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武士道とは?

ラスト・サムライ

監督/エドワード・ズウィック
CAST
ネイサン・オールグレン/トム・クルーズ 勝元/渡辺謙
氏尾/真田広之 たか/小雪 静かなる侍/福本清三
サイモン/ティモシー・グレアム バグリー大佐/トニー・ゴールドウィン
ガント軍曹/ビリー・コノリー 中尾/菅田俊
天皇/中村七之助 大村/原田眞人 信忠/小山田シン

ハリウッドの日本人を捉えた映画ってのは「ライジングサン」を観るまでも無くおかしいものが多いが(エコノミックアニマル・眼鏡に出っ歯、背が低い等々)ある意味カリカチュアライズ(戯画化)されているもので気にはならない。しかし映画の影響力はたいした物でそれで本当に日本人はそうだと思っている人も中にはいる。もちろんそうでないと知っている人もいるがそれだけ沢山の人が観ると言う事だ。キングオブハリウッドと呼ばれた俳優、早川雪州も敵役でのし上がった人で人望もアリ名実ともにスターだったがそれでも正義の人という扱いではなかった。それはアジア人に対してハリウッドは開かれている門ではない。自ら開く扉でしかも尋常なことでは開かないということでもある。一方巨匠黒澤明の「7人の侍」「用心棒」に代表されるように武士道、侍というものに異常なまでに反応を示す。これは彼らのメンタリティでは計りしれないストイックな精神に惹かれているからかもしれない。(このあたりは西部劇が下火になってネイティブアメリカンに対しての紹介が進みそれまで西部劇の敵役、蛮族といったイメージから精神的に自然と共存している誇り高き種族として注目を集めたことにだぶる)そこで侍に関してハリウッド一の通と言われている(誰に?)トムと歴史モノでアカデミーを獲ったズウィックがタッグを組んで制作したのが今作である。物語自体は架空のお話であるがそのベースに維新後起こった士族の反乱、特に西郷隆盛の西南の役などがベースになっていることは想像に難くない。オールグレンは南北戦争の英雄でもあるが戦争後酒びたりになりウィンチェスター銃のデモンストレーターとして日々しのいでいた。このOPシーンからも彼は戦争によって名誉を受けたこともあるが忸怩たる思いで生きていると解る。そして日本の要人大村から近代国家にふさわしい軍隊を要請するための教官として元の部下と上司から誘われ日本に赴くことになった。錬度低い兵士達を訓練するが一方で国内では急激な変化に反対する士族(侍)達の反乱が相次いでいた。訓練が不充分なまま討伐隊を組織し出発するが奮戦空しくオールグレンは捕らえられ士族の長、勝元に出会う。とまぁこのあとのストーリーは語ってもしょうがないので割愛するがオールグレンが勝元やその部下氏尾、勝元の息子の信忠、そして傷ついたかれを介抱してくれる勝元の妹たか。しかもたかはオールグレンが先の戦闘での一騎打ちで倒した相手の妻。しかし次第に心通わせるあたりも西部劇を彷彿させる。そうこれは西部劇へのオマージュともとれる内容である人はその主人公の精神的変化からサムライ版「ダンス・ウィズ・ウィルブス」と言っていた。ただし本当の日本の現役俳優を使いしかも時代劇に精通した真田や外国の映画作りをしっている原田眞人らが関わったことにより細部のディティールがよりはっきりとしてきた事により日本人にも受け入れやすく解りやすい内容になっていることは評価したい。ただアメリカ人にはどうかというクエスチョンは残ってしまうが。それとこの映画でもっとも侍を体現しているのは「サイレントサムライ」という役名(パンフでは寡黙なサムライとなっていたがあえて静かなる侍と言いたい)福本清三氏だろう。斬られ役一筋でココまできた彼にとってはこれはご褒美だと語っていたが一番侍というものを表していた。ただそれだけだと話が進まないので勝元や氏尾のような役柄が必要になってくるわけでそういう意味では渡辺謙儲け役だったと思う。しかもアカデミーノミネートだし。まっとうな大作としてご覧になって欲しい作品である。
国際劇場にて鑑賞

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