリの辛さに
立ち向かう
強い翼を
僕も
持ちたい《選評》 か弱い鳩が、心がか弱くなりそうな君を励ます。君に翼はいらない。か弱い生き物が懸命に生きている姿に自分を重ねているから。がん ばれ。
佳作
三輪車
平澤 慶樹(長岡市立前川小学校6年)
物置きの中をそうじしていたら
昔よくあそんでいた
なつかしい三輪車がでてきた。
幼稚園の時のお気に入りの赤い三輪車
新しい自転車を買ってもらってから
捨てようと思っていたけど
そのままずっと忘れてた。
ハンドルもペダルもさびだらけで
クモの巣まではっていた。
ほこりをはらうとぼくの名前が
しっかりときざまれていた。
こんな小さな三輪車に
自分が乗っていたことが
とても不思議に思えた。
ぼくはもう一度乗ってみた。
キーコギーコ
昔の自分を思い出した。
自分は昔と変わったけど
車輪をこぐその音は
今も昔も変わらない。《選評》 最後の二行。変わっていくのは私たち人間だけ。君が父親になり、おじいちゃんになった時、三輪車をこぐ小さな男の子がいるかも知れない。その音は、今も昔も変わらない。
風
林田 望来(佐渡市立西三川小学校2年)
風がふきました
そうじの時間に
風が口ぶえふきました
木のはと
いっしょにあそびたいから
風さん
晴れててあったかいとき
いっしょにあそんであげるから
《選評》 「風が口ぶえを吹きました」。何ていい表現でしょう。風は、生きているんだ。
空
中村 樹奈(見附市立名木野小学校1年)
もし空に目があったら
わたしが見えるのに。
もし空に口があったら
わたしとしゃべれるのに。
もし空に耳があったら
わたしのこえがきこえるのに。
《選評》 素敵な発想です。実は、あるのかも知れない。空はいつも、あなたの心を見ている。風になって話しかけ、あなたの喜び、悲しみを聞いているのかも知れない。
おとうさん
松崎 怜美(見附市立上北谷小学校1年)
よる、じょせつ車にのって
じょせつにいっている。
「ガガッ。ピーッ。」
とわたしがねているときに音がする。
と中、ねていられなくなる。
「おはよう。」
とおとうさんは、まい日いってくれる。
「おはよう。」
とわたしもかえす。
おかあさんよりもせがたかい。
びっくりしたよ。
学校からかえってくるといってくれる。
「おかえりなさい。」
わたしは、とてもうれしい。
きょうも、じょせつがんばってね。
おうえんしてるよ。
おおきくなったらわたしもしごとがん
ばるからね。
かえったらいっぱいやすんでね。
わたしも学校いくのがんばるからね。《選評》 「大きくなったら、私も仕事、がんばるからね」。子が、親の姿から学んだ言葉です。「帰ったら、いっぱい休んでね」。読むと、涙が出てきます。
一瞬
吉田 彩(見附市立見附中学校1年)
一瞬ってほんのわずかな時間だけど
すごく大きな時間でもある
今、赤ちゃんが生まれた
今、誰かが死んでしまった
今、とても美しいものを見た
今、ひどく悲しいものを見た
今、自分のベストをつくせた
今、自分のベストがつくせなかった
一瞬って不思議なもので
たかが一瞬って思っても
とても、とても
大きな時間なんだ
その大きな一瞬を
大切にしたい
大事な、一瞬を …《選評》 あなたの発見です。そう。だから一瞬、一日を大切にして生活しようね。
心の天気
吉田 隆史(加茂市立下条小学校6年)
今日は雨、明日はくもり。
毎日雨やくもりばかり
晴れが少ない
ぼくの心も雨もよう。
くもりのようにどんよりしていて
雨のようにシトシトしている。昔はずっと晴れていた。
昔の心にもどりたい。
少しずつ大人になっていくぼく
不安がたくさんあるから、
晴れないのかもしれない。明日の心が晴れるように
てるてるぼうずをつるした。《選評》 お父さん、お母さんが君の太陽になっていた時、君の心はずっと晴れていた。こんどは君が家族をあたためる太陽になる日まで、心の天気はさまざまに変わる。
