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ザックスの冒険〜黄金のチョコボ伝説〜

DUNGEON7・ゴールドソーサー




 なりゆきではあったが潜水艦をまんまとせしめ、「これで移動が楽になる!」と喜んだのもつかの間のことだった。
 潜水艦では、浅い海の移動ができないのである。ぐるりと調べてみたが、外海には出て行けそうになかった。残念ではあったがゴールドソーサーエリアに上陸して、そこで乗り捨てることにした。
「ちぇ〜〜〜、これであちこち行けると思ったんだけどなあ」
「文句を言ったところで始まらん。ここからはまた歩いて西に向かうぞ」
「歩いて・・・・・・・・って、次のクリスタルの場所までに川が3本もあるみたいなんですけどお」
「川なんか海に比べりゃどってことないだろ?泳いで渡れば済むことだぜ」
「え・・・・・でも・・・・・・・・・・・俺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もしかして、クラウド・・・・・・・・・・。おまえ、泳げないのか??」
「そんなことないですよ!本編ではアンダージュノンで泳いでたでしょ?!ただ、泳いでる時にモンスターに襲われでもしたら大変だろうと」
「本編ではって、ありゃあ自分が元ソルジャーだと信じ込んでた時のことだろうが。そうかそうか。本当のおまえは泳げないんだな。うんうん。別に恥ずかしがらなくてもいいんだぞ。正直に言っておかないと、あとで困るのはおまえだからな」
「うっ・・・・・・・・・・・」
「クラウドをいじめて喜んでいるところに水をさすようですまないがな、ザックス。オレもできることなら泳いでは渡りたくないのだが」
「なんだよ、セフィロス。あんたまで泳げないなんて言い出すんじゃないだろうな」
「この恰好では泳ぎにくい。水中でモンスターに襲われるのは確かにつらいな」
「脱げばいいじゃんか。荷物は頭にでものっけてさ」
「悪いが、オレにはプレーヤーサービスをする趣味はない」
「あー、もう、わかったよ!そんならゴールドソーサーに寄ってくか。あそこの知り合いに頼んで、なんか乗り物を調達してもらうよ」
「ゴールドソーサーか・・・・・・・・・・・・・・・」
「なんだよ。なんか不満でもあるのか?」
「今のうちにクギを刺しておくが、遊びに行くんじゃないんだからな」



×××



 ザックスはチケット売り場を無視、それでも入り口の係員に見とがめられることもなく、ゆうゆうとゴールドソーサーに入って行った。
「おい、ザックス。チケットを買わずに中に入ったりしていいのか?」
「チケットならあるぜ。ほれ」
ザックスはポケットから、なくさない限り一生有効なゴールドソーサーのパスポート、ゴールドチケットを出した。
「なんでそんなものを持っている・・・・・・・・・・・・・。それはともかく、入り口でそれを見せたか?」
「ん〜〜〜、へーきへーき。ここの従業員、みんな俺の顔を知ってっからさ」
「おまえ、ミッドガルに来る前は、ここにいりびたっていたのか」
「そんなことないぜ。コスタ・デル・ソルにナンパに行ったりウータイに酒飲みに行ったりもしてたよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それはともかく、この腰縄はなんだよ。うっとおしいったらありゃしねー」
ザックスの腰にはいつのまにかロープがつながれ、その先をセフィロスが握っていた。
「こうでもしておかないと、この風船野郎はどこに行くかわからんからな」
「・・・・・・・・・・・・信用ないんだな、俺」
「あると思うか?」
今は金欠のため遊ぼうにも遊べないのだが、反論してもどうせエネルギーのムダだからと、ザックスはそれ以上文句を言うのをやめた。そして、チョコボスクエアの方へと歩いて行った。
「おい、どこへ行くつもりだ?おまえやっぱり」
「乗り物調達だろう?だから行くんだよ。ここには黄金のチョコボこそいないけど、川チョコボくらいならいるからさ。そいつを借りていこうぜ」



×××



 チョコボスクエアは今日も一攫千金を狙うギャンブラーたちでにぎわっていた。ザックスもオッズ表の方が気になってそっちに足が向きそうだったが、セフィロスがロープをひっぱるのでしかたなく目当ての人物を探した。
 見た目が変なその女性は、すぐに見つかった。
「やあ、エスト。ひさしぶり〜〜〜〜」
「あら、ザックス。今日はどうしたの。ステキな人につながれて。もしかして借金取り?」
「・・・・・・・・・・・・そんなんじゃねーよ。ちょっと頼みがあるんだけどさ。川チョコボを貸してくれないか?多少よぼよぼでも、川越えができりゃいいからさ」
「川チョコボ?・・・・・・・・・・う〜〜〜ん、今は全部出払ってるのよ。ちょうどミッドガルで山・川チョコボ特別レースを開催してるから、みんなあっちに行ってるの」
「特別レース?!しまった、何もこんなときにミッドガルを出なくてもよか・・・・・・・・・ぐえっ!」
セフィロスが乱暴に腰のロープをひっぱった。ロープが腹にめりこむ。
「げほん!・・・・・・となると、どうするか・・・・・・・・・・・・・。やっぱり泳ぎかな・・・・・・・・・・・・・・」
「はっはっは。話は聞いたぞ、少年!」
うしろから突然ダミ声が飛んできた。ザックスはぎくっとしてふりかえった。
「お、ディオ・・・・・・・ちゃん。いたの」
ザックスはこのゴールドソーサー園長が苦手だった。園長は『ちゃん』付けで呼ばないと怒るのだが、そんな呼び方、かわいい女の子にしかしたくないのである。
「川を越えたいのだな、少年。ならば、私のバギーを貸してやってもいいぞ」
「ほんとか?助かるよ。・・・・・・・だけど、どうせ条件があるんだろ?またバトルスクエアか?」
「はっはっは。それではあたりまえすぎてつまらないではないか。ここはチョコボスクエア。チョコボレースで勝負、というのはどうだね、少年?」
ザックスはにやりと笑った。
「おお、いいぜ。あとでやっぱりバトル会場にほおりこむんだったと後悔しても知らねーからな」
「はっはっは。誰がギャンブル勝負をしようと言ったかね、少年?君の勇名は私も聞いておるぞ。そこでだ。レーサーとして勝負してもらおうではないか」
「レー・・・・・・・・・サー??」
「今日の最終レースに出場して優勝したら、バギーを無利子無期限無催促で貸してやろう。どうだね、少年?」
「ふむ。それはいいな。がんばってこい、ザックス」
「ザックス先輩、今はあなたが主役なんですから。なんとかしてくださいね」
「大丈夫よ。ジョーもトウホウフハイといっしょにミッドガルに行ってるし、そんなに強いチョコボはでないわよ。私がなるべくいいチョコボを選んであげるからね」
「お、おい!」



×××



 最終レースの時間になった。
 ザックスもパドックに入り、エストご推薦のチョコボに乗った。ただ乗るだけなら何の問題もなく乗りこなせるのだが、レースとなると勝たなければならない。ザックスはチョコボの首をなで、頼むから勝ってくれよ〜〜〜、と懇願した。その悲壮感を知ってか知らずか、チョコボは機嫌よくクエクエ鳴くばかりだった。
 そしてゲートに入り、各鳥いっせいにスタート!
 さすがは最終レース、いくらジョー・トウホウフハイの最強コンビはいないと言っても強いチョコボばかりだ。ギャンブラーとしてはその勝率ゆえにスタッフから恐れられているくらいのザックスも、レーサーの経験値は0。他のレーサーたちにいいように遊ばれている。抜いたと思えばすぐに抜き返され、また抜き返そうとスピードをあげればスタミナが切れて足が重くなる。ビリ争いをしているうちに、あっと言う間にゴールが見えてきてしまった。
「くっそ〜〜〜、こんなことなら主人公になんかなるんじゃなかった〜〜〜〜!またセフィロスにバカにされる〜〜〜〜〜〜!!」
 あまりの情けなさに涙が出そうになりながら叫んだその時。
 ザックスがポケットに入れっぱなしにしていた『水のクリスタル』に異変が起こった。スタミナ切れでヨロヨロになっているチョコボの危機を察知し、そのパワーを分け与えたのである。
「クエ〜〜〜〜〜〜ッ!」
スタミナ全開、パワーアップ!!
 クリスタルの力をもらったチョコボは生まれ変わったように見違えるすばらしい走りを見せ、次から次へと他のチョコボをごぼう抜き!そしてゴール寸前で最後のチョコボも抜き去り、みごと一位でゴールイン!
 最終レースで優勝を飾ったザックスは、るんるん気分で観客席に戻ってきた。
「やあ、諸君。俺さまのすんばらしい走りをしっかりと見ていたかね?いやあ、俺ってギャンブラーだけじゃなくてレーサーの才能もあったんだなあ。知らなかったぜ。う〜〜〜ん、すばらしすぎる。天才って言葉は俺のためにあるようなものだなあ。はっはっは」
 すっかり有頂天になっているザックスを、セフィロスとクラウドはあきれかえって見ていた。観客席からレースを見守っていた彼らは、この勝利がクリスタルのおかげだということにしっかり気づいていたのである。しかし、勝ちは勝ち。これでバギーが手に入るのだから、黙っていた。
「はっはっは。確かにすばらしかったぞ、少年。それでは、約束だ。バギーを貸してやろう。大事に使ってくれたまえよ。バギー置き場にはエストに案内してもらってくれたまえ。では」
 そしてディオちゃんはのっしのっしとどこかに去って行った。意識してではなかったとはいえインチキをしたことに、幸い気づかなかったようだった。
「バギーはこっちよ。ついてきて。−−−−ねえ、ザックス。今回は運よく勝てたけど、レーサーってのはシビアな商売なんだから。これに気をよくしてレーサーに転向しようなんて考えないほうがいいわよ」
「もしかして、遠回しに勧誘してんのか?悪いけど、やめとくよ。レーサーになったりしたら賭ができなくなるじゃんか」
 そうではなく、エストは本気で止めようとしていたのである。さすがは有能なマネージャー、何かあったらしいことに気づいていたのだ。しかしそこは武士の情け、本当のことは黙っていた。
 知らぬはザックスばかりなり。




×××××





(ぴっぴっぴ・・・・・・・・ぷるるる)
『もしもし・・・・・・・・。あ、ザックス?今日はずいぶんゴキゲンね』
「ふっ、俺、また新たな才能に目覚めちゃったんだなあ、これが」
『な〜〜に?何があったの?』
「話せば長くなるからさ、帰ったら話して聞かせてやるよ。あ、それよりセーブ頼むぜ。今、ゴールドソーサーの外にいるんだ」
『ふ〜〜〜ん。何があったのか知らないけど、楽しみにしてるね』
                    −−−−−−−−−−セーブ完了。




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