ザックスの冒険〜黄金のチョコボ伝説〜
DUNGEON9・ロケット村
草原のど真ん中に、それはつったっていた。 「・・・・・・・・・なんだ、これ」 ザックスは天を指してそびえ立つ、その巨大な物体を見上げた。 「宇宙開発部門が建造したロケット、神羅26号だ。ここはそのスタッフたちが住むロケット村。近々打ち上げが予定されているはずだ。管轄外だからくわしいことは知らないが・・・・・・・・・なかなか立派なものだな」 「宇宙ロケットかあ・・・・・・・かっこいいなあ・・・・・・・・・・・・・。な、見物に行こーぜ!」 「おい、クリスタルのことはどうした!?」 「ちょっとくらいいいだろ?クリスタルは逃げやしねーって!!」 ザックスはそう言うと、村の方へと走って行ってしまった。 「まったく・・・・・・・・・・」 「セフィロス隊長、俺たちも行きませんか?地図によると、『風のクリスタル』はこのあたりにあるようですし。情報を集めませんと」 「クラウド・・・・・・・・おまえもロケット見物をしたいと言うのか?」 「え・・・・・・別に・・・・・・・・・・そんなことはないですよっっ」 「−−−−したいんだな。まあいい。つきあってやる。ただし、ここの住人にクリスタルの話はちゃんと訊いて回れよ」 とかなんとか言っているセフィロスも、ロケットに興味があったりするのである。 |
××× |
ロケット村は、打ち上げの準備でおおわらわだった。誰かつかまえて話を聞こうにも、ちょっとやそっとではつかまってくれそうにない。どうしようかうろうろしているうちに、一軒の家の裏庭にある飛行機がザックスの目に止まった。 「へ〜〜〜、ここには飛行機もあるんだ・・・・・・・・・・・・。タイニーブロンコか。いいな、これも」 柵の外からあちこち角度を変えてながめていると、メガネの女性が声をかけてきた。 「あの・・・・・・・・。何かご用ですか?」 「ん、ちょっと見せてもらってただけ。それより、ここの責任者って誰?」 「艇長ですか?あの・・・・・・・・あなたがたは?」 「俺はザックス。うしろにいるのはセフィロスとクラウド。治安維持部の者だけど」 「ああ、ロケットの警備にいらしたんですね。ごくろうさまです。艇長なら発射台の方におりますわ。私はシエラ。何かご用がありましたら、私、この家にしばらくいますので、遠慮なくお申し付けくださいね」 さっさと発射台の方へ向かうザックスに、セフィロスは気に入らなそうに言った。 「おい・・・・・・・・オレたちはいつロケット警備に来たんだ?」 「まあまあ、ナンにも言わないうちに彼女がそう誤解してくれたんだ。その方がめんどうなさそうでいいじゃん」 「・・・・・・・・・・・所属なんぞを名乗っておいて、何を言うか」 発射台で艇長に取り次ぎを頼むと、しばらくして不精ヒゲの男がやってきた。 「艇長って、あんたか?」 「親からもらった名前はシドってんだ。みんなは艇長って呼ぶけどな。で、おめえさんたち、何の用だ?警備の人間が来るなんてオレ様は聞いてねえぞ」 「あははは、じつは・・・・・・・そうじゃないんだ。ちょっとロケットのことを教えてもらいたくてさ」 「おっ、若いモンにしちゃなかなか感心じゃねえか。よし、ここはオレ様自ら説明してやることにしよう−−−−−−−」 そしてシドは嬉々としてえんえんとロケットの説明を始めた。その話の長さにそろそろザックスも他のふたりも嫌気がさしてきた頃、ようやく話が終わる気配が見えてきた。 「−−−−−ということで、順調に行けば来月打ち上げなんだな。今でこそ神羅一、いや、世界一のパイロットとして最初の宇宙飛行士に選ばれたオレ様だけど、タイニーブロンコのパイロットから始めて何年になるか・・・・・・・・・。だけど、これでようやくオレ様の夢がかなうんでい!」 「ふ〜〜〜ん。いろいろ勉強になったよ。ありがとな、おっさん」 ザックスはほっとしてそう言った。 「じゃ、忙しいからオレ様はこれで失礼するぜ。気が向いたら打ち上げの時にでもまた来いや」 そして3人は村に戻った。 「気が済んだか?では、クリスタルの情報を集めに行くぞ」 「その前に、さっきの家に行かねーか?タイニーブロンコを見にさ」 「先輩、今度はパイロットになるなんて言い出すんじゃないでしょうね」 「ん〜〜、それもいいけどな。とりあえずは、これだよ、これ」そう言ってザックスは地図を広げた。「最後のクリスタル、海の向こうにあるんだ。飛行機があった方がラクだろ?」 「・・・・・・・・・・おまえ、飛行機の操縦なんかできるのか?」 |
