第1回矢沢宰賞の審査を終えて
審査員 月岡 一治
矢沢宰賞をつくり、たくさんの児童生徒に詩を発表する場を与えようとした大人たちの熱意がいま実を結びました。応募した子供達の詩が、暗い土をやぶって現れた芽から若葉になって、風にそよいでいます。その目にうつっている現実の世界のきびしさと奥深さ。それぞれの詩は、不安にゆれながらも、自分の心のありようをみずみずしくうたっています。
初めての募集にもかかわらず、県内の6施設から151編もの作品が寄せられました。特にすぐれた作品14編の中から、各賞を選ばせていただきました。
私はあなたの病気の内容について、なにも知らされていません。この詩の中の「本当のこと」は、きっとその病気のことでしょう。大人たちは「本当のこと」を「現実」と呼び、そのきびしさに負けてしまいがちです。あなたの詩は、たとえその現実を知っても、自分の夢をもって生きていけますか、生きていいですかときいています。心からの問いかけが、読むたび私の心の耳に深く届きます。
最初の2行の問いかけの重さに、胸をうたれました。最終行の「たくさん うたを うたいたい」という澄んだ願いが、この詩をとても深いものにしています。「うた」が実際にうたう「歌」だけでなく、この世にひとつしかない、あなたのいのちそのものに、高められているからです。
試験通学 (詩に戻る)
事情があって一度離れた学校へ、また試験的に通学したときのあなたの気持ちが、とても正直に書かれています。不安とはずかしさと、かすかな期待。最後2行目で一気に高められた不安が、最終行でホッと消えていく。その時君の心の中にこみあげた喜びが、私の心の中にまであふれてきます。