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デタラメに有名ですが・・・
さて、この病気・・・大型犬に多いとされる有名な遺伝性疾患です。イヌの股関節形成不全、Canine Hip Dysplasia(CHD)なんて書くとカッコイイでしょうか? 構成比としては、遺伝的素因による発症約70%、環境要因約30%とあり、世間では「遺伝性疾患・・・ブリーダー悪し!」という論調の元、色々いわれています。 つまり、この病気のイヌさんは気が付くと満足に歩くことも出来ない体に成長してしまい、その過失は飼い主にはない。 すなわち、ブリーダーはこういうイヌさんを出さないように交配相手を吟味し、異常の出た系統については淘汰し、良性の個体群のみが世に満ちるようにしていかなければならない病気(あるいは改良目標)である、と。 世間ではそのように理解され、大型犬ブームの到来とともに、全国的に有名になった病気です。 主に熱心な飼い主さんの間で。 ところが、実際に調べていくと、この病気が遺伝的な問題によって発生したという根拠、飼育上の問題によって発生したという根拠、ハッキリと「これだ!」という原因は、よく分かっておりません。 例えば遺伝。 股関節に異常のある両親から生まれた子イヌは、93%にCHDが出たという報告があります。 7%は正常だったのです。 一方で、両親ともに股関節が正常な場合、CHDの子イヌは19〜36%。 明らかに正常な両親同士の交配の方が異常の発生は少ないのですが、どの様な組み合わせであってもCHDの子イヌは発生する事が分かっています。 画一的な診断基準と主観の問題
この病気の診断は、通常のレントゲン撮影により行なわれてきました。OFAという団体は、hip extended positionという撮影方法(撮影時の姿勢)を用いて、股関節の状態をエクセレントからバッドまで4段階に評価してきました(バッドになったらダメ、可能ならたらエクセレントとグッドだけ残す)。 これより更に精度が高く、従来の方法で見落としてきた、あるいは従来(2歳)よりも若齢(16週齢)でも診断が可能な方法として、PennHIP(ペンヒップ)法という方法も開発され、世間的にはこのどちらかの方法で股関節を評価しています。 最近では、CTスキャンを用いた診断方法についても研究が行われるようになりました。 どちらの検査にも言えることは、これらの検査は患者を全身麻酔下で脱力した状態にし、自然の状態ではチョット考えにくい無理のある姿勢を取らせ、負荷を与えることで撮影を行います。 あまりにも機械的に手技を行うと、股関節の靱帯が伸びたり切れたり脱臼を起こし、医原性の事故すら引き起こします(いわゆる「トドメ」)。 もちろん、(病気による)やむを得ない変化により股関節が耐えられなかったせい、とも考えられます。 世間的には、「ブリーダーのせい」で片づけられて終わりがちな話ではあるのですが・・・ こうした撮影方法、レントゲンの評価には、同一犬であっても年齢によって関節が変化していく事、AとB・・・2種類の全く骨格、体格の違う犬種を同じ評価基準でまな板の上に乗せてしまう問題を含んでいます。 手技上の問題として、撮影時のわずかな変位によってズレた股関節(アーティファクト;角度を少しずらすだけでランクが変わる)、読影を行う獣医師の主観(同じマニュアルを使用しても、カライ評価、甘い評価をするヒトがいる)も出てきます。 特に主観的な部分については、世界中、どんな獣医師であっても「全く同じな」レントゲン読影は出来ません。 手術?
この病気の治療は、異常の起きた股関節の痛みからの救済を目的にします。まずは内科的な消炎鎮痛、ならびにコンドロイチンなどの関節軟骨を増やすサプリメントの供与。 体重管理や運動の制限(必ずしも、させないという意味ではない)、生活環境の改善(すべる床はX)を行います。 この程度で管理が出来なければ、以下のような手術を行います。
あとの手術はかなりの設備投資、特殊なトレーニングが必要で、獣医師によってこれら手術適応の優先順位、必要の是非についてかなりな差異が見られます。 先生毎に言う事が違うことがあるので、飼い主さんは注意しないとイケナイかもしれません。 当院で行えるのは大腿骨頭切除術のみ、手術を試みた犬種で最も大きかったのはニューファンドランドドック(大きすぎて体重が量れなかった)という犬種でした。 当時、訓練所に預けられたイヌで、後躯を痛がり「おすわり」を教える事が出来ない(ソレをさせられるようにしたい)というのが手術の目的でした。 このケースも含め、基本的に、術後のトラブル等は起きていませんし、一見正常な歩様に見えるところまでは回復します。 しかし、健常犬に比べると違和感(関節の伸展性など)を感じる事がありました。 教科書的な数字では、体重20キロ以下の犬種では、大腿骨頭切除術で十分に管理できるといわれておりますが、事実上、これ以上の体重(トラブルが出る場合がある?)であっても一見正常には見えるところまで回復するようです。 飼育の問題(「狂育」と呼ばせないために)
成長期に過度の負荷を与えた場合、骨格にひずみが来る場合があります。少年野球に多い、「野球ひじ」などを例に挙げれば解っていただけるでしょうか? 少年サッカーにおける(特に膝?)関節炎もそうしたモノです。 よほどの無理をさせれば、疲労骨折は常に起きる可能性があります。 通説ですが、バレーボールやバスケットボールをやっていた子は背が良く伸びるし、柔道などをやればガッシリとした体格が出来上がります。 (成長期における)その負荷が、常識の範囲内であれば体格に影響が出るにとどまるでしょうし、過負荷になれば「壊れ」ます。 「肩が壊れた」「肘が壊れた」という風にです。 残念なことに、獣医療の方で、こうした概念はあまり紹介されていません。 ただ、世間でいう「股関節形成不全」の中に、こうした異常が含まれてしまっている可能性を否定することが出来ないでいます。 本来、股関節形成不全は、ロクに運動もさせないで庭先に鎖で繋留していたイヌさんでも、成長に伴って勝手に股関節がおかしくなり外れてしまう病気です。 ここに、競技用シェパードやディスクドック(B.コリーが多い?)、アジリティーを実際にやっている犬たちを混ぜていくと、「遺伝」という話がグラついてしまいます。 「職業病」と呼んだ方が正しい股関節の異常が、確かに存在するように思います。
皮膚病を予防することがありますし、衛生的にも感じるが滑りやすいフローリングの床は、この種の関節の異常の出やすい犬種(椎間板疾患も同様)には非常に不向きなモノであるといえます。早い時期から筋肉を付けすぎて体格の小さくなってしまったディスクドックには、むしろそうした競技は(遊技程度でも)キツイ労働になるかもしれません(やる気はあっても体がついて来ん)。 大型犬は、適正な体格以上に大きくしてしまう事でも、CHD等の関節障害が発生しやすくなる事が報告されています。 まず、人並みの体格のイヌさんに、その年齢にあった成長速度で子イヌを育て上げる事こそ、飼い主さんの義務であるといえます。 酷使させないように、大きすぎず小さすぎず、、食べさせすぎず、遊ばせすぎず、上手に体を作っていって下さい。 このアタリで意外に失敗しているケースがあるのですが・・・ 飼い主さんは、「その子」をどんなイヌにしたくてトレーニングしてるんでしょうか? |