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ザックスの冒険〜黄金のチョコボ伝説〜

DUNGEON13・チョコボワールド(1)




 どうもかなりの遠回りをしたあと、ゲルニカはゴンガガの森のはずれに着陸した。
 ここには大量のタッチミーが出没する。いくら攻撃力はたいしたことないと言ってもカエルにされるとやっかいなので、しっかりとリボン装備をして3人は森へと入って行った。
 そして最初の別れ道で、ザックスは迷わず右の方を選んだ。
「あれ〜〜、先輩、ゴンガガの村はこっちらしいですけど」
クラウドが左の道を指して言う。
「今度の目的地ははっきりとわかってるんだ。別に村に寄って話を聞かなくたっていいだろ?そんなのは時間のムダってもんでさ〜〜〜〜〜」
「でも、そのほこらの先はたぶんラストダンジョンですよ。準備はちゃんとしておきませんと」
「えっと、まあ、そう、それもそうだな。んじゃ、どっか近くの町まで引き返して・・・・・・・・・・・・」
とザックスは回れ右した。
「その『近くの町』とやらがすぐそこにあるのにどこに行こうと言うんだ、ザックス?」
「そ、そりゃそうだけど・・・・・・・・・・。こんなジャングルの中にある村なんかに、たいしたものがあるはずがないだろう?だから、もっとちゃんとした街に買い出しに−−−−−」
いろいろと言い訳を並べるザックスは、どこから見ても挙動不審である。
「クラウド」
「はい、セフィロス隊長」
ふたりは目と目を合わせると、両方からザックスの腕をがしっとかかえこんだ。
「これは絶対何かあるぞ。おもしろいからひきずって行こう」
「はい、隊長!!」
「わ〜〜〜〜、やめろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 抵抗むなしく、ザックスは村の方へとひきずられていってしまった。



×××



 村のはずれでザックスは、いきなり知り合いに見つかった。小さな村だ。住人みんなが顔見知りなんだからしかたがない。
「あれ、ザックスじゃないか?帰ってきたのか、おまえ」
「あ、ああ、おっちゃん、久しぶり・・・・・・・・・・・」
「突然村を飛び出して行ったきり音沙汰なしだったそうじゃないか。ご両親や村長さまが心配していたぞ。早く元気な顔を見せてやれ。先に村に行っておまえが帰ったことを伝えてくるからな」
そう言って彼は村の方に駆け戻って行った。
「あ、おっちゃん、待っ・・・・・・・・・・!」
止める間など、なかった。
「へ〜〜〜、ここが先輩の故郷なんですか。すっごい田舎。俺の村の方がまだ開けてますよ。見栄っ張りの先輩があれだけ抵抗するはずですねえ」
「悪かったな!どうせ俺はばりばりのイナカもんだよ!!」
「まあ、なんにせよ、思いがけず里帰りできてよかったじゃないか、ザックス?」
「だからさ、心の準備ができてないんだってば〜〜〜〜〜〜!!」
「・・・・・・・・・・・・・・夕べは俺を無理矢理家に追い返しておいて、自分は心の準備がどうのじゃないでしょう」



