Home NovelTop



作戦完了!・1




 9年前−−−−−ジュノン。
 ウータイとの長い戦争は、終わる気配はまだまだなかった。
 しかし、その頃の戦況は圧倒的に神羅優勢。ウータイにほど近い地方以外は、いたって平和だった。
 一時は最前線となり、大陸の最終防衛ラインとして街全体が武装化されたジュノンの街にも、のんびりとした時間が過ぎていた。
 そして、そこにいちおう駐屯する兵士達にも。
 ジュノン軍・兵士宿舎。その一室に大勢の兵士たちが集まって、何やら深刻そうに話をしていた。しかし、平和な街のぺーぺー兵士が、はるか離れた最前線のことを考えているはずがなかった。彼らの悩みなんてものは。
「さあ、もういないか?そろそろ締め切るぜ」
「俺はやっぱり、今回はおまえの予想には乗らないよ。だけど、買い出しだけは頼む。2−5に2000ギルだ」
「なにい?本当にいいのか?ま、それでも1パーセントは買い出し手数料としていただくから、俺は別にいいんだけどさあ」
「なあ、本当に大丈夫なんだろうな?オレ、これで失敗したら文無しなんだよ」
「大丈夫だって。はずれたら半分は俺が持つって言ってるだろ?今回は絶対に勝つ自信があるから、そう言っているんだ」
「・・・・・・・・じゃ、頼むよ。1000ギル」
「OK。じゃ、俺の予想どおり1−5で勝ったらもうけの15パーセントは俺の取り分だ。いいな?」
「あ〜〜〜〜〜、やっぱり、おれの分も買ってきてくれ!1−5に1500ギル!」
「まいどありい!じゃ、これで締め切るぜ。では、部隊の諸君、俺はこれから場外チョコボ券売り場襲撃作戦を」
「・・・・・・・・・・敢行できると思うのかね、ザックス君?」
低い声に、ギルを数えるザックスの手が止まった。彼がおそるおそる後ろを振り向くと、ドアのところで上官が彼をにらんでいた。
「あははは〜〜〜〜〜、これは軍曹。どうです、あなたも一口」
「では、私は・・・・・って、のるわけがないだろうが!ギャンブルは禁止だと何度言ったらわかる!こちゃ来〜〜〜い!!」
「軍曹、掛け金の没収だけはかんべんしてください〜〜!レースでスッたのならあきらめがつきますが〜