<経過>
猛禽の勉強をしようと思い購入。
比較的小型なので、エサ代他、飼いやすく扱いやすいと思ったので。
<飼育管理>
ケージは大型のネコ用ケージを流用した。
他の動物と一緒に、23〜30度程度に管理された室内にいる。
ヒトや動物を見て驚かないように、段ボールを使って視界を遮ってある(写真)。段ボールに貼り付いていたガムテープは全て剥がし、針金で固定した。
使用してある止まり木は河川にあった流木を切り出したモノ。木の表面が滑りやすかったので、一部には人工芝が釘で打ちつけてある。全部で3本。巣箱は無し。
床はタオルをしいた上に更にペットシーツを敷き、水を張った洗面器を置いた(水浴び用)。
天井からはフルスペクトラム照明が1〜2灯、1日12時間点灯している。
<エサ>
参考 エサ代(業者はあちこち)
| 冷凍マウス3週齢 | 10g | 100円 |
| 冷凍マウス2週齢 | 5g | 70円 |
| 冷凍ひなウズラ | 5g | 30円 |
| ミルワーム | 1カップ | 100円 |
午前と夕方の1日2回給餌。
エサ用として売られている、冷凍マウスやウズラを室温に戻してから与えている。
供与量は、1日15〜25グラム程度。
時々、ミルワームを与える。
ミルワームは、そのままだと逃げてしまうので、水を張った器に入れておいた。1)
<行動>
ヒトに慣れていないところは、以前のフクロウ2)と同じ。
やはり、近づくとビル・スナッピングがある(その後飛んで逃げる)。
(無理矢理保定するなど)よほどのことをしても、小さいのでケガをするようなことは少ない。
自分が安全だと思っている間は、足先くらいは触らせるようだ。
3カ月ほど飼育していたら、時折人前でもエサを食べ、活動するようになった。
昼夜を問わず、一日中活動しているようである。
余ったエサを、ペットシーツの裏側に隠したり、空腹時には逆にシーツをひっくり返してエサを探そうとする行動が観察された。ケージの写真のペットシーツの乱れはそのためのモノ。
イヌ・ネコが嫌いで、特にイヌが近づくと怯えて逃げる。
ネコについては、逆に追い払うために警戒音を出すことがある。
<治療>
身体検査上の異常はなかったが、線虫、吸虫駆除のため、イベルメクチン(Ivomec注TM)0.2mg/kgとプラジカンテル(ドロンシット注TM)34mg/kgの注射液を腹腔内に注射したマウスを与えた(1回のみ)。
薬入りのマウスは吐き出されることもなく、抵抗無く飲み込んだ。
特に副作用等認められなかった。
<考察>
コキンメフクロウ(Athene noctuca,little owl)は、アフリカ北部、ヨーロッパから中国北部に分布するフクロウ目フクロウ科の猛禽。
イギリスなど一部地域で帰化している。
体長19センチ〜23センチ、体重は100グラム〜200グラム程度、夜行性だが昼間も活動する。
昆虫や小型の小動物を食べる。
ネット上の検索では、大雪山等で留鳥として観察されるキンメフクロウやインド産の亜種などと混同された表記も見つかった。
飼育している個体の体重は150グラム。体長は15センチほど。
マウスとウズラの雛は食べるが、ミルワームは器ごとひっくり返されているだけのことが多い。
「ジャイアントミルワーム」の商品名で売られている大きなミルワーム(詳細不明)はキチンと食べることができるようだ。
ミルワームは購入することが出来るが、季節によっては自宅で繁殖させることもできる。4,5)
残念ながら、当院では養殖では十分な量を確保できないので殆どを購入している。
水浴び用の水入れを用意してみたが、水浴びをしているところを見たことはない。
木の葉の下(または樹洞)などに余ったエサを隠す習性は、フクロウ全般に観察されることがある行動のようである。3)
駆虫薬の投薬量については、イヌ・ネコの通常の使用量と同量を使用してみた。
イベルメクチンは、多くの線虫類(回虫、鞭虫、蟯虫、鈎虫、糞線虫など)や節足動物(疥癬、耳ダニ、ニキビダニ、シラミ、ワクモなど)の駆除に用いることの出来る、安価で便利な駆虫薬である。6)
この薬は、猛禽については通常の使用量の範囲では安全な薬のようであるが、セキセイインコや、カメ類、コリー種のイヌにおいては中毒死の報告があるので、自信の無いときは少量から初めて様子を観た方が良いかも知れない。
プラジカンテルの投与量については通常の条虫類、吸虫類の駆虫量(0.1ml/kg)よりも多い。ココで使用した薬用量はマンソン裂頭条虫を駆虫するときの投与量(0.6ml/kg)である。これだけ使えば、この薬で駆虫できる寄生虫は全て駆虫できるだろう。7)
剤型は、それぞれの注射薬をマウスに注射して、そのまま丸飲みさせた。
プラジカンテルは、非常に効果の高い条虫類、吸虫類の駆虫薬であるが、国内で販売されている錠剤は大きく、苦みがあり、飲ませにくい(外国には小さな錠剤もある)。生き物の大きさによっては扱いにくい薬である。
イベルメクチンについては注射薬を内服させても十分な駆虫が出来ることを経験的に知っているが、プラジカンテルについては、注射薬を内服させた場合に吸収が起きるかどうか不明である。
ただし、今回いづれの薬も特に目だった副作用は観察されなかった。
飼育ケージや止まり木に関しては、文献8)を参考にして作成した。
出来上がったらまるで違うモノになってしまったが、このサイズのフクロウについては、これでも充分に飼えるのかもしれない。
ただし、ネコ用のケージでは入り口が狭いので、掃除がやりにくく、個体によっては逃亡の心配をしなければならないだろう(写真)。
「ヒトに慣れない」と書いたが、流通の際に業者の元で飼育されていたわけだから、全く人間を知らないわけではない。以前に手を焼いたフクロウと比べて、トリの中にある種の「妥協」のようなモノが見て取れた。
そういう風にトリをし向けてしまう、飼育技術の差があるのかもしれない。
少しくらいの「妥協」では、飼っていてもあまり楽しいわけではないので、安易に飼おうと思わないこと。
わかったこと。
- 売られている猛禽は、保護されてくる猛禽とは違う(当然だが、弱ったりはしていない。すぐにエサを食べるようになる等「何も(治療)しないでもすぐ飼える」)。
- ヒトの手が入っているからといって、馴化しているわけではない。
- 小型のフクロウでも、かなりの設備投資、月々のエサ代が必要。
参考文献
1)『野生動物救護ハンドブック』文永堂出版刊 p.241-243
2)ケース2 フクロウ
3)『シマフクロウ』北海道新聞社刊 p.26-31
4)『フトアゴヒゲトカゲ』真生舎刊 p.34
5)『飼育下の爬虫類の食餌 実用ガイドブック』LLL.セミナー刊 p.91-93
6)深瀬徹:マクロライド構造を有するイヌ糸状虫症予防薬 小動物臨床Vol.12 No.4(1993.7)
7)深瀬徹:イヌ・ネコに寄生する吸虫・条虫の駆除薬プラジクアンテル 小動物臨床Vol.10 No.4(1991.7)
8)『飼育猛禽類のケアと管理 上巻』ラプター・フォレスト刊 p.35-59
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