×××



 村に入ると、あちこちから村人がわらわらと集まってきた。
「あれまあ、本当にザックスだよ」
「おまえ、ソルジャーになったって?へ〜〜〜、出世したんだなあ」
「畑仕事をさぼってはカエルになってばかりいたおまえがねえ」
「都会でも女の子を泣かしてたんじゃないでしょうね」
「いろいろおもしろい話もあるんだろう?なんでも好きなだけおごってやるから聞かせろよ」
「仕事、ちゃんとやってるのかい?あたしにゃ信じられないけど」
みんなの熱い歓迎にザックスはたじたじするばかりだった。
「え・・・・・・・・と、その・・・・・・・・・・・、俺、任務で近くに来たから寄っただけで・・・・・・・・・・・・話やなんかはまたいずれ−−−−」
「え?仕事で来たのか?そういえば、神羅の兵隊さんもいるね」
「わ〜〜〜、誰、あのかっこいい人!!」
「すご〜〜〜い!きれ〜〜〜〜い!色が白〜〜〜〜〜い!!信じられない〜〜〜〜!!!」
「兵隊さんもかわいいわよ〜〜〜〜。ね、おねーさんとデートしない??」
「こらこら、皆の衆。仕事で来たということなんじゃから、そのくらいにしておきなさい」
そう言いながらひとりの老人が前に出てきた。
「・・・・・・・・・・・・村長さま」
「なんにしても、よう帰ってきたな、ザックス。ずいぶんあか抜けて、たくましくなりおって。で、そちらのおふたりはどなたかの?」
「え、と・・・・・・・・同じ軍の・・・・・・・・・・・・・・・・・」
セフィロスが前に進み出、言った。
「ゴンガガ村長でいらっしゃいますな?私は神羅軍ソルジャー部隊隊長、セフィロスと申します。もうひとりは部下のクラウド。軍務で近くまで来ましたもので、物資補給のために立ち寄らせていただきました」
「ほほお、それはごくろうなことですな。ところで、ザックスはお役にたっておりますかな?」
「はい、大変優秀な人材を得ることができたと喜んでおります。現在の我々の任務は過去、軍が大人数を動員したものの結果を得ることなく失敗に終わったものなのですが、今回は彼の働きもあり、新たな事実が多数判明しまして、あと少しで無事任務遂行できそうなのです」
「ほおお、それはまた・・・・・・・・・。セフィロス殿、過去の神羅軍の任務といいますと、もしかして−−−−−」
「まあまあ、村長さま、そっから先は極秘事項だからさっっ!!と、とにかく、ちょっと宿屋の部屋を借りるぜ。どうせ今日も客なんかいないんだろう?!」
「おお、空いておるぞ。好きに使えばよかろう」
 ザックスはセフィロスたちを押し込むように宿屋に入った。そして近くに人がいないことを確かめると、どなった。
「セフィロス!なんつー恥ずいことを言うんだよ!!よくもまあ、あれだけ心にもないことをべらべらと・・・・・・・・・・クラウド!おまえも笑いをこらえてるんじゃない!!」
「だ・・・・・・だって・・・・・・・・・・・・隊長ったらあんな大ウソを真顔で・・・・・・・・・・・・・・」
クラウドは顔を真っ赤にして、涙まで浮かべている。
「ならば、村長に本当のことを言えばよかったのか、ザックス?おまえの突発的暴走行動に我々が巻き込まれてこんなところまで来てしまったこととか、この旅の間におまえがやらかしたマヌケな言動の数々とかを?」
「うっ・・・・・・そ、それは・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どっちにしても困るんじゃないか。だから、たぶん村人が驚くだろうと思った方をしゃべっただけだ。これでしばらくはこの村の連中、話題にことかかないぞ」
「セフィロス・・・・・・・あんた、やっぱりいい性格してるよ・・・・・・・・」
 その時、誰かがドアをノックした。どうぞ、と声をかけると、ひとりの女性がおずおずと顔をのぞかせた。
「か・・・・・・・かーちゃん!?」
「あの・・・・・・・・・・・おじゃまじゃなかったですかね?」
「かまいませんよ。重要な話は済みましたので」
セフィロスが愛想よく言った。
 ザックスのかーちゃんはためらいがちに息子に近づいた。そして、しげしげと顔を見つめた。
「元気そうだね・・・・・・・・・・・。ほんとによかった。おまえ、家を出たあと電話を一本よこしたっきりだったからね。心配してたんだよ」
「ごめん、かーちゃん。俺・・・・・・・・・・・・」
「いいよ。元気でやってるのならそれで。おまえが出て行ってからというもの、とーちゃんもなにかって言うとおまえの心配ばっかりしててねえ・・・・・・・・・・。それなのに、いざ帰ってきたら意地はっちゃってね。『なんであんなヤツにわしの方から会いに行かなきゃならん!』とかなんとか言っちゃって、家から出て来ないんだよ。だから、仕事のじゃまにならなければでいいから、一度帰っておいで」
「え、でも・・・・・・・・・・・」
「いいですとも、ご母堂」セフィロスが相変わらずにこやかに口をはさんだ。「そんなに緊急を要する任務ではありませんから。ご子息は一晩お返ししましょう」
「そ、そうですか。ありがとうございます、セフィロスさん」ザックスのかーちゃんの表情がぱっと明るくなった。「あ、それで、村長さまがみなさんにお話があるとか言っておりましたんで。ちょっと寄っていただけませんですかね?−−−−−それじゃ、ザックス、またあとでね。おいしいものをいっぱい作って待ってるからね」
そう言ってザックスのかーちゃんはうれしそうに出ていった。
 ドアが閉まると、クラウドはとうとうこらえきれずに笑い出した。
「バカヤロ〜〜〜〜〜〜!ナニがそんなにおかしい!!」
「だ、だってえ〜〜〜〜〜〜〜〜!!あ〜〜〜〜〜、くるし〜〜〜〜〜〜!!!」
「ということだ。ザックス、今晩は『おまえが』家に帰るんだな。見ての通り、ここにはベッドが本当にふたつしかないし。それとも、オレといっしょに寝るか?」
「う・・・・・・・・・・・・・・・」
「さて、話がまとまったところで、村長の家に行くとするか。何の話があるのかは知らんが」
「・・・・・・・・・・・・話、まとまった、のか?」



