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真下ぁ!メリークリスマスだ!バカヤロウ!

交渉人真下正義

プロデュース 亀山千広
監督 本広克行
脚本 十川誠志
キャスト ユースケ・サンタマリア/寺島進/小泉孝太郎/高杉亘/松重豊
      東根作寿英/ムロツヨシ/石井正則/
      西村雅彦/八千草薫/金田龍之介/国村準

 とりあえず踊るレジェンドSP木島丈一郎放映とDVD発売間近ってことでタイムリー?かも(笑)踊るスピンオフ第1弾「交渉人真下正義」。
いろいろ思ったこともあるのだが「箱庭」(byエキブロお友達のacoyoさんを東京という大きな砂場に移してみました。というところかと。 あと元ネタを浪費しすぎです。勿体無いオバケがでるぞ(笑) それと映画のセリフで「ダイヤは生もの」というセリフがやっぱり西宮の脱線事故の後だけに重い。 だけどそれはTTRの指令室の人々や線引き屋というプロを描いているという点で救われている。 役者陣に関しては寺島進を入れたのは正解でした。 木島というキャラはこの映画の大きな収穫。その後スピンオフが放送されたがその面白さは彼を主役の映画を一本観たい気にさせてくれる。そしていつものSATは今回ほんとのSAT(って今までのはどんなんだったんだ?)らしい働きだったし、松重豊扮する爆弾処理班班長(またこれがスピンオフ木島編でいい味だしているのがポイント高い)をまた出すあたりTVのファン向けサービスだろうがなんだろうがこれも正解(笑)
ようは今まで「パトレイバー」だったんすけど今回は「劇場版」やってみましたという感じ。 本広監督はインタビューではそれっぽっちも言ってないし脚本の十川誠志がアニメ畑で「逮捕しちゃうぞTHEMOVIE」の脚本家であってもそれを匂わす発言は全く無かったがそれでもやっぱりこれは「劇場版」いや「MOVIE」だったのだ。 映像(ビジュアル)には特に問題ない。物語の一方の主役とも言うべきクモという特装列車がすこしロボットっぽいところも観る人によるだろうし。(おいらは全然OKであるが)ただネタの浪費とあらかさまなネタの使い方がひっかかる。 特に「パトレイバー」の劇場版第1作のおおまかな仕掛けと劇場版第2作のシーンを持ってきていわば実写版パトレイバーを創出しようとしたのはほぼ間違いない。 亀山プロデューサーの提案とは言え「地下鉄」を舞台にしたのは地上で事を起こすよりは嘘が付きやすい。その点は間違っていないと思うがタイトルに「交渉人」なのに目立った「交渉」をしていない。つか交渉術を駆使し相手のウラをかいているように見えない。 パンフレットのインタビューにある本広監督の言によるとジョニー・トー(これは傑作web-tonbori堂ブログでもエントリを上げているのでのいちどご覧くださいませ)「暗戦|デッドエンド」のような会話によるサスペンスを最初は真下と関係なく撮りたかった言ってたけど紆余曲折の果てに真下と合体したのだとか、でもその当初のプランにあった「暗戦」のように相手の心理や情報はあまり読みきれていないように見え、「勘」で判断している。いや交渉しながら相手から言質をあまり引き出していない。それも交渉なのかもしれないが虚々実々の駆け引きという風には見えない。 交渉人というタイトルにこだわったならもう少しその辺を突っ込んで欲しいのだがその分画の方はパトレイバーの画を現実に表すことに傾注している。 いわくカラス、いわく画像の乱れるモニター、忘れられた地下の路線、地下鉄駅構内を走る部隊(パトレイバーは自衛隊だがここではSAT)作動不能に陥るシステム。警察の中でも事件捜査は対症療法。既に起こってしまった状況に対し半ば手遅れかもしれないがそれぞれの職分を全うし事にあたる。というとこまでなぞってみせる。 そこまでせんでもと正直思ったがそれだけにパトレイバーを知る人からの突込みよりもそのテイストを斬新なものと捉える層が多いと見越しての事なのか? 余談ながら「サブウェイパニック」という映画も意識していると思うのだがアレを下敷きにすれば虚々実々の駆け引きが数倍引き出せたと思う。それに関連して「サブウェイパニック」の犯人達の共通の目的は「金」だったのだが目的をお金だけにするというのは日本の犯罪サスペンス映画ではあまり見られないなと。理由無き殺人事件や親子の情愛、痴情のもつれとかそういうのが多くないですか?ハリウッドは金やビジネスがよく絡んできて手際の良いプロが描かれることが多いんだけれど。ヤクザ映画だと「金」が勢力拡大、シノギの取り合いで金が絡むが。 まあそれを差し置いても登場人物は今回買える人が登場している。 警視庁の木島(寺島進)まんまべらんめえのこの人が一番おいしいとこを持っていってる。 線引き屋の熊沢(金田龍之介)もいいけれどやはり地上班を率いて飛び回る木島が客観的に見て美味しい役回り。 あと爆弾処理班班長(松重豊)「ジャガーノート」ネタをかましたなら「ファロンはチャンピオン〜」のオマージュネタを入れていたならそこだけで絶賛した、マジで、でも残念ながらそれは無かった。 ほんとに「ジャガーノート」を観たのか?スタッフは!と小一時間問い詰めたいがそこは置いておく。(『逃亡者木島丈一郎』でそれは取り返せた) 全般的に言えば「踊る」で「パトレイバー劇場版」をやってみました。という感じがする。 全く知らない人(多分大多数の観客はそうだろう)には楽しめるかもしれない。 だが元ネタを知り尽くしていると欲求不満が溜まる事は否めない。 もっともネタとしてそれを楽しむという方法もあるのだが(おいらは途中でそれにシフトした) それとこれが最も大きな ネタバレだが 【犯人像についてよく解らないと仰る方が多いだろうがそこまで「パトレイバー」に似せんでもということだろうか。】(後日シナリオガイドブックを立ち読みしたところ脚本の十川さんそれは結構気にしていたようでアニメ畑出身だけに犯人は『ジャッカルの日』(エドワード・フォックスの)をイメージしているとのこと。けれど姿を見せないという共通項と既に死亡しているということではあまり説得力なしな気がする)ちなみに次の「容疑者室井慎次」はネタがグリシャム系+半落ちが入っている模様。 まあこれでブログ界隈から「パトレイバー」が盛り上がって(劇場版)再評価されるのは面白いかもしれない。理由はどうあれ「パトレイバー劇場版」の2つの作品は傑作だからだ。 これがたくさんの人の目に触れるのはいいことだと思う。 反面変な祭りにはなってほしくは無いけれど(^^;
それとこれだけはどうしても。 「深夜プラス1」はそんな捨てネタに使っていいような小説じゃないんで!
※ブログのエントリを加筆修正しております。

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