ラブレター
廣瀬 朱希安(佐渡市立金泉小学校2年)
ぼくは、いなくじら保育園にいたころ、
しずかちゃんから、
はじめて、ラブレターをもらったよ。
「わたしは、ときやすくんのことがすきです。」
って書いてあったよ。
ラブレターってドキドキするもんだね。
何だかとってもうれしくなったよ。
《選評》 いいなあ。私は一回ももらったことがない。すきですって言われるうれしさを、君はいつ誰に、わたすんだろう。
魔法の笑顔
高田 彩奈(奈良県立奈良東養護学校中学部3年)
私の周りを見渡せば
たくさんの大切な笑顔達 …
前を見れば仲間の笑顔が
後を見れば家族の笑顔が私の心の奥にある
甘酸ぱい思い出達 …
辛い事 悲しい事
楽しい事 幸せな事楽しい事や幸せな事は
笑顔に包まれている
辛い事や悲しい事は
泪で包まれているだけど…一人じゃないよ
いつだってたくさんの
魔法の笑顔に包まれているから《選評》 私たちが、人のために笑顔になれる大切さとむつかしさが、伝わってきます。あなたの笑顔に救われる人がいます。
ぼくにきいてね
長谷川 弘貴(見附市立名木野小学校2年)
ぼくはねえ
きょう、五時間目まであるの
さとこはねえ
きょう、四時間でおかえり
ママはねえ、きょう、火よう日だから
帰りがちょっとおそい
パパはねえ、
きょう、よるでかけて
朝、帰ってくるよ
みんなのよていは
ぜんぶしってるよ
ぼくにきいてね《選評》 大切にされ、信頼しあっている家族が見えます。君は、幸せだなあ…。
ひまわりと私
大野 美穂(見附市立南中学校1年)
ひまわりになりたい
大きく背伸びして太陽をながめている
ひまわりになりたい
雨にだって風にだって負けない
ひまわりになりたい。わたしはひまわりより小さいけど
ずっと太陽は見ていられないけど
少しでも太陽に近づきたいから
私も明るい方を向いて生きてやる今はまだひまわりじゃないけど
いつかぜったい大きな花を咲かせてやる
ひまわりみたいに大きくなってみせる《選評》 あなたはもう、一本のひまわり。すぐ近くに家族がみなひまわりになって、お日さまをみています。ひとり一人の高さは違うけれど。
鳥
山田 大起(出雲崎町立出雲崎小学校6年 )
鳥は飛びます
空高く
けど
魚は飛びません鳥は飛びます
空高く
けど
犬は飛びません鳥は飛びます
空高く
だから
人も飛びます高く飛びます
希望と言う名の鳥につかまり
だから
飛ぶのです
希望に向かって《選評》 がんばれ、そうすればきっといつか。人間だけなんだね。少し先に、いつもほほえんで立っている希望を見る生き物は。
命
玉木 維乃(見附市立今町小学校3年)
みんな人間や、
動物にしか、命はないと思ってる。
でも、命はそこらじゅうに、
いっぱいあるんだよ。
たとえば森。
耳をすまして聞いてみて、
ほら、きこえる。
きこえる。
木が、がさがさゆれる音。
ひゅーひゅーざわざわ
風の音。
すべてが生きている、
あかしなんだから。《選評》 あなたの発見です。私もそう思います。私たちはたくさんの命の中で生きています。お互いが支えあって。
アルバム
高橋 萌子(見附市立名木野小学校6年)
アルバムを見ていると
たくさんの思い出がつまっている
その一枚一枚を見ていると
なんだかその時を思い出す
あぁなんだか
タイムスリップしているみたい
本当にタイムスリップしたら
どんな感じなんだろう
行ってみたいな一つ一つの思い出の中へ
《選評》 私も、昔の小学校の教室のいすに、59歳になった40人が全員腰かける姿を想像しました。でも、もう何人もこの世にいないんです。アルバムは、楽しいことも悲しいことも残して、ふえていきます。
きれいかなぁ〜
藤川 彩夏(長野県立松本聾学校4年)
私は、チューリップ
いつもいつも水くれしてもらうよ。
「大きくなれ.大きくなれ.」
「あっ大きくなった.やった.」
と言われたよ。
もっともっと大切に水くれしてね.
