第1回矢沢宰賞入賞作品

第1回宰賞選評


○ 最優秀賞

 

 本当のこと          山本 妙

 本当のことを知りたくなくて

 本当のことを聞こうとしませんでした

 本当のことを信じたくなくて

 本当のことからにげていました

 

 夢を見すぎることは、

 いけないことなのでしょうか

 本当のことを知り

 それを信じなければいけないのでしょうか

 私は、自分の夢を信じつづけても

 よいのでしょうか             選評

 

 

○ 奨励賞

  わたしって 大人になれる?  久永 葉寿美

 わたしって 大人になれる?

 おしごとできる人になれる?

 

 はやく おとなに なりたいな。

 ようちえんの せんせいに なりたいな。

 

  さいた さいた

  チューリップのはなが・・・。

 

 たくさん うたを うたいたい。      選評

 

 

 試験通学           玉井 広光

 もといた 学校へ行くときは

 朝からなんだか うれしい。

 

 「久恵ちゃんに 会えるかな?」

 「まさる君と、たくさんお話できるかな?」

 小さい声で「おはよう。」と言った。

 とっても、とってもはずかしい。

 

 「玉井君、また来たが?・・・」

 みんなが、ぼくのそばに来た。 選評

 

 

○ 佳作

 つばさ            池田 彩花

 私につばさをください

 ぜいたくは言いません

 一つでいいのです

 私につばさをください

 つばさがあれば

 青空を飛べます

 ポッカポッカあったかい

 太陽の下で

 鳥のようにちょうちょのように

 だから、私につばさをください        

 

 

               今村 香月菜

 涙は なぜ出るのかな

 悲しいとき

 涙はでる

 涙が出ると

 のどが痛い 心が痛い

 

 おかしいときも

 涙は出る

 おかしいときは

 お腹がいたい

 

 だれか

 涙を止める方法

 知らないかな

 涙が止まれば 傷みも止まるかな

 だれか

 涙と傷みを止める方法

 知らないかな                

 

 

 大けやき           刈谷 和芳

 私の家族を

 見守ってくれた家の裏の大けやき

 

 春は、黄緑色の髪

 夏には、緑色の髪

 秋には、赤色の髪

 冬には、白色の髪

 毎年、くり返していたきれいな髪

 

 けやきの木は、年を取り

 枝がぼうぼうになってしまった。

 

 私達に木かげをつくってくれたこと

 私達に美しく見せてくれた夏の木もれ陽、

 家族みんなで

 ありがとうという

 気持ちを持ちながら

 けやきの木が倒されるのを見ていた。

 そうして、三百年の幕を閉じて

 私達と別れて、神様のもとへ行った

 大けやき

 

 さようなら

 大けやき

 さようなら

 四季の髪

 

 忘れられない

 枝にぶらさげたブランコ

 忘れられない

 いいにおい

 

 今は、もう大きな切り株と神社だけ

 

いつか私達は、あなたの所へいくよ。      

 

 

 ほしい車           窪田 正志

成人になったら、

お金を沢山ためて、

高い車を買いたいな。

でも、耳が不自由だから、

無理かな。

心配しているよ。

もし、できれば

自動車学校で

練習をして、

卒業をして、

免許をもらって、

ゆっくり走る。

きれいに洗う。

いつまでも走る。

 

大人になったら、

かっこいい車

買いたいな。

 

車のやり方は、

だいたいわかる。

走ってみたい。

でも耳が不自由だから、

無理かな。

ぼくは、心配しているよ。

ゆっくり走る。

きれいに洗う。

とおくまで走る。             

 

 

 入院             斎藤 衛

初めて

病院に

とまりました。

 

なみだが

とまりません。               

 

 

 たいそうぎ          中村 大祐

今日、

ぼくは初めてたいそうぎをきました。

小林くんに

「なかだい、かっこいい。」

と言われて

てれました。

「べつに。」

と言いました。

うれしくて

サッカーボールを

おもいっきりけりました。          

 

 

              堀 将人

風は優しく吹いてくる

僕らにそっと語りかけ

そっと心をいやしてく

 

風は激しく吹いている

あらゆるものに吹きつけて

一瞬のうちに過ぎ去っていく

 

時には穏やかな風となり

時には強力な風となり

いつも僕らに吹きつける

 

歩いていこう 風を感じながら

歩いていこう あの風の中へ         

 

 

うみ             松下 直人

うみの音は

ザーザーして

あめの音みたいだ。

 

よく見たら

なみが かけっこしているみたいだ。

 

つぎから つぎと なん人でもくるから

だれがかったか わからない

 

うみをよく見ていたら、

うみが ぼくを よく 見ていたんだ。

 

ぼくを

おいで、おいで。

と、いっているみたい。

ぼくも

いっしょに いきたいな。          

 

 

黄金色のカギ         見田 幸乃

障害を持った自分を

悔やむか

悔やまないか

それは、個人の自由

私は悔やみたくない

神様がいたずらをしたのなら

許すことはできないけど

微笑むことくらいはできる

不可能なことは多いけど

苦労することも多いけど

私は夢に向かって走る

いつか、この手に掴め

未来の扉をきり開く

黄金色のカギを−              

 

 

  気持ち            山崎 あゆみ

私と兄は、耳が不自由

それを分かってくれる人

ゆっくり話をしてくれる人

沢山いるから安心

でも、私は健聴者と

しゃべることも出来る

私の気持ちを通したい

あなたの気持ちも分かりたい         

 

 

 この道            山内 範夫

  何年ぶりだろう

この道は

空気の香りも

小川の流れも

あの時のままだ

 

今、ぼくは

過ぎ去った日々を

数えながら

この道を歩いている

 

歩みを進めるたびに

ぼくの胸が鼓動する

「ドキドキ、ドキドキ」と

 

この鼓動は何か

喜びか

不安か

それとも

恐れか