MOVIEtonbori堂

ヒトの未来は彼女と彼に委ねられた

アップルシード

プロデュース/曽利文彦
監督/荒牧伸志

CAST
デュナン/VOICE 小林 愛 モーション 三輪明日美 秋本つばさ
ヒトミ/松岡由貴 ブリアレオス/小杉十郎太
アテナ/小山茉美

私は原作ファンで前回リミテッドアニメの時にちょっとがっかりしたヒトだったんで今回はそれから言えば満足はしている。しかしフックしなかったのは事実。物語は核こそ使われなかったものの世界から始まる。非核大戦が終結し廃墟を彷徨うデュナンたちを襲う謎のサイボーグ。そこにあらわれた謎の一団がサイボーグ達を一蹴しデュナンを捕らえ巨大都市オリュンポスへと連れて行く。戦争はどこの国も勝利せずオリュンポスが世界を治めていた。そんなデュナンの前に現れたのはヒトミとかつての恋人ブリアレオスだった。彼は北アフリカ戦線で負った傷がもとで全身を義体化したサイボーグとなっていた。驚くデュナンに何故か多くを語ろうとはしないブリアレオス。翌日ヒトミにオリュンポスを案内されるデュナン。平和で幸せそうな光景を見て心の安らぎを感じる彼女だがヒトミからこの都市に住む人口の半分が遺伝子操作で創られたヒト、バイオロイドとしる。一抹の不安を感じるデュナン。そしてヒトミもバイオロイドと告げられる。立法院で巨大ネットワークからなるコンピューター「ガイア」と対話することにより意識を生み出すCPUとして働く7賢老(ヒト)と会いこの都市で政治を司っているのはバイオロイドと教えられる。深まる謎。そしてタルタロスドームに隠されたDタンクに収められたバイオロイドを滅ぼすウィルス。そして「APPLE SEED」という筋立てなのだが原作のエッセンスを取り出し解りやすく再構成しているとは言えるだろう。元々原作付きの作品の映画化は難しく特に設定をそのままにしても反発が起こるのは致しかたが無い。ロードオブザリングは成功している稀有な例と言えるだろうが多分一部のファンの間では「違う」というアンチがいるはずだ。しかしAPPLE SEEDはその深い内容と情報量から全てを映像化するのは難しい。そのためエッセンスを取り出した事は正しいだろう。だが二人のキャラクターがウェットぎみなのが原作のプロフェッショナルなところがフックしていた私に響かなかったのかもしれない。フルCGによる映像はなかなかのものであえてリアルに描かずアニメ顔に持ってきたのはうまいやり方だと思う。「ファイナルファンタジー」のようにリアルにしても所詮CGは嘘、虚構なのだからこれの方が入り込みやすい。「ファインディング・ニモ」とか「トイストーリー」とかはカートゥーンをCGで表現しているからあれだけの映像が作れるのだからコンテンツ力のある日本がそれを利用しない手はないだろう。アニメの現場にまた違った風を吹かすことも出来ると感じた。物語自体は解りやすく「イノセンス」よりは一般のあまりアニメを見ない人でもすんなり入り込めるかも。

Vol.36「レジェンドオブメキシコ」をもう一回観る    Vol.38「ロードオブザリング 王の帰還」を観る