「大きくなれ.」
と言ってね。
《選評》 このチューリップは彩夏ちゃんのこと。みんな彩夏ちゃんのこと、大切にしているよ。これからもずっと…。
金魚高井 彩(加茂市立七谷中学校2年)
お店の中のガラスの箱で
毎日ゆらゆら 泳いでいるの
隣りには仲間 暗くなってもずっと一緒で
私の隣りのガラスの箱にも
模様の素敵な 友達がいるの毎日一緒に居たけれど
何故だか皆が 居なくなる
どんどんどんどん居なくなる
どんどんどんどん居なくなって
それが別れって分かったのゆらゆらゆらゆら 心がゆれて
ゆれる度に 悲しくなるの
それでも毎日
ゆらゆらゆらゆら 私は泳ぐ《選評》 金魚の心にあなたの心が重なって、あなたの悲しみがわかる。その悲しみが深いほど、喜びも深くなる。いつか気がつきます。
入 選 (50音順)
桜
飯塚 茜(見附市立今町小学校6年)
桜の花びらが
どんなに小さくても
その花びらが集まれば
とても大きな桜となる桜の花びらが
どんなによごれているのがまじっ
ていても
その花びらが集まれば
とてもきれいな桜となる花びら一枚は小さいけど
桜の木になると
とても大きく美しい
花となる桜も人も同じ
《選評》 人の心も桜と同じ。さまざまな小さな心の花びらでできています。あなたは大きくなる桜の木。私は年老いた桜の木。
おはらい
石月 尚宏(三条市立大浦小学校3年)
一月三日に おはらいがあった
かんぬしさんが
うちにきた
かんぬしさんが
のりとを読んだ
長かったから 足がしびれた
足をくずしたかったけど
がまん がまん
かみさまの前だから
がまん がまん
ばちがあたるとわるいから
がまん がまん
でも
心の中で
早く終われと思っていた
かみさまは
ぼくの心の中まで
見ていたのかな
見えていたら
たいへんだな《選評》 多分、見ていたと思うよ。でもにっこり笑っていたと思う。君の心がかわいくて。
紫陽花を描いた
伊藤 有紀恵(宮崎県立宮崎養護学校高等部1年)
私は紫陽花の花が好きです。
小さな星がいっぱいの花だから
色々な色があるから
優しい色
同系色の星をいっぱい並べたお花が咲き始めたよ
《選評》 二行目を読んで、小さな星がいっぱいのあじさいの花は、あなたの心の姿だと思いました。とっても、きれい。
弟のねがお
伊藤 玲音(見附市立今町小学校3年)
わたしの弟は、いつも元気
いろいろなひょうじょうをする。
ないたり、おこったり、わらったり。
その中で、わたしが一番気にいっているところがある。
それは、ねがお。
弟のねがおはとってもかわいいんだ。
弟のねがおを見ていると、
なんだかわたしもねむくなってくる。
なんだかしあわせな気ぶんになるんだ。
今日も弟のねがおを見ながら、
昼ねでもしようかな。《選評》 さびしい寝顔の人がいます。でも、仲のよい家族の寝顔は、みんな幸せそうです。
通学路
江田 理香(見附市立名木野小学校6年)
六年間歩いた道
友達と笑いながら歩いた道泣いて歩いた事もある
けんかして歩いた事もある入学したばかりのころは長く感じた道だけど
もうじき卒業の今はそんな事を感
じないくらい友達との話が楽しい私の事を何でも知っている道
だからこそ忘れたくない
