第7回矢沢宰賞

ありがとう
        徳田 健
小学三年八歳の秋
まだ歩けていた
それでも幼さと
これからの施設生活との不安で
母の背中にしがみついていた
今は高校二年十七歳
あれから九年
母は歳をとった
その小さい体で
大きくなった僕の体を背負い
送り迎えをしてくれた
背中のぬくもりを感じて
満足しているのにわざと困らせたりして
今までありがとうの一言もいえなくて
今日もまた背中の上