第16回矢沢宰賞
冬景色
今津 翼
白い息が そっとこぼれる
ひんやりとした雪が 頬をぬらした
ぎゅっと握った手はあたたかくて
はなしてしまうのは惜しかった
何とも思われていないこと
私は知っている
だけどこの想いだけで
私は冬を乗り越えられる強さを得たよ
一緒に歩く帰り道
あのひとは嬉しそうに夢を語っていた
いつかどこかに行ってしまう
雪みたいな気がするのはどうしてだろう
傍にいられるだけで 嬉しすぎて
忘れているのかもしれない
人は出会い別れてゆく
まるで空から降る雪と それを吸収する
大地みたいに
胸がキュッと苦しくなる
どうか傍からはなれないで
握った手のあたたかさも
日だまりのような笑顔も
忘れたくない
忘れないようにしよう
四季の巡りも
今 私の傍を歩くこのひとのぬくもりも
この冬景色も
私の倖せも 全て
私は忘れないようにしよう