大人になっても《選評》 道は、人生にもたとえられます。忘れたくない通学路から、あなたの一生がのびています。
大かぞく
大城 裕也(沖縄高等養護学校高等部1年)
ぼくのかぞくは、十人かぞく
一番上は、高校三年生
ぼくは、高校一年生
弟は、中学一年生
他は、小学生と赤ちゃん
みんな、やんちゃぼうずいたずらずきの弟
ぼくのノートをきったり
大ごえをだしたり、・・・
一方、妹はおとなしく
弟のめんどうをみるぼくは、おてつだいをする
せんたく
おうちの中のそうじ
外のゴミとり
それから弟のめんどうをみるぼくの一日がおわる
《選評》 落ち葉のように降りつもる、あなたの一日。それがあなたの家族という名の樹の根元に落ちます。みんなを大きく育てていく。
病院の夜
大原 知己(大阪府立羽曳野養護学校小学3年)
こわいで〜
病室のドアが風でゆれるで〜
こわいよ〜しーんとしてて
自分だけおきててしずかすぎ
ねてたとき
横にだれかがねてる気配がするふり返ってみたら
だれもいないこわいで.〜
《選評》 本当に、こわいね。そこにいられる君は、強いねェ。
太陽
大星 詠(新潟県立吉田養護学校中学部3年)
近すぎても死んじゃうし
遠すぎても死んじゃう
人間が生きていけるような
ちょうどいい位置にある太陽
なんでわざわざそんな位置にあるんだろう
動いてもだれにも文句など言えないのに
もしかしたら・・・・
もしかしたら私たちは
「生きている」のではなく
太陽に「生かしてもらっている」
のかもしれない
《選評》 よく気がつきました。私たちは太陽に、生かしてもらっているのです。
すきなもの
小田嶋光一 (富山県立高志養護学校中学部1年)
むらさき色がすき
まざった色だからためいきがすき
ためいきをすると力がぬけるからふつうがすき
なんでもやりやすいからふつうでいろいろやってみたい
《選評》 誰もあなたをしかりません。あなたの言うことは、本当のことだから。
自分の心と命
亀井 旭(秋田大学附属養護学校高等部1年)
僕はしりたい
自分の心と命はいったいどうなっているのだろう
命ってなんだろう
心ってなんだろう
いったいなんのために心と命はあるのか
自分もなぜ心と命があるのか
みんなもなぜ命があるのか
僕は知りたい《選評》 命って、親から子へと伝えられていくもの。心って、自分と人の命を大切にする気持ち。「人生とは何か、一人で考えなさい。そのためにお前に一回きりの命を与えます」と、誰かがあなたにも、私にも、問題を出したのです。
二月の雨
北爪 皓(群馬県立赤城養護学校小児医療センター分校小学4年)
冷たい北風がふき
落ち葉はヒューヒューとまっている
空気はかわいて手はかさかさ二月なのに
雨がふってきた
ポツポツ
パチャパチャ
サーサーと雨のシャワーだ
かれ木は黒く生き生きと
落ち葉はぬれてやわらかく雨が止んだ
大きく息をすいこんでみた
しめった空気は気持ちがいい冬を終わらせる
二月の雨あたたかい春はもうすぐだ
《選評》 二月の雨に、敏感に春の姿を見ています。だから、しめった空気は気持ちがいい、と言いました。
本当の幸せ
木村 かおり(秋田県立比内養護学校高等部1年)
ずっと君と一緒にいたい。
いつかは遠く離れていってしまう
