山行記録

2003年10月12日(日)〜13日(月・体育の日)
【朝日連峰/天狗角力取山(往復)】


雨量観測所から望む『障子ヶ岳』

【メンバー】 2名

【歩行距離】 約km(カシミール3Dより)

【所要時間】 時間分

【通過時間】


【山行メモ】

久しぶりの、『山の師匠・K/A氏』との山行きである。夏の前から、何度となく山行計画を立てていたのですが、『平成15年雨男』の私との予定では、悪天候により計画まで流れていたのだ。やっとのこと、晴天が期待できそうなこの体育の日の連休に、飯豊山行を計画した。

が、しかし!今年の週間天気予報は当たらない。出発日に近づくにつれ、週間予報に雲と雨マークがつき始めたのだ。急遽、行き先を朝日連峰の天狗小屋へと変更することになった。

今年の私の山行きは、「雨にも負けず、風にも負けず、ただひたすら・・・。」といった感じだった。しかし、今回は、師匠と共に『のんびり山行』と決め込み、小屋での生活術習得(と言っても、師匠のご馳走にありつくのが目的なのですが)を掲げて、いざ出発となる。

12日午前4時20分。まだ、暗いうちに師匠宅に伺うと、奥さんが暖かく迎えてくれた。『やっぱり、雨男、額に雨の文字が』の会話に、一同、声を潜めて笑う。

車は一路、大井沢・原を目指し山形自動車道をひた走る。途中、SAで大キジを済ませ、午前5:45に登山口到着。駐車スペースにはすでに、19台の車が。すべて登山者のものだろう。紅葉期の連休となれば、登山者で小屋の混雑は覚悟。この車の数を見れば、その覚悟を一段と強めねばならないようだ。

午前6:00時。先着のグループが身支度を整えている間に、我ら二人は、先を急ぐ。とはいえ、今日は天狗小屋までのショートコースであるから、そう急ぐ事もない。久しぶりの師匠との山歩きに、談笑をしながら歩を進める。

晴男の『師匠』と雨男の『私』の気圧勢力が拮抗しているのか、歩き始めるころには、雨も上がり雨合羽なしで歩き始める。今晩の食材を入れたザックは、久しぶりの重荷であるが気にはならない。

最初の一本をつけ登り始めると、まもなく下山してくる単独の男性の方と出会う。大阪から夜行列車で来て、三面山から道陸神峰を越え、3日目にここまで下ってきたとの事である。飯豊の大石ダムか杁差山へのコースも歩いているとかで、師匠いわく『ツワモノ』である。歩き慣れているその姿に、憧れを感じる。

 


最初の一本で上着を脱ぐ師匠

その後も天候は、いたって穏やかで、晴男『師匠』に感謝である。竜ヶ池付近を通過する。紅葉の具合は、ブナの黄色がとても綺麗で、あたり一面が、黄色味を帯びている。休憩をしていると女性グループが追いついてきた。皆さん元気である。

10:13分に、雨量観測ロボットに到着。大朝日岳方面の稜線、エズラ峰から以東岳、そしてピラミダルな山容の障子ヶ岳も全て見渡せる。昨年秋に同じコースを登ったときは、霧の中だったため、この景色に会うのは始めてである。観測ロボット前の広場には、他のグループも休憩をとり、賑やかである。他のグループは、日帰り山行のようで、障子ヶ岳を回って下るようである。ここまでくれば、天狗小屋まではもうすぐである。


あー、うまい。

雨量観測所から『障子ヶ岳』を望む

1397mの栗畑は巻き道を通って小屋を目指す。天気は、高曇りであるが、このころから雨粒が落ちてきた。晴男・師匠の気圧勢力もここまでか!小屋を目指して早足になる。


天狗角力取山(中央に土俵がある)

天狗角力取山まで来ると、道標を手直ししている小屋の管理人さんと会う。小屋前に干してある毛布を取り込むことを伝え、小屋に滑り込む。結局、雨合羽を着るほどの雨でもなく、午前11:00に小屋に到着する。

 

師匠は、小屋でのんびりすることを決めていた。私は、天候次第では二ッ石山手前までエズラ峰見物にでも行こうかと予定していた。時間は早いが、雨が落ちているので、とりあえず師匠とともに、小屋に上がる。

昼前から、小屋に泊まる目的で来る人は私たちだけのようで、小屋の中は空いている。管理人さんも小屋に戻ってきた。荷物を解き、昼食の準備に取り掛かる、早速師匠のザックからは、ペットボトルに詰め替えられた『竹鶴・17年物』が出てきた。無事の小屋到着を祝い、ストレートでグビッと乾杯。これをきっかけに、私の午後の予定は小屋で『のんびりモード』に切り替わった。2階に上ってきた管理人さんにも、一杯勧めると、あとは3人で車座になりながら、昼ご飯の準備を後回しに、宴会へと突入したのである。

管理人さんを囲んでの、山の話はとても楽しい。以前、師匠が、この小屋の2代目の管理人さんに、熱中症から助けてもらった話や、身の丈180p以上の熊の話、そして、岩魚や舞茸の話などなど、尽きることなく時間が過ぎた。管理人さん曰く、この小屋の周辺には山の恵みが豊富で、稜線上の小屋番をするより、ずっとここのほうが楽しいと言う。また、登山口から近いこの小屋は、「みんな飲むために登って来るんだよ。」と言っていた事に頷ける。

