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前回少しだけ触れた「イノセンス」
押井守の最新作で彼の名前を意識するようになったのは
「うる星やつらビューティフル・ドリーマー」から
前作「攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL」は
原作者士郎正宗のファンだったこともあり観たのだが
今回は作品評の前に押井監督がパンフに寄せた一文から
ちょこっと声優さんについて書いてみよう

実際今アニメーションの大作になると割りと普通の俳優さんとか女優さんが声を吹き替えることはめずらいことじゃないけれど、洋画の吹き替えなんかはフィックスの声優さんがいてよく知られているところではチャールトン・ヘストンは納谷吾郎さん(ルパン3世の銭形警部役でおなじみ)とかクリント・イーストウッドは山田康雄さん(故人)とか決まっているのが相場だった。もちろんこれは各TV局の事情もあって必ずしも確定ではなかったようだが先に上げた2人はほぼ既定の路線だった。映画秘宝という私がたまにネタを探すときに読む雑誌なんかでは漫画家とり・みき氏なんかがこの話だけのネタを持っていて広川太一郎さん(ロジャー・ムーアとトニー・カーティスが持ち役。とくにカーティスはコメディが多く彼の駄洒落アドリブは凄い。最近アニメでもそのネタを使っていて流石と思わせてくれる。またシリアスなハンサム役も得意)のインタビューなどを嬉々としてしている。これはよく解る話で世代的におたく第一世代(オタキング岡田斗司夫氏から前後5年ぐらいの世代)周辺ならよく解る話である。今のアイドル声優とは違った見方でその演技を堪能していた。特にあのカルトブラックジョークコメディ番組「モンティ・パイソン」の吹き替えは上記の3人に加え青野武(まるちゃんの2代目おじいちゃん)とか羽佐間道夫氏(特に持ち役は思いつかないが洋画のB級作品の主役や主人公のサポート役には欠かせない人。アニメではマクロスのグローバル艦長が有名)とか芸達者がそろっていた。もちろん俳優としての人たちが吹き替えで成功した例もある。例えば「刑事スタスキー&ハッチ」のスタスキーの高岡健二、ハッチの下条アトムなどはその好例で彼ら以外の人があてても違和感ありあり(笑)ちなみに下条さんなんかは声優としても一時期エディ・マーフイのフィックスをしていてこれがまたはまっていた。声質が似ているのかリズム感が似ているのか「48時間」のニック・ノルティを吹き替えた石田太郎さんとともにベストなアテレコだった。石田太郎さんも最近は顔出しも増えたけど小池朝雄さん(ジーン・ハックマンのフィックスは未だに語り草だと思う)の正当な後継ぎとして認知された感があるし一概に高名な俳優を使うことをひていするわけじゃないけれど最近のジブリ作品やディズニーの日本語吹き替えなんかは高名な俳優さんを使う傾向がある。ここで提案したいのはせめて舞台経験がある人を使った方がイイと思う。これには理由があって例えば森繁久弥さんは黎明期の芸能界でラジオドラマなども多数経験しておられ「もののけ姫」でもその声をふるっておられた。森繁さんは舞台でも経験のある方で流石に声の出し方はうまい。だけど経験の浅い人なんかはすこし声で演技することに馴れていなくてそこらへんが感じ取れてしまうのだ。同作品の中では西村雅彦さんは「東京サンシャインボーイズ」という劇団出身だしモロ神役美輪さんは舞台の経験はもちろんよくとおる声をもっていらしゃる。声優というお仕事はいまやオタク相手のアイドル声優産業と化した一面も確かにはあるがそれだけではない経験が必要とされる高度な演技が必要なのだ。それは今公開中の「イノセンス」とTV放映中の「攻殻機動隊スタンドアローンコンプレックス」を観れば解るだろう。だからジブリ作品でも私は「ナウシカ」「ラピュタ」押す。もちろんうまい人なら俳優さんもあり。小池さんや森繁さんの例を出すまでも無く「イノセンス」でも出ている竹中直人さんは押井さんとは2作目で前作「パトレイバー2」でも不気味な印象を与えた公安の刑事を演じていたし。要は声がその役とフィックスしているかとそれだけの演技を声だけで観客に伝えることが出来るかどうかである。

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