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ザックスの冒険〜黄金のチョコボ伝説〜

DUNGEON14・エピローグ




「ザックス、起きろ」
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「起きろと言ってるんだ」
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「さっさと起きないか!!」
どんがらがっしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!
            ・・・・・・・・・・・・・・・・し〜〜〜〜〜〜〜ん。
「サンダガをくらっても起きないとは・・・・・・・・・・・。こいつ、図太さに磨きがかかったな」
「せ〜〜ふぃ〜〜〜ろ〜〜〜す〜〜〜〜〜」ザックスはのそ〜っと頭をあげた。ぼさぼさの髪がところどころ焦げて、ちりちり音をたてている。「目が覚めなかったんじゃない。目を覚ますのを通り越して、永遠に寝てしまいそうになっただけだよ・・・・・・・・・・・・」
 ここはミッドガル0番街、神羅軍士官宿舎内、ザックスの部屋。クラス1STのソルジャーにふさわしく、狭いながらも設備の整っているはずのその部屋は・・・・・・・・・・・はっきり言って、汚い。
「そうか。目が覚めてよかったな」
「よかったな、じゃねーよ!あんた、もうちょっとマシな起こし方ができんのか!?第一、今日は俺は非番だぞ!!」
「おまえに客だ」
「客ぅ?誰だよ」
「行けばわかる。伍番街ゲートのところで待ってるそうだ」
「ミッドガルの外じゃないか。誰だか知らないけど、こっちまで来ればいいのに」
「人目をはばかる事情でもあるんだろう。おまえのことだ、そういう相手のひとりやふたり、心当たりがあるだろうが」
「なんだよ、その含みのある言い方は・・・・・・・・・・・」
 ザックスはシャワーを浴び、きちんと身支度をした。客が女性だった時のことを考えて、びしっときめておかなけばならないのだ。
 部屋の外に出ると、本日の士官宿舎掃除当番のクラウドが廊下を磨いていた。
「あ、先輩、おはようございます。どうしたんですか、今日はずいぶん早いですね」
「・・・・・・・・・・・・セフィロスに叩き起こされた」
「どおりで。なんかこげくさいですよ」
「なんだ?まだにおうか??」
「これからデートなんですか?そんなに気にするってことは。それにしては、隊長に叩き起こされたと言ってましたね」
「まあ、いいや。客が女とは限らないし。クラウド、廊下掃除のついでに俺の部屋も頼むわ」
「先輩、俺たち一般兵が掃除を命じられてるのは共有スペースだけだって、何度言ったらわかるんですか。自分の部屋は自分でやってください」
「細かいことは気にすんなって。じゃ、頼むぜ」
「少しは気にしてください〜〜〜〜!!先輩の部屋の掃除、一日がかりなんですから〜〜〜〜!」



×××



 黄金のチョコボを探す旅が終わってから、もう半年が過ぎようとしていた。
 黄金のチョコボを見つけることはできたが、それをルーファウスに報告はしなかった。
 彼らは何百年もの間苦労を強いられ、やっと平和に暮らすことができるようになったのだ。しかし神羅カンパニーにその存在を知られたら、彼らはまた穏やかな暮らしを失うことになりかねない。
 かといって、「何もありませんでした」だけでは済みそうになかったので、本社にはちょっと−−−−いや、かなりねじまげた報告をした。チョコボせんにんの家で売っていた野菜のタネを譲り受け、それを報告書にそえて提出したのだ。今までに知られていたどんなエサよりもチョコボの能力を高める野菜と、その野菜で育てているうちに黄金のチョコボが突然変異で生まれるらしいというでっちあげの話に本社は納得し、それ以上追求されなかった。じつは、本当に突然変異で黄金のチョコボを生まれさせる方法もあるらしいのだが、別に必要ないから、とザックスは調べなかった。