かもしれないけれど。本当の幸せって何だろう。
私にとっての幸せ。それはね。
大切な人と一緒にいられること。
大切な家族がいること。
好きなことにいっしょうけんめい
になれること。心から笑える時も、つらいって思うこともたくさんあるけど、
今、生きていることを心から幸せって思える人になりたい。ずっと君と一緒にいたい。
いつかは遠く離れていってしまうかもしれないけど、
それでもいい。
君と一緒にいられることを
心から幸せって思える人になりたい。《選評》 人を愛するということ。できた家族を大切にするということ。幾つになっても、私たちからこの気持ちはなくなり
ません。
ガラスのむこうで
栗原 素延(神奈川県立横浜南養護学校中学1年)
ガラスのむこうで
すやすや寝ている
ちいさな
ちいさな
手があった
ちいさな
ちいさな
足があった
自然に泣けてきた
うれしかった《選評》 保育器のケースの中にいる赤ちゃん、大丈夫、健康に育つよ。優しいあなたがいて、よかった。
死より生きる事
桑江 幸美(沖縄高等養護学校高等部1年)
私には、
いつも私をかわいがってくれる父、
母、姉、弟がいます
今、お父さんは病気です
腸の病気で、早く治ってほしいです
今、家族にあやまりたい事が
たくさんあります
危ない事をしました
家族に言ってなかったけど
小、中学生の
皆からいじめられていました
誰もいない時にカッターで
手首を傷つけようとしました
自分の心も傷つけようとした
一回だけ自殺しようとしました
ある日、友達に
「命は大切だから、やめて」と言われ目が覚めました
その時、
私はやっと気づきました
だから、家族にあやまりたいです
死より生きることが大事だと気づきました
お父さんは病気とたたかっています
頑張って健康になってほしいです
前みたいに笑える家族にするのが
大事だとわかりました《選評》 私たちは、生きるために生まれてきました。あとはどう生きるかということ。家族が支えあうことの大切さに、あ
なたは気がつきました。
大人の一歩
後藤 智 (愛知県立春日井高等養護学校3年)
一生懸命やり続けると成長する
できないことをやり続けると成長する
慣れないことをやり続けると成長する
やりたいことを我慢していくと成長する
先生や親に怒られて、自分が素直に聞けると成長する
人と助け合うと成長する
人の気持ちを考えると成長する
前向きだと成長するこれが大人の一歩になる
《選評》 自分らしい一生を送るために必要なことを、今全て身につけました。あとは実行するだけ。がんばれ。
大空
齋藤 都(新潟市立葛塚小学校4年)
もう少しでとどきそうで
全然とどかない
この青い空
どうしてとどかないのかなあと思って
いつもこの大空に
手をのばしている
雲って軽いのかな
空って本当にきれいかなって・・・
でも
いつかとどくかもしれない
この小さくて
大きな夢を持っている手があの大きいようで小さい
遠いようで近い空に《選評》あなたは空を呼吸して生きています。だからあなたの胸の中にも空があるのです。空ってきれいで、夢を持たせてくれるでしょ?
辛いと幸せ
佐藤 麻伊(見附市立西中学校1年)
ねえねえ知ってた?