××× |
シエラに頼むと、彼女は何も疑わずに彼らを裏庭に通した。ザックスはタイニーブロンコの操縦席によじ登り、操縦桿や計器をいろいろと調べてみた。 「ふ〜〜〜ん、わりと単純な構造なんだな。車の運転ができるなら、2、3度離着陸の練習をすればなんとかなりそうだぜ」 「確かにな。しかし、あの男、貸してくれると思うか?」 「貸してくれなかったらもらっていけばいいじゃ〜〜〜〜ん」 「せんぱい〜〜、またろくでもないことを−−−−!」 などとやっていると、家の方が急ににぎやかになった。そして裏口からシドが現れた。 「おい、おめえさんたち、さっきの青二才どもだな?シエラのバカヤロウをだまくらかしやがって。オレ様がいつ、おめえらにタイニーブロンコをいじっていいと言った??」 「や〜〜〜、シドのおっさん、すまんすまん。じつは、こいつを貸してもらいたくてさ」 「タイニーブロンコを貸せだあ?だめだだめだ!これはオレ様の宝物なんでえ!どこの馬の骨ともわからん野郎に貸せるかってんだ!」 「どこの馬の骨だとお?俺たちは立派なソルジャー部隊の一員だぜ!それを馬の骨ってなんだよ!」 「ソルジャーだかなんだか知らねえがな、とにかく貸せねえものは貸せねえんだ!わかったらケガしないうちにとっとと帰んな!」 そう言ってシドは、物置からビーナスゴスペルを持ち出した。 「なかなかいい度胸じゃねえか、おっさん。無茶するとケガすんのはそっちの方だぜ」 売り言葉に買い言葉、ザックスもバスターソードをかまえる。 なんだかよくわからない展開に、クラウドはおろおろするばかりだった。 「た、隊長、止めなくていいんですか??」 「止めに入ったりしたらケガをするのはこっちの方だ。ほっとけ」 「え、でもお・・・・・・・」 そう言っているうちに、ふたりのチャンバラが始まってしまった。 「おっさん、年寄りの冷や水はやめときな!」 「オレ様を年寄りあつかいするんじゃねえっ、このヤマアラシ頭!」 「や、ヤマアラシぃ?!俺のこの美しい黒髪に向かってなんてこと言いやがる!」 「へっへっへ、美しいだと!?笑わせんじゃねえ!そのぼさぼさのツンツン頭はヤマアラシ以外のなにものでもあるめえよ!」 「この野郎、言わせておけばあ〜〜〜!やい、じじい、俺がヤマアラシ頭なら、あんたなんか顔面いがぐり男じゃあねえか!顔じゅうむさくるしいカビはやしやがって、あ〜やだね〜〜〜、年寄りは!や〜いや〜い、顔面いがぐりじじい〜〜〜〜〜!!」 「なんだとぉ、おっさんならともかく、じじい呼ばわりしやがったなあ!小僧!許さん!」 「せんぱい〜〜〜、このへんでやめておきましょうよお。お年寄りはいたわりましょうって学校で習ったでしょう?」 「おいっ!こらっ、てめえ!誰がお年寄りだぁ?!よけいなクチバシはさむんじゃねえっ、このチョコボ頭!!!!!」 「そうだそうだ!HP140の失敗作の出る幕じゃないぜ!」 「チョ、チョコボ頭ぁ?!!失敗作ぅ!?ひどいぃぃぃぃ〜〜〜〜!」 「・・・・・・・・・・・・子供か、こいつらは」 セフィロスは頭が痛くなってた。 |
× |