×××



 伍番街ゲートの外には、人影はまったくなかった。
「なんだ、誰もいないじゃんか。それとも、待ちくたびれて帰っちまったかな?」
「ザックス、お待ちしてました」物陰からチョコボが顔を出した。「お呼びだてしてすみません」
「あー、ココじゃんか。そっか、チョコボが街中まで来るってワケにはいかないよな」
「本当にごぶさたしました。あの、ザックス・・・・・・・・・なんかこげくさいんですけど」
「ん、まあ、な。それより、どうしたんだ、こんなとこに。普通のチョコボのふりまでしてさ」
「チョコボワールドの暮らしが元に戻ったら一度ご招待するとお約束したでしょう?もうそろそろお見せできるくらいにはなったかな、と思いまして。ボコからも、お暇があったらぜひいらして欲しいとの伝言です。セフィロスとクラウドのおふたりもね。それから、あなたが連れてきたいという方が他におられたら、その方もどうぞとのことです」
「いいのか?あんたたちのことを他の連中にしゃべっちまっても」
「あなたなら、めったな相手には話さないですから」
「そんなに信用されると、なんかくすぐったいな・・・・・・・・・。じゃ、そのうち休暇を取ってきっと行くってボコに伝えといてよ。−−−−それからさ、あのふたり以外で、あんたたちんとこに連れて行きたいヤツがひとりいるんだけど・・・・・・・・・・・・・。本当にいいのか?」
「いいですとも。あなたのお友だちならいつでも歓迎しますよ」
 ココと別れ、ザックスは伍番街スラムに戻った。
 チョコボワールド、順調に復興してるらしいな・・・・・・・・・・・。ザックスはなんだかとてもほっとした。ココの羽根も、本当はきっと黄金の輝きを取り戻していたに違いない。こんなところでは不用意に見せてもらうわけにはいかなかったことが残念だった。
 だけど、今度あの世界に行ったら、本当に黄金のチョコボに会える。
 そして、夢見ていた光景が現実になる。
 もっとも、ゴンガガを出た時のに少々修正が入っているが。
 黄金のチョコボを駆るのは自分ひとりではない。
 エアリスとふたりで。海でも山でも川でも、どこへでも自由にふたりで駆け抜けていく。
 ザックスの頬がゆるんだ。
 ちょうど伍番街まで来ているんだ。エアリスをデートに誘おう。そして、この話をしてやろう。
 どうせチョコボワールドに行くんなら、ついでに家にも寄ろうか。とーちゃんとかーちゃんにエアリスを紹介したら、どんな顔をするだろうな。
 エアリス、今どこにいるんだろう。家かな、教会かな。そう考えながらPHSを出した時、突然それが鳴り出した。ザックスはPHSを落としそうになりながら、応答した。セフィロスだった。
『もう用事は済んだ頃だな?すぐに戻ってこい。緊急の任務が入った』
「え〜〜〜〜、俺、これからデートなんだけど」
『なんだ、おまえ、メスならチョコボでもなんでもみさかいなしか』
「いや、そうじゃなくて、これからちゃんと人間の女を誘おうと・・・・・・・・・・・・」
『これからってことは、まだ誘ったわけじゃなさそうだな。それなら文句を言わずにとっとと戻ってこい。早く親に自慢できるような手柄を立てて堂々と家に帰りたいのだろう?そう思ってこの仕事をおまえに回してやるんだ。それとも、このオレの好意が受けられないとでも言うのか?』
「わ、わかりました、セフィロス隊長。すぐに戻らせていただきますっ!」
 PHSを切ると、ザックスはため息をついた。あんまり余計な意地をはるもんじゃないな。
 でも、まあ、いいか。
 ザックスはあらためて、PHSのボタンを押した。




×××××




(ぴっぴっぴ・・・・・・・・・・ぷるるる)
「もしも〜し、エアリス?俺だよ」
『ザックス?どうしたのよ、最近は電話もくれなくて』
「ごめんな。ずっと忙しくてさ。今日もこれから仕事。−−−−でも、この仕事が終わったら、なんとか休暇がとれそうなんだ。そしたらさ・・・・・・・・・・・どこか旅行でも行かないか?」
『ホント?今度こそ、約束破らないわよね??』
「ホントだよ。でさ・・・・・・・・・・・。その時に、エアリスに見せたいもんがあるんだ」
『な〜〜〜に?』
「それは、その時のお楽しみってことで。エアリス、絶対驚くぜ」
『そなの?じゃ、楽しみにしてるから、約束やぶっちゃダメよ』

 ザックスはPHSを切った。
 今はまだ、秘密。
 夢がかなう時までとっておく、大事な秘密。




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