MOVIEtonbori堂

たった一つの命をすてて生まれ変わった不死身の身体
鉄の悪魔を叩いて砕く キャシャーンがやらねばだれがやる

CASSHERN

監督・撮影監督・編集・脚本/紀里谷和明
脚本/管正太郎 佐藤大
バトルシーンコンテ/樋口真嗣
CAST
東 鉄也・キャシャーン/伊勢谷友介 上月ルナ/麻生久美子
東博士/寺尾 聡 東ミドリ/樋口可南子 上月博士/小日向文世
アクボーン/宮迫博之 サグレー/佐田真由美 バラシン/要 潤
上条中佐/西島秀俊 内藤薫/及川光博 坂本/寺島 進
上条将軍/大滝秀治 老医師/三橋達也(特別出演)
ブライキング・ボス/唐沢寿明

近年ここまで叩かれた邦画ってのはなかったんじゃなかろうか?そんだけ観た人間に度肝を抜かせたのは間違いない(苦笑)もちろん私もその一人。最初はなんじゃぁぁぁぁ・・・・ありゃ?って言う感じであった。ココからはネタバレになるのでご了承を。OPはかなり好印象。アニメ原作の納谷さんのナレーションの導入部。実際ココでこの物語は違った世界の話ときっちり言われている。そこからパラレルワールドとしてのアジアの大国『大亜細亜連邦共和国』(このネーミングもかなり恣意的)とヨーロッパ連合(ってまんまEUやん!なネーミング)との長い戦いの末東ユーラシアを支配したというところから始まる。原作と同じように公害による汚染が広がったというのも○だがここからまるで悲劇にするような悲惨な展開がまっている。そしてCGによる画面がそれを乖離させるほどに絢爛豪華に流れ込む。そして常に流れるBGM。タメもなく延々と状況が流れいく。他で何度か書いたがeiga.comでのガース柳下氏の新作評が殆ど全てを物語っている。この作品はエディプス悲劇をキャシャーンの登場人物に演じさせた作品であると言えるが登場人物がセリフで語るのである。ここがまず第一に映画ファンから叩かれる要素だろう。監督もここは確信犯的にしているようだが語ることによってドラマが急激に薄っぺらになってしまう。そして2番目はブライのセリフが我々に諸に刺さるところだろう。このあたりはこれまた『しろはた』というサイトに書かれていたが人間の原罪について突いているのだ。私は幼少時にお寺(仏教、浄土宗)がしている幼稚園に通っていたため性善説をとる人だった。がいろんな経験を経て人は両面を持つという持論に至った。だからこそこのうようなキリスト教的原罪論というのもさほど意外ではないがこれを語られることにより「青臭い反戦論」とかいうのはあまりにも幼稚な言い合いだと思う。つまりスルーできないが故に「お前の母ちゃんでべそー」といった奴に「そういうやつのほうがでべそー」というのと同じである。もちろんこの作品にはそこまで何故にという気迫が込められているからこそ嫌悪する者も反論するものもむきになると思われる。そう考えると監督の目論見をある程度は達成されているのではなかろうか。映画的に観ると評価は低いがその喧嘩の売りっぷりは見事としか言いようがないし絶望しているがそれを認めてあがこうとしている姿勢も評価は出来る。画面的にはツメロボとの樋口コンテシーンは見応えあり。そして演技陣に関して演技は無いとは言うが及川ミッチーとブライ唐沢の対峙シーン。寺尾聡の静かなるファナティックな迫力。そして助演の大滝、小日向、宮迫の演技は評価できる。その存在感は私は感じられた。そしてこの原稿を書く前に入ってきたニュース「三橋達也氏死去」このキャシャーンが遺作となるわけだが短い時間ながら一番印象に残った。一緒に行ったオタク友人はエヴァとの類似点を指摘(彼は今もこきおろしている)したがそれも確かにあるがエヴァと違うのはシンジは自ら選択することを放棄したが鉄也は自ら選択したことが大きな違いだろう。その代償として最後のシーンも用意されているわけだが。それと当代一の歌姫で奥様の宇多田ヒカルにまんまテーマを歌わせる(いや自ら歌ったのか?)ところも恐れ入る。実際にもっとオブラートにくるんでも良かったはずなのにしなかったのだから。そこまで挑んでいるところはそら恐ろしい(笑)大作ではないし快作でもない、怪作?いや記憶に残る一作、名作とかフェイバリットとかは違うがすくなくとも記憶に残った映画になった。ただ前述の指摘どおり認めたくない者たちにとっては忘れ去りたい作品になるかもしれないだろう。まぁそういうのを『怪作』というらしいけどもそーゆうのでもないなぁ。恐るべき作品とでもしておこう(爆)

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