×××



 ザックスたちが村長の家に行くと、村長は粗末な器に最高の茶を淹れて彼らをもてなした。
「なかなかようやっとるようで、わしもうれしいぞ、ザックス。やっぱりおまえは、こんな小さな村にはおさまりきらんヤツだったんかのお・・・・・・・・・・・・」
彼を見る村長の目は、とても満足そうだった。ザックスはひどく落ちつかなかった。
「お、俺のことはどーでもいいからさ。話ってなんだい、村長さま?用があるのは俺だけじゃないみたいだけど」
「うむ。話っちゅうはのはじゃな。−−−−−セフィロス殿、さきほど『過去、神羅軍が失敗した任務』とかおっしゃっておられたが、それは、この近くにあるほこらの調査のことですかの?」
「その通りです。なぜおわかりになられました?」
「神羅の兵隊がここに来たのは、わしが知ってる限りではあれ一度きりですからのお。今度の仕事がやはりあれにかかわることでしたら、見ていただきたいものがありましての」
そう言うと村長は、階段の下のせまいすきまに入り込んだ。そしてしばらくごそごそしていたが、やがて複雑なカットのほどこされた美しい石を持って出てきた。
「これなんですがの。実はこの石は、あのほこらの扉の鍵らしいんですのじゃ」
「鍵・・・・・・・・・・?ほこらを開けるのに、こんなものが要るのか?」
「そうじゃ。−−−−−−セフィロス殿、前に軍が来た時になぜそれを黙っていたかと責めないでくだされよ。あの時はわしらも、これがほこらに関係あるものとは思っていなかったものですのでな」
「そんなつもりはありません。その当時私は、生まれたか生まれていないかくらいの子供でしたし、その私にそんな資格も権利もないでしょう。−−−−しかし、なぜこれがほこらの鍵とわかったんです?」
「これはわしの家に代々伝わる家宝なんですがの。見ての通りの美しい石なんで、単なる宝石と思って大事にしておりましたんじゃ。しかし、神羅の兵隊が引き上げたあと、村の若いもんがほこらに興味を持って、掟を破って見に行きましての。ほこらの扉にある穴とこれの形がそっくりなことに気づきましたんじゃ。で、これをこっそり持ち出して、その穴にはめてみたら、扉が開いたらしいですのじゃ」
「ほこらの鍵・・・・・・・・・・・・・。そんなものがあるなんて俺は聞いたことねーぜ、村長さま」
「そのことがあって以来、めったな者にはこれを見せておらんでの。時々おまえのような、いたずら者が出てくるからの。これのことを知ってるのは今では年寄りだけじゃ」
「・・・・・・・・・・悪かったな、いたずら者で」
「まあ、おまえはあの親父どのの息子じゃからのお。あやつが結婚して、子供が生まれて、こんな風に育ったのを見るにつけ、この親にしてこの子あり、とつくづく思っておったよ」
「ちょっと待った!−−−−−村長さま、それじゃ、その、これを使ってほこらの扉を開けた若いもんって・・・・・・・・!」
「そう。おまえの親父どのじゃ」
「−−−−とーちゃんが?!」
「そうじゃ。あやつも若いころは、おまえのように手におえないヤツじゃったぞ。まあ、あやつのいたずらのおかげで、これがなんだかわかったんじゃ。そして、息子のおまえがやっている仕事にこれが必要だってのは、なんかの縁じゃろ。持って行くがええぞ、ザックス」
「だけど、村長さま・・・・・・・・・・・・」
「ご好意はありがたく受け取っておけ、ザックス」セフィロスが言った。「理由がなんであれな」
「ん、まあ・・・・・・・だけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「遠慮はいらんぞ。用が済んだら返してもらえればええし、なんか理由があって返せなくなっても別にええしな。その代わり、しっかりお務めを果たして手柄を立てるんじゃぞ」



×××



 村長の家を出た時ザックスは、これ以上ないくらいしぶい顔をしていた。
「どうした?ずいぶん気に入らなそうな顔をしているな」
「だってさ・・・・。あのほこらを調べに来たのは上からの命令じゃなくて、俺が勝手にやってることで・・・・・・・・」
「そうでもないでしょ。いちおう、ルーファウス副社長の命令をいただいてるし」
「でも、俺が始めたことに変わりはないんだよな・・・・・・・・」
「まあ、そんなことはどちらでもいいではないか。これで本当に黄金のチョコボが見つかれば、それはおまえの手柄だ」
「それでも・・・・・なんか胸が痛むよな・・・・・・・・・・」
ザックスはためいきをついた。
「だからと言って、ここでやめるつもりはないのだろう?だったらそれ以上ぶつぶつ言うな。−−−−さて、我々はこれで宿に戻る。おまえは家に帰れ」
「え?やっぱし帰んなきゃ・・・・・・・・・・・・・ダメ?」
「だって、お母さんと約束したでしょう?それに、先輩のベッドはないし〜〜〜〜」
「わ、わかったよ、帰ればいいんだろ、帰れば!!」
ザックスはきびすを返すと、ずんずんと家の方に歩き出した。
「ザックス」
「なんだよ!」
「父上によろしくな」
ザックスは思いっきりしかめっつらをして見せた。



×××



 そしてザックスは、久しぶりに家の前に立った。
 こんな形で帰ることになるとは、思いもしなかった。
 やっぱり帰りづらいなあ・・・・・・・・とザックスは一度は引き返しかけた。
 でも、かーちゃんにこれ以上心配をかけるのもなんだし、とーちゃんも、どのくらい怒っているかはわからないけど、一発殴られれば済むだろう。
 ザックスは家の扉を開けた。畑仕事から帰ってきただけかのように、できるだけ、なにげなく。
「−−−−ただいま、とーちゃん、かーちゃん。腹減った!」




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