MOVIEtonbori堂

聴いてはいけない事を聴いてしまった女。

ザ・インタープリター

監督 シドニー・ポラック
キャスト ニコール・キッドマン/ショーン・ペン/

アカデミー賞男優、女優がそろったある意味「HEAT」のような2大巨頭ぶつかる!
という凄い映画である。
でこの映画はやはり9.11以後の影響があるとまざまざと思わせる。
そのためポラック監督もここで撮影することにこだわりガリ事務総長にかけあって国連本部での撮影にこだわったのだろう。
でなければセットで撮影を選んでいたはず。
そうまでして国連での撮影にこだわり題材も非常に微妙な問題を取り上げたのだがいかんせんちょっとロマンチックにふりすぎたきらいがあるように見受けられる。
ただそれでも老練な映画人としてキチンと作り上げたことには賞賛したい。

個人的にはスナイプスの『アート・オブ・ウォー』みたいな感じもいいじゃんとか思うがやはり社会派監督に演技派、しかもショーン・ペンは活動家でもある。やはりそこではっちゃけられなかったのかな。
多分イーストウッドなら程よく枯れた雰囲気を出しながらもこういうお話だと定石を踏まえてくれんだろうけど(『シークレット・サービス』のように・・・ってあればウォルフガング・ペーターセンだっけ(^^;)

国連通訳のシルヴィア・ブルーム(ニコール・キッドマン)が偶然聞いた国内で反政府運動を弾圧、虐殺していると目されるマトボ共和国の大統領ズワーニ暗殺計画。それを阻止するために派遣された妻を亡くしたばかりのシークレット・サーヴィスの捜査官トビン・ケラー(ショーン・ペン)。実はシルヴィアは国籍こそアメリカではあるがマトボの育ちで隠していた過去があった。そして自らの疑惑を払拭するためにやってくるズワーニ。タイムリミットが迫る。果たして彼女は何を隠しているのか?真実は?というサスペンススリラーであるが、先に述べたように9.11の影響下でテロに対しては強い姿勢で臨むというのが今のアメリカ。だがこの映画に出てくるシルヴィアは国連の理念に共鳴に戦いは何も産みださないという信念を持つ。だがマトボで育った彼女にはそこに至る経緯があった。そして事件を追い暗殺を阻止する任務を負ったケラーは妻を失い深い喪失感に苛まれておりそれを捜査にのめりこむ事で紛らわせようとしている男。
着眼点もいいし言いたいことも良く解る。安易に2人が恋に落ちると言う描写も無いところも割と好きだ。イギリスあたりのポリティカルサスペンスのようであるが少々ロマンティックに纏めすぎている気がする。
NYが舞台の国際テロを扱った「マーシャル・ロー」のほうが少なくともおいらにとっては現実を突きつけていた気がするがアレは9.11直前の作品で今なら多分お蔵入りしちゃうかもしんない。
だからこそ「クライシス・オブ・アメリカ」を観ておきたかったが見逃したことが悔やまれる。
(どちらもデンゼル・ワシントンの主演である)
ロマンチックに纏めすぎではあるが今だからこそ観てそこから思索するタイプの映画ではないだろうか。
但しその指し示すものはあまりにも深く混沌としていることは間違いなく映画自体は良く纏まっていてもそこから踏み出すのは非常に難しかったんだろうなと感じさせられた。

この記事は本家ブログweb-tonbori堂ブログよりの転載加筆分です。

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