【大日岳 平成17年8月16日撮影】

山行記録 - 平倉山荘 -

2005年08月15日(月)〜16日(火)

【飯豊連峰/大日杉〜切合せ小屋(泊)〜飯豊本山/往復】

【メンバー】 単独

【歩行距離】 約21km (カシミール3Dより)

【所要時間】 1日半

【山】 地蔵岳(1538.9m)・飯豊山(2105.1m)

【地図:1/2.5万】 岩倉・大日岳・飯豊山

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【山行メモ】

ゴロゴロゴロ  ダダダダーッ
それはちょうど目洗い清水でボ水を汲んでいるときであった。
蔵王GZK局に雷の様子を聞くと、
「北俣岳に落雷。登山者が小屋に逃げ込んできた。
佐藤さんも気をつけて。」

そう言われても雷に対してどう気を付ければいいのだろう。

今年は泊りがけで山に行けるチャンスは、このお盆休みだけのようだ。
15日の朝一の仕事を終え、大日杉に向かう。
南陽市の職場から登山口までは、車で約1時間。

途中、モービルからGZK局と無線が繋がる。
「佐藤さん、今日やるの?」
「久しぶりにとれた休みなので、1泊で・・・。」

天気は雨。登山口に8時15分に到着。
切合せ小屋までは初めてのルートなので気分的に重い。
単独女性登山者が身支度を整え登ってゆく。
雨具を着て登山届をポストに入れる。
念のため、大日杉小屋の管理人に登山計画を伝え
8時40分に登り始める。

雨の中の大日杉小屋

ザンゲ坂を登って行くと、傘をさした男性が先行している。
下山してくる仲間を迎えに登っているとの事。
145Mhzの交信を傍受していた。

9時25分、長之助清水。
ここで、登山口で見かけた単独女性登山者に追いつく。
彼女も切合せ小屋を目的にしているが、この天気に迷っているとの事。
自分も、とりあえずは地蔵岳まで行き判断することを話す。

長之助清水は美味い。
今日のような、大雨でもその水量に変化はない。

長之助清水の看板

9時40分、御田を通過。
10時55分、滝切合せを通過。
11時21分に地蔵岳到着。

「GZKこちらはGMO。ただ今、地蔵岳。結構、辛いッス。」
「若い衆がなに言ってんだ。」の檄。
実際、雨具を着ての行動は、汗と雨で
体はぐちゃぐちゃ。流れ出る汗の量は、半端でない。

月峰山岳隊の先輩・鏡明さんのアドバイスどおりに
熱中症対策に梅干を口に入れる。
「2〜3時間おきに梅干を一つ。ただし市販製品は不可。」
スポーツドリンクの水分補給も、いつも以上に多くとる。

12時03分、目洗い清水到着。
3週間前に下見をしている水場に直行。
900mlのペットボトル2本を水で満たしていると
ゴロゴロゴロ ダダダダーッ。
北俣岳方面で雷鳴がとどろく。

登行意欲がガクッと弱まる。
御坪から先は未知のルート、雷を回避できる地形になっているのか?
雷鳴は十数分間、飯豊の山波にとどろき続ける。

積乱雲による雷は、その雲の動きで予測可能であるが、
今日の雷は、寒気の流入が原因。
予測は難しく、前触れもなく突然ドスッンとくると言う。

登山道を少し戻り、窪地で雷の収まるのを待つ。
ここで引き返すほうが、安全登山か。
不安な気持ちで30分近く停滞。濡れた体が寒くなる。

そこに先ほどの単独女性登山者がやってきた。
結局ここまで登ってきたとの事。
雷発生で引き返そうか悩んでいると話すと
「ここまで来たら、行きましょうよ。」
その一言で先に進む。

13時35分、登山道に岳樺が現れる。
先日の下見のときはここで折り返した。
蔵王GZK局に現在地を伝え、この後のルート情報をいただく。

まもなく御坪を通過。
13時43分、御沢分れを通過。
この時期の雪渓コースは
雪渓がボロボロに壊れていて通過不可との事。

背丈の高い岳樺の林を登る。
尾根道は南側が切れ落ちている。
花崗岩と風雪に耐えた岳樺の間を登ってゆく。

道は、種蒔山をトラバースする。
笹薮を刈り払われた道は、歩きにくい。
御沢の源頭を横切る。
水量の多い源頭で汗を流すと良いと、鏡明さんが言っていた。
しかし、この雨といつ来るかわからない雷の状況下では
そんな余裕はない。小屋を目指して先を進む。

切合せ小屋の水源となる沢源頭には
雪渓が残っており、登山道を5mほどの長さで覆っている。
ピッケルがないので、通過が不安だ。
雪渓上部の踏み跡を辿り通過する。

御坪から切合せ小屋までは、約1時間。
2時30分前に到着する。

「切合せ小屋は初めてです。」と管理人に伝えると
小屋前水場の利用法や、炊飯時の注意を受ける。
団体ツアー客のほかに10名ほどの利用者。
ほとんどの登山者が、昨夜から連泊のようである。
本日の悪天候のため、本山往復のみの行動との事。