辛いって字に一をたすと
幸せって字になるんだよ
辛いと幸せは常にとなり合わせ
雨の後は晴
冬の後は春・・・幸は永遠と信じ
辛は今だけと信じてみる
なんかちょっとだけ
笑顔になれたよ
私・・・《選評》辛いと幸せは、あなたの一生にどちらが多いか。辛いことの方が多いと思うのは、人は小さな幸せに気づかないことが多いから…。
あの頃に戻りたいなんて・・・
只野 佑太郎(神奈川県立横浜南養護学校中学1年)
あの頃に戻りたい
そんな時があるそれは不可能だ
辛いことがあっても
前へしか進めない
過去を振り返る
そして同じ失敗を
くりかえさないようにする
それは良いことだ
しかし不可能なことを
考えてはいけない
前へ進める
足がある
可能性がある
少しずつでも前へ進む
昨日の自分の位置よりも前に立つように
理想の自分に少しでも
近付くように《選評》 私の心はいつだって、さまざまな昔に戻ります。でも、体は戻ることができません。この体の命は一回きり。
音
田中 茉未(青森県立八戸盲学校中学部1年)
私は音が大好き。
走っているみたいなリズムが好き。
ダカダカダカ。ドウドウドウドウ
ドウドウ。
ザッザッザッ。
スタッカートの切れる音が好き。
次の音が楽しみ。次の曲にかわる瞬間が好き。
また、ダカダカダカ。ドウドウド
ウドウドウドウ。
ザッザッザッと始まる。
シューッ。モーターがかかったみたいに曲が盛り上がる。
嬉しくなる。
盛り上がれば盛り上がるほど、私は嬉しくなる。《選評》 曲と音は作曲者、演奏家の心の表現です。人は人を励まし、楽しませ、いやします。そうしないではいられないのです、人間は。
本当の自分
徳田 貴昭(大阪市立聾学校中学2年)
私たち人は本当の自分を出そうとしない
恥ずかしいのかも知れない
でもそれはべつに悪い事ではない
本当の自分を出したら気持ちいい
だから自分に正直になったらいい
そうすると本当の自分が出せる
すると楽しくなる一生懸命になるといい
勉強でも
運動でも
そうすると本当の自分が出せる
すると楽しくなる
もっと自分に正直に一生懸命生きていこう
そうすると人生が楽しくなる《選評》 その通りです。でもできる人と、できない人がいます。正直な人は、できます。
はるがきた
長野 駿(糸魚川市立浦本小学校1年)
みつけたよ みつけたよ
ちっちゃくて きいろい ふきのとうみつけたよ みつけたよ
ちっちゃくて きいろいたんぽぽみつけたよ みつけたよ
あったかくて きもちいいお日さま《選評》 しゅんちゃん、春が来てよかったね。うれしい気持ちがよくわかる。
雪が降っているよ
長谷川 雅人(見附市立今町小学校6年)
雪が降っているよ、雪が降っているよ
雪ってね小人なんだよ
ゆっくり降って、ゆっくり降って ……
だけれど
こんなに小さい雪だけど
風にも負けない
すごい小人なんだよ
だから
どんどん、どんどん
積もって、積もって、積もって
みんなで、大きくなるんだよ
雪が降っているよ、雪が降ってるよ ……《選評》 「雪が降っているよ…」。幾度もくり返しつぶやくと、雪の世界が見えてきます。私の心の中にも、積もります。素敵な世界があるなあ。
好きってどんなこと
林 大志(富山県立盲学校高等部1年)
人をすきになるって
どんなこと?
人に恋心を抱くって
どんなこと?
昔のようにただ単に
好きっていう
わけではない。
今、ぼくにも
好きになりかけている
人がいる。
その人の声を聞くと
胸がどきっとする。
その人のことで
頭がいっぱいになる。
早く本当の
好きっていう気持ちを味わってみたい。《選評》 お父さん、お母さんはどんな気持ちで読むことでしょう。好きは、相手を幸せにしたいと強く思う気持ちの、始まりなのです。
冬の夜の月
肥田野 優希(新潟県立吉田養護学校高等部3年)
冬の夜の月は
悲し気に 泣いているように見た
ならば 今静かに降っている
真っ白なこの雪は
月が誰にも分からないように
静かに流した 涙なのかもしれないさみしそうに 一人きりで
誰にも分からないように
ただ静かに、涙を流す、月を見つめる孤独な空に 想いがあふれて
ただ静かに、涙を流す。月が見つめる静かに降る雪はやまない
《選評》 言葉のない世界で、一人、涙を流すことがあります。あなたの心の割れ目からしみ出てくる悲しみを感じます。月だけがじっと、そのあなたを見守っています。
自分へのちょうせん
福原 麻以(津南町立中津小学校3年)
スポーツでも 勉強でも
人に勝ちたい 気持ちがある。でも まって。
人とあらそうということだけじゃなくて
自分とたたかうことも
ひつようじゃない?だって その方が
やりとげた たっせい感が大きい人とあらそう気持ちを
へらしてみるその気持ちの方が いいんじゃない?