戦い済んで日が暮れて。 「ぜーぜーぜー・・・・・・・・・・。おっさん、けっこうやるじゃねーか」 「はあはあはあ・・・・・・・・・・。おめえこそ、ダテにソルジャーやってねえな」 どちらからともなく起き上がり、ふと目と目があった。そしてザックスとシドは声をあわせて笑い出した。 「気に入ったぜ、若造!おめえもパイロットになりてえのか?だったらオレ様がじきじきに教えてやってもいいぜ」 「パイロットってのもかっこいいけど・・・・・・・俺には俺の夢ってヤツがあってさ」ザックスは、伝説の黄金のチョコボを探す旅をしていることを話した。「−−−−で、そのためには飛行機があったらラクだろうなと思ってさ」 「ふ〜〜〜ん、なるほどな・・・・・・・・・・・・・」 「ごめんな、シドのおっさん。あんたの大事なもんをお気楽にもらっていこうなんてしてさ。許してくれよな。−−−−そいでさあ。んなことしたあとじゃ訊きづらいけど・・・・・・・・・・ここいらにもひとつクリスタルがあるらしいんだ。なんか聞いたことない?」 「クリスタルねえ・・・・・・・・・。そういや、ここの向かいの家の日がな一日ロケットを見上げてるじじいが、発射台の工事中になんかキレーな石を見つけたって言ってたな・・・・・・・・。オレ様が知ってるのはそのくらいだが」 「わかった。そのじーさんに訊いてみるよ」 |
××× |
シドが言っていたじいさんというのはすぐにわかった。家の戸口でロケットを見上げて、とても幸せそうな顔をしている。 「あ、じーさん、ちょっと訊きたいことが・・・・・・・・」 「訊きたいこと?あそこにそびえるロケットのことじゃな。あれはこの村の名前の由来、宇宙ロケット『神羅26号』じゃ」 「いや、それは知ってるけど・・・・・・・・・・」 「おお、そうかそうか。知っておったか。それならどうじゃ?わしといっしょに見上げてみるか?」 「だから、そうじゃなくて・・・・・・・・・・」 しかし、じいさんはザックスの話なんか聞いていない。また幸せそうにロケットの方に目を向けてしまった。ザックスはしかたなく、じいさんといっしょにロケットを見上げた。 「何度見ても感動するのお」じいさんはしみじみ言った。「わしの趣味につきあわさせてしまってすまんのお。お礼と言ってはなんじゃが、これをあんたにあげよう」 そう言ってじいさんがザックスに手渡したのは、まぎれもなく『風のクリスタル』だった。 「じーさん、これ・・・・・・・・・・!」 「いやいや、気にせんでもええぞ。ただ、だいじに使ってもらえるとわしもうれしいんじゃが」 「もちろんだぜ!ありがとな、じーさん!」 |
××× |
『風のクリスタル』が手に入ったことを、ザックスは喜びいさんでシドに報告に行った。するとシドはタイニーブロンコに乗り込んで、何やら作業中だった。 「そうかい、あのじじいが持ってたか。そりゃよかったな」 「ああ、これで残りあと1コだぜ。じゃ、これでここでの用事はすんだし、俺たちもう行くよ」 「まあまあ、そんなにあせんなって。船か飛行機がいるんだろう?こいつを使え」 そう言ってシドはタイニーブロンコをぽんっと叩いた。 「え、でも・・・・・・・・・。いいのか?」 「男が自分の夢を叶えようとがんばってんだ。手助けしなきゃシド様の名が泣くってもんよ。こいつの調子は万全だぜ!あとは、こいつを扱うヤツの腕だな。貸してやるっつってもヘタにいじりまわして壊されちゃかなわんから、操縦法をみっちり仕込んで合格したらってことでどうだ?」 |
××× |
翌日、シドとふたりで空を飛ぶザックスの姿があった。その様子は操縦指導というよりは、やはり子供のケンカにしか見えない。しかし、シドは言い方こそむちゃくちゃながらもツボをちゃんと押さえて教えているし、ザックスもいくらおバカな言動が多くてもソルジャーになってしまう能力の持ち主である。あっと言う間に腕をあげ、その日のうちにシドから太鼓判をもらうくらいになっていた。 そしてふたりはその夜、上海亭で互いの夢を語り合いながら、一晩中飲み明かした。 その次の日、酒も疲れもすっかり抜けた昼頃になって、ようやく出発とあいなった。 「じゃ、がんばってこいや。オレ様もおめえの夢が叶うことを祈ってるぜ」 「おっさんも気をつけてな。宇宙から生きて帰ってきたら、その時には伝説の黄金のチョコボに乗せてやるからよ」 「楽しみにしてるぜ!」 シドに見送られ、ザックス操縦のタイニーブロンコは次のクリスタルめざして飛び立った。 |
××××× |
(ぴっぴっぴ・・・・・・・・ぷるるる) |