ツアーを案内しているプロのガイドの方や
仙台から来たご夫婦、そして東京の単独登山者。
小屋での話題は、山の話で盛り上がる。
ガイドの方とは、アマ無でファーストQSOをする。
ガイドMZL局さん、今後ともよろしくです。

本山EHJ局と蔵王GZK局の交信をワッチ。
明日は午前6時頃から晴れるだろうとのこと。
梅花皮小屋では、二日前に収容された負傷者が
天候の回復を待って、ヘリのピックアップに備えている。

8月16日

午前3時に起床。
ほかの登山者はまだ寝静まっている。
4時行動開始を予定に準備をする。

切合せ小屋から本山までは、初めてのルート。
外は濃霧。日の出前のこの天候では
砂礫地での道迷いが心配である。
朝食を小屋で済ませ、出発を遅らせる。

4時55分、切合せ小屋出発。
荷物をデポし、軽い荷で本山を目指す。
次第にあたりは明るくなり、霧も晴れてゆく。

5時15分、草履塚通過。
行く手本山部分は、まだ雲が覆ているが
足元には、雲海が広がる。

5時25分、姥権現通過。
赤い上着を着た、権現様だ。
御秘所の黄色い看板が目立つ。
本山からの下山者が2名、御秘所の岩稜で休んでいるようだ。
鎖場を慎重に登ってゆく。

姥権現 大日岳の稜線 御秘所の岩稜

本山に続く広い稜線を登ってゆくと
まもなく一の王子に着く。

東から登る朝日を浴びながらの稜線歩きは最高だ。
西側に目をやると、ブロッケン現象が現れている。
昨日、苦労して登ってきた自分の姿に後光が差しているようだ。
古の飯豊詣の山旅を味わいながら歩く。

一の王子 本山の雲の晴れる ブロッケン現象

6時05分、本山小屋到着。
本山EHJ局さんに挨拶をした後、神社に手を合わす。
神主さんの話によると、
昨日の北俣岳の雷は予告もなくドスッンと落ちたという。

本山小屋が見える 本山小屋 EHJ局さんに挨拶 山頂の鐘

6時20分、飯豊本山到着。青空が広がる。
大日岳や烏帽子岳、そしてダイグラ尾根の稜線に見惚れる。
6時30分、本山出発。

本山 カメラを持って「パチッ」 本山から大日岳を

一の王子を下ったところで
昨日の単独女性登山者が登ってきた。
「お陰で、山頂からのすばらしい景色が見れました。」
目洗い清水での一言にお礼を言い
お互いに山行の無事を祈って分かれる。

7時30分、草履塚通過。
山形県側は、雲が厚くなる。
稜線を境に、新潟県側の景色しか見えなくなる。

タカネマツムシソウ 「御秘所」 山形県側は雲

7時50分〜8時00分切合せ小屋。
小屋の登山者はほとんど出発した後だ。
デポした荷物をザックに詰め
大日杉まで、水の補給をすることのないように
ペットボトルすべて(2.5リットル)に水を汲む。

種蒔き分れ 登山道上の残雪 上部を巻く 岳樺の尾根道

8時35分、御沢分れ通過。
8時40分、御坪通過。
昨日は写真を撮る余裕などなかった。
シャッターを切りながら下る。

御沢分れ 御坪の石の祠

9時10分、目洗い清水通過。
天場付近に単独登山者が休んでいた。
水場を探せなかったと言う。
水筒は空との事。
その後の行動を考えると、水補給は必須。
この時期、水分補給のトラブルは重大な結果を招く。
水場への降り口を案内する。

10時00分〜30分、地蔵岳。
本山の眺望も、地形的にここが最後となる。
ゆっくり腰をおろし食事をとる。
マーガリン入りロールパン。トマト。チーズ。
バランスの採れた食事計画が、安全登山に繋がる。

雲に覆われた本山周辺は
結局、姿を見せてくれなかった。

11時07分、御田の杉通過(1000m)
11時10分、長之助清水(940m)
残りわずかのボトルに、水を補充する。
休んでいた単独登山者からカッパえびせんをご馳走になる。
塩味が美味しい。

ザンゲ坂の鎖場を慎重に降っていると
後ろからトビ茸採りの方が降りてきた。

「収穫はどうでした?」「だめだ。」とのこと。
地下足袋を履いた足の運びが、とてもスムーズである。
家族で来ているようで
「もう降ってきたの。早いねぇー」とお孫さん。
「じーちゃんは、山の熊だ。」

大日杉まで、後ろについて一緒に降る。
11時52分、大日杉到着。

トビ茸採りの「山の熊さん」

小屋前の川で、汗を拭き衣類を洗う。
帰りモービルで中津川を移動時
蔵王GZK局から11時46分発生の地震(宮城震度6弱)の事を聞く。
夢中になって降っていたせいか、全く揺れには気がつかなかった。

帰宅後、月峰山岳隊・鏡明先輩に無事帰宅を伝える。
「雨男+地震付きとくれば、最強だなぁ。」
昨年に続き、またしてもレッテルを貼られたようだ。
次回は晴れ男・鏡明さんの力をお借りし
快適な稜線漫歩を楽しみたい。

大雨の初日、そしてブロッケン現象の二日目。
本山からの山並み。
とても楽しく、思い出に残る飯豊山行であった。

 


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