《選評》 これもあなたの発見。すばらしい。あなたは人の気持ちがわかり、自分を育てることを知っている。とてもよい作品です。
春風
松岡 智也(和歌山県立紀伊コスモス養護学校中学部3年)
春の風を
さがして
あるくんだ
春の風を
みつけるんだ
《選評》 誰もが待っている春。季節の春、幸せという名の春。でも自分がさがして見つけなければならないんだね。
おこられた
松本 りな(群馬県嬬恋村立鎌原小学校2年)
「どうして、もどってこなかったの。」
ママが
「もお。」
って、おこった。
「ちゃんとかえってきてよ。」
って、ゆった。りなは、だまってた。
すべりだい、つうってのったの。
ぶらんこも、のったの。
あそびたかったんだもん。《選評》
外遊びが大好きなりなちゃん。学校でいつまでも遊んでいました。心配するお母さんに答えたものです。なんてか
わいらしい答え。
救い
水谷 優子(新潟県立吉田養護学校高等部1年)
私は逃れたい
溺れそうな悲しみから
黒い大蛇に締め付けられ、喉を食
い千切られる苦しみから
全体に絡みつく鎖から・・・できぬならば
私を、その悲しみたちと共に湖に
沈めてください
二度と浮かばぬように
できぬならば
私を、地獄の業火に葬ってくださ い
この身が残らぬようにでも・・・
私は
本当は・・・誰かに救われたい
《選評》 私はあなたの気持ちに、言葉を失いました。そして今以上のことが出来ないでいる、周囲の人々の悲しさを、思いました。
キミはキミしかいないんだ
八木 麻衣子(上越市立城東中学校3年)
決めたゴールへ行くときに
走ってもいい
歩いてもいい。
人 それぞれ速さはちがうのだから。
人より速く速くって、すっ飛ばすんじゃ
いつか転んじゃうんだ。
自分の速さでいいんだよ。
人と較べるのは、大間違いさ。
力も違えば体も違う。
キミはキミしかいないから、
自分をなくしちゃいけないんだ。
人の真似をどんなにしたって、
キミはその人にはなれないんだよ。
でも、それと同時に
人がキミの真似をどんなにしたって、
人はキミにはなれないんだ。
みんながみんな違うから、
自分のペースでゴールに着けばいいんだよ。《選評》 自分に言い聞かせる言葉の重さ。あなたはしっかりと自分の方法で、大人へと歩き始めました。
みんなができるように
矢島 結衣(見附市立今町小学校5年)
何でもできる
遊べる
食べられる
話せる
だけどこれができない人もいる
わたしたちには ふつうのことが
病気の人には むずかしい
かわいそうだな かわいそうだな
遊びたいだろうな
食べたいだろうな
話したいだろうな
病気の人は がんばってる
やりたいことができるように
わたしたちは 何をしてあげられるかな
少しでいいから 助けてあげたい
みんなができるように《選評》 小さなことから始めて下さい。できればそれを、続けて下さい。人を思いやる心を大切にして下さい。
木のように
渡部 真子(愛知県立春日井高等養護学校3年)
木はいつも同じ場所にいる
私達を見守っているように
そんな木は私達と同じように
生きている私達よりすごく長生きで
とても強い
台風がきて頑張っていた
私はそんな君を応援した
がんばれ、がんばれって
そんな君のように
私も強くなりたい《選評》 厳しい天候の年は年輪がうすいのです。夜、風の声をかりて木が泣くこともあるでしょう。でも、見上げるあなたを励ます。木は、強いなあ…。あなたはしっかりと自分の方法で、大人へと歩き始めました。