そうしているうちに、登山口で一緒になったグループの方たちが、小屋に到着した。時間は午後2時を過ぎていた。山形市内の方たちであった。私たちは、宴会に一区切りをつけ遅い昼食を食べる。食後、まもなく夕食の準備に取り掛かる。師匠持参の17年物も底を尽き、管理人さんからおすそ分けをいただく。私が担ぎ上げた泡2缶は、水場に冷やされたままであるが、いまさら喉を潤す状態ではない。

夕食の晩餐ように担ぎ上げた食材BOXの中には、いろんなものが入っている。食材BOXは師匠の得意技である。アルファ米、鮭入り無洗米、鰯の甘露煮、お茶漬け、キムチ500g、粉末のプリンの素などなど。プリンは、初めて飯豊に連れて行ってもらったときからの定番デザートである。500gキムチは、師匠曰く、「これさえあれば、真夏の単独行3日はおかずなしでOK。」との事。あとで食するが、なんとも食欲が沸く。

さて、今回の目的は『小屋での生活術・炊飯の習得』である。それでは、炊飯に取り掛かる。今回は、乾燥鮭フレークが一緒になった無洗米である。1合パックが2個入れの商品。出来上がりが楽しみだ。

選択に迷ったというビリー缶(コフェル)の中缶を利用して、師匠の炊飯開始。『米:水は1:1.2』。『吹きこぼれが始まるまでは強火で』。その後、火力を微力に調整し温度を維持する。そこで、師匠がトイレに立つ。その後はこのまま弱火で20分ほど炊き込み、タイミングをみて『さし水』、その後ビリー缶をひっくり返して『蒸らし』という手順になる。

がしかし、トイレの帰りに知り合いと話し込んでしまっている師匠。となると、この後はわたしの仕事。うぅー、『竹鶴17年もの』が効いていいるのか、このとき『さし水』のことなど、すっかり忘れていた。師匠の戻るのを待ちながらも、お焦げを作らぬようビリー缶を火からおろすタイミングを探る。なんとなく、焦げ出した匂いが湯気に混じり始める。明らかに湯気が煙に変わり始めている。香ばしい匂いは焦げ臭さに変わっている。これはいかんとばかりにコンロの火を止め、ビリー缶をひっくり返し『蒸らし』に入る。

まもなく、師匠が戻り食事の始まりとなる。炊飯のその後を任され、私が仕上げたご飯の登場である。ビリー缶のふたを開ける。おぉ、なんともおいしそーである。むっむぅぅ?!?!・・・。「焦げが多いではないか。芯が硬いではないか。」このとき、『さし水』のことを思い出す。『クレーターを箸でグリグリ、さし水!』これが抜けていた。またしても、完璧炊飯とはいかなかった。『ふっくら炊飯』への道は遠いようだ。

秋の日暮れは早い。5時を過ぎると小屋の中は暗くなり始める。シュラフを広げる。夏用のものにカバーをかける。6時を過ぎるころには、ほとんどの登山者が眠りについた。結局、この日の小屋利用者は10名ほどで、前夜の50数名利用に比べ、ぐっと少なかった。3連休の最後の夜は、穴場かもしれない。

夜半は意外に暑かった。シュラフから抜け出すのも面倒なのでそのまま寝続けた。午前3時ごろであろうか、ゴーゴーという風の音に目を覚ます。強風である。小屋が飛ばされるのではと思うほどである。この小屋は、吹き上げた風がちょうど集まるあたりに建っている。しばらくすると、強風に雨が混じり始めたようだ。ゴーゴー、ザーザーである。今日の行動予定は、障子ヶ岳経由で登山口までの予定であるが、最短コースで来た道を折り返したほうが良さそうだなぁと、一人シュラフの中で考えているうちに、外が明るくなってきた。

起床後、行動については師匠も同じ考えである。昨日の天気は、『晴男・師匠』に助けられたが、今日は『雨男』の出番のようだ。師匠の雨具は、今回初使用のICI新モデル。デザイン、機能ともに抜群のようである。それに引き換え、私のものは10年来のICI定番物。ゴアと表地がいたるところで剥離している。ゴアの寿命をはるかに過ぎている。ただ合羽を着ているというだけで、防風効果のみで雨はすぐに染み込んでしまう。

師匠から『雨の日の身支度は、出発前に時間をかけてしっかりと!』のアドバイス。管理人さんのYDさんにお礼を伝え、午前8:45に天狗小屋出発。登山口までは下りだけであるから気分的には楽である。夜明け前からの雨で、登山道はかなり濡れているようだ。

竜ヶ岳付近まではそうでもなかったが、その後の樹林帯に入ると登山道が滑り始めてきた。先行する私は、100点満点(笑)となるスリップ転倒を2回も繰り返す。それに比べ師匠は、スリップこそあれど転倒するほどではなく、歩き方の違いが出てしまう。足の置く位置や体重の乗せ方など、微妙な違いが歩行技術の違いとなって現れるのだろう。まだまだ習得することが多い。

そうこうしている内に、対面する尾根に杉の植林地が見えてきた。師匠は、杉の植林を見ると、登山口に近づいたと思うそうだ。登山道のない山を歩いている時など、杉の植林地をたどって下ると山道に出るそうだ。

無事に登山口に到着する。駐車している車はほとんどなく、多くの車は昨日のうちに帰ったようだ。身支度を解いていると、管理人のYDさんが早くも下ってきた。言葉を交わし、それぞれに車に乗り込み帰路につく。

昼食は、師匠宅で美味しいマイタケご飯をご馳走になる。「来年は、飯豊に通うぞ!」と師匠と盛り上がり今回の楽しい山行を終える。


[2003山行記録]