子宮蓄膿症

2,3カ月以内

「水をがぶがぶ飲んで、コンクリの上とかでお腹を冷やしているみたいなんだけど・・・飯もくわねえし、どうしたんだろう?」

 ほとんどの場合、このような主訴で飼い主さんは犬さんを連れてこられます。
 陰部の腫大、乳頭の発達、陰部からオリモノでも有れば、完璧です。

「ここのところ、そうですねえ、2,3カ月くらいの間に発情(生理)が来たことはありませんでしたか?もちろん、犬さんにですよ」

 これで飼い主さんが「有った」と答えてくれても、OKです。
 後は簡単な血液検査と、超音波検査で子宮を確認すれば、全ての情報が出そろいます。

「診断名は子宮蓄膿症です」

どうやって治すの?
ゴールデンレトリーバーの子宮蓄膿症  子宮蓄膿症は、多くは犬で、5歳から6歳以上になると発症します。猫やフェレット、ハムスターやウサギなどでも発生することもあります。
 この病気は、高齢犬で多く、女性ホルモンの分泌バランスに狂いが生じたために発症すると言われています(出産経験が少ないと、よく発症するようです)。
 一旦この病気になると、手術による子宮卵巣全摘術(いわゆる避妊手術)を受けなければなりません。
 もちろん、子供を産むことは出来なくなります。
 あまりにも高齢である場合や、基礎疾患がひどい場合、膣や子宮の洗浄だけで何とか散らしてしまうこともありますが、必ずといって良いほど、翌年までには再発します。
 内科的に、ホルモンで処理して子宮の中の膿を全て排泄させる方法もあります。
 この場合、致死量の4分の1、つまり4頭に1頭は死んでしまうと言う量のホルモン剤で処理しなくてはなりません。犬さんは死にそうになりますし、2度と受胎しなくなることが多いようです。
 手術による治療がもっとも一般的で、後腐れがない方法であるといえるでしょう。

生存率100%?
 理由はいろいろあるようですが、手術に同意してくれない飼い主さんも居ます。
 発見がひどく遅れる場合もあります。
 さあ大変です。

 子宮蓄膿症は、開放型と閉鎖型と呼ばれる状態があります。
 子宮内に蓄積された膿が、部分的に陰部から漏出しているのが開放型。
 お腹の中にちょうどソーセージのように膿のたまった子宮が存在して、全く外部に膿がでてこないのが閉鎖型です。
 開放型の場合運がいいと、抗生剤を内服させるだけで完全に(その時だけで再発はするのですが・・・)、治ってしまうことがあります。
 しかし、通常の場合開放型も閉鎖型も、子宮内に大量に存在する膿や細菌は排泄されることが無く、出口がないため行き場を失った細菌が、問題を引き起こします。
 長い間、体内に細菌が存在するような場合、エンドトキシンに代表される細菌の放出する毒素が血液の流れに乗って体内を駆けめぐるようになります。
 敗血症と呼ばれる状態です。
 自然治癒は、あまりありません。
 このような状態になるまでにはいくつかのステップがあるのですが、最終的には、40度くらいの発熱が下がらず、肝臓や腎臓へのストレスによる急性の肝炎や腎不全、血球の障害による溶血や貧血、心ストレスによる不整脈の出現や心停止が起きます。
 目安としては、発熱が始まったり、嘔吐が見られるようになると、放置した場合死ぬことがあります。

 逆に、内臓にトラブルが起きてない、発症から日が浅い人たちでは、普段行われる避妊手術と同様の手順と日数で退院させることが出来ます。
 このようなケースでは、手術後元気の無かった犬さんが麻酔から醒めて2時間もした頃には別人のように元気になっていることがあります。
 それくらい回復が早いのです。
 発見後、速やかな手術をおすすめします。

予防
同じ日に手術を行った、同じ体格の中型犬の子宮サイズの比較(左が正常、右が子宮蓄膿症)  異常をを来した子宮は、正常の場合に比べて大きく、どうしても手術の傷は大きくなり、手術時間も長くなり、合併症などの潜在的な危険が常につきまといます。
 子宮蓄膿症の発生が多いのは、未経産の5〜6歳以降の女の子です。
 遅くともこれまでには、子供を産ませる予定のない飼い主さんであれば避妊手術(子宮卵巣全摘術)を済ませてしまいましょう。
 実際には、手術によるダメージの少ない3〜4ヵ月齢頃には済ませてしまった方が、より飼いやすいイヌさんとして一生を終えてくれます。
 初回の発情が来る生後5〜8ヵ月齢以前に避妊手術を済ませた女の子は、将来の乳腺腫瘍の発生が抑えられ(1%以下)、他の病気についても予防してくれます。

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