Home NovelTop Back


ザックスの冒険〜黄金のチョコボ伝説〜

DUNGEON5・湿地帯




 ミッドガルの外はいい天気だった。冗談はよせと言いたくなるくらいいい天気だった。
 さんさんと降り注ぐ太陽の光をあび、ザックスはうれしそうに平原の中をどんどん歩いていった。どんなに夜遊び慣れしたシティボーイをきどってみたところでしょせん田舎者、久しぶりに吸う自然の空気にすっかり浮かれていたのである。
 そんなザックスのことはほっといて、セフィロスは手近な岩に腰をかけると、クラウドに宝の地図を広げさせた。
「この大陸にあるクリスタルはひとつだけらしいな。となると、そこから始めるのが妥当か」
「ジュノンのあたりですね。そこに行くにはミスリル鉱山を抜けることになりますが、最近そのあたりにヘビのような巨大モンスターが出るようになったみたいですよ」
「モンスターか。少々面倒だな・・・・・・・・・・・・・・・」
などとふたりで計画を練っていると、ザックスがばたばたと引き返してきた。
「ふたりとも、こんなとこでナニをのんびりしてんだよ!休憩するにはまだ早い!さっさと行こーぜ!!」
「さっさと行くはいいが、おまえ、どこに行こうとしていたんだ、ザックス?」
「うっ・・・・・・・・・・・」ザックスは言葉につまった。「え・・・・・・・・・と、その、チョコボ牧場!」
「我々が探しているのは伝説のチョコボなんだろう?普通のチョコボなんかを見物に行ってどうする。そんなヌケたことを言ってないで、湿地帯に出るモンスター対策でも考えろ」
「あー、もう、だからさあ」ザックスの口調がいきなり自信たっぷりになった。「モンスターをかわすには、足の早いチョコボに乗るのが一番!普通の乗用チョコボでも、十分役にたつぜ。そこでチョコボを買うか借りるかしてさ」
「ごまかしにしてはいい考えだな。では、そうするか」
「ごまかしにしては、ってなんだよ!俺はちゃんと考えてだな」
「ごまかしだろうが。それこそごまかしは通用せんぞ」
ザックスは再び言葉につまった。



×××



 チョコボ牧場の柵の中では、何羽ものチョコボがゆうゆうと歩いていた。ザックスはその姿を幸せそうにながめていた。女の子の次にチョコボレースが好きな彼は、チョコボを見ているだけでなんとなく楽しい気分になれるのである。
 そんなザックスの頭を、誰かがうしろからどついた。誰かって、どうせセフィロスしかそんなことをするのはいないが。
「いってーな、なにするんだよ!」
「こんなところでほうけてないで、さっさと来い。小屋にいる飼育係に話をつける」
「ただ眺めてたのと違うってーのに。やっぱしいいチョコボを選んでさ」
「レース用じゃないんだ。健康で若いチョコボならどれでもかまわん」
 チョコボ小屋に行ってみたが、飼育係らしき姿はなかった。
「飼育係って・・・・・・・・いねえじゃんか。ガキがふたりいるだけだぜ」
「おじさん、どこ見てるんだよ。飼育係ならここにいるよ」
男の子がそう言いながら彼らの方に近づいてきた。
「ぼくはグリングリン。あっちは妹のクリン。パパとママが死んでからは、ぼくらがチョコボの世話をしてるんだ。で、おじさん、何の用?」
「おじ・・・・・・・・。さっきからおじさんおじさんって、おにーさんとくらい言えんのか!?」
「おまえは黙っていろ。話がややこしくなる」セフィロスが割り込んだ。「すまないね、君。表のチョコボを見せてもらったが、ちゃんと世話がゆきとどいているようだね。まだ小さいのに、立派なものだ。それで、話というのは、チョコボを3羽ゆずってもらいたいのだが」
「う〜ん、おにいさん、運が悪かったね。あのチョコボ、全部あずかりもので、売ったり貸したりはできないんだよ。ごめんね。その代わりといったらなんだけど、『チョコボよせ』のマテリアならあるよ。これがあれば、このあたりに住んでる野性のチョコボが捕まえられるよ。2000ギルなんだけど、どう?手間はかかるけど、長い目でみればお買い得だよ」
「そうだな。ではそれを」
「いらん!!」
今度はザックスが口をはさんだ。
「どうした、ザックス?ゆずってもらえるチョコボがないのならしかたが」
「なんで俺がおじさんであんたがおにーさんなんだよ!あんたの方が俺より年上じゃねーか!」
「・・・・・・・・子供か、おまえは。そんな言葉のアヤに怒ってどうする」
「とにかく、いらねーって言ったらいらねーんだよ!行くぜ、セフィロス!モンスターの1匹や2匹こわがってたらソルジャーなんかやってらんねーぜ!!ヘビだろうがタコだろうがなんでも出てきやがれってんだ!!」
そう吐き捨てて、ザックスはさっさと小屋から出ていってしまった。
「すまないな、グリングリン君。あいつのことは私に免じて許してやってくれ。それで、せっかくだからマテリアはゆずってもらおうか」
そう言いながらセフィロスはサイフを探した。が、どこにも、ない。
「あのバカ・・・・・・・もしや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「やられましたね、セフィロス隊長。あの人、『ぬすむ』のマテリアを標準装備してるんですよ」
クラウドが気の毒そうにそう言った。



×××



 ザックスはどんどんミスリルマインの方に歩いて行った。
 やがて目の前に、広大な湿地帯が広がった。葦の葉が風に揺らいでいるが、その中に、風のせいとはあきらかに違うさざ波がのたくっている。噂のモンスターがそこでうごめいているのだろう。その動きはとても早く、確かに人間の足では逃げきることは無理なようだ。
 そんなことはかまわずに、ザックスは湿地帯へと足を踏み入れた。クラウドもそれに続こうとした。が、それをセフィロスが止めた。
「いいからほっとけ、クラウド」
「でも・・・・・・・・・。先輩をひとりで行かせていいんですか?」
「かまわん。あれだけデカい口を叩いたんだ。ひとりでなんとかしてもらおう」
 そう言っている間に、モンスターは湿原に入り込んできた獲物の気配を感じ取ったようだった。奇妙な葦の動きが一瞬止まったかと思うと、ザックスに向かって一直線に突き進んできた。
 その動きはザックスの前でぴたりと止まり、モンスターがざばっとその姿を現した。
 ヘビに似たそのモンスターは、とてつもなくでかいバケモノだった。ザックスの身長のいったい何倍あるのだろうか。彼のはるか頭上で、赤い舌がチロチロしている。
「げ・・・・・・・こいつ、マジででかいじゃんか・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
さすがのザックスも一瞬ビビった。が、すぐに気を取り直し、バスターソードをかまえた。そして、2度3度と斬りつけた。
 しかし、中途半端な攻撃はモンスターを怒らせただけのようだった。モンスターは悠然と鎌首をもたげ、いきなりベータ攻撃!
「セ、セフィロス隊長、ザックス先輩、やられちゃったみたいですよ〜〜〜〜〜!!!」
「あいつもこの程度か。もう少しくらいねばると思ったんだが」
「そんなノンキなこと言ってていいんですか??早く助けにいかないと食べられちゃいますよ!」
「ふむ。それもいいかもな。世の中が少し平和になる」
「こんな時に冗談はやめてください〜〜〜!」
「オレはいつでも本気だぞ。・・・・・・・・・しかし、ほおっておいてここで全滅ってのもごめんだな。セーブデータ、ミッドガルを出たところのしかないんだ。あそこからやり直して、またチョコボ牧場の子供のケンカを見せられるのはかなわん」
セフィロスはおもむろに立ち上がった。
「オレがモンスターの注意を引きつける。そのすきにおまえはあいつを拾って向こう側に逃げろ」
「だ、だいじょうぶですか??ひとりで?」
「オレをあのバカといっしょにするな」
 セフィロスは湿地帯へと入って行った。モンスターの目が彼の方を向く。
 セフィロスの合図と同時に、クラウドはザックスの方へと走り出した。モンスターの注意がそちらに向いたその瞬間、セフィロスの身体が宙に舞った。次の瞬間には、正宗が狙いたがわずミドガルスオルムの脳天をつらぬいていた。



×××



 湿地のミスリルマイン側に渡ったセフィロスを、クラウドは拍手で迎えた。
「さすがはたいちょ〜〜〜〜!かっこよかったです〜〜〜〜!!」
「おだてても何も出ないぞ。ところで、あいつはちゃんと拾ってきたな?」
「はい。あっちの木陰でのびてます」
クラウドが指さした先に、泥まみれでだらしなくころがっているザックスがいた。
「なさけない・・・・・・・。あれが神羅軍の精鋭、ソルジャーか・・・・・・・・・・・・・・」
「あの〜〜、まさか、このままほおっていくってことは・・・・・・・・・・・・」
「したいところだがな。さっきも言っただろう。そんなことをしたら話が進まん」
セフィロスはしかたなく、ザックスにレイズをかけた。
「あ・・・・・・・・あり?モンスターはどこに行った??」
「あれならオレが倒した。ここにはもう用はない。さっさと行くぞ」
「倒したあ??いつの間に??主役は俺なのに、ずるい〜〜!!」
「そんなセリフはあのバケモノとせめて互角に戦ってから言え!戦闘不能だけは回復してやったんだから、あとの面倒は自分で見ろよ。それから、セーブを忘れるな。セーブしないうちにまたなにか問題を起こしても、今度はもう助けてやらんぞ!」




×××××




(ぴっぴっぴ・・・・・・・・ぷるるる)
『もしもし。あ、ザックス。今どこ?』
「・・・・・・・・ミスリルマインを抜けたとこ。今からジュノンに行くよ」
『どしたの、元気ないね。何かあった?』
「いや、別に、なんでも。とにかく、セーブ頼むよ」
『うん、わかった。あんまり無理しないでね』
                    −−−−−−−−−−セーブ完了。




Home NovelTop Next