第6回矢沢宰賞

大きなもの
        除村 美智代
さっきわたしは 道ばたをはう一匹のありを踏みつぶしてしまった
わざと踏みつけた訳じゃないのだけれど ありは死んでしまった
小さな小さなあのありより ずっと大きなこのわたし
そのわたしよりも大きいあのメタセコイアの木
木より大きな森 森より大きな山
山より大きな青いこの空
わたしたちを見下ろしている この大きな空よりも
    ずっとずっと果てしなく大きな宇宙
そんな宇宙よりも大きくて重いもの それは命
さっきわたしが踏みつぶしてしまったあの小さなありの命だって
わたしたちの命のように どんなものより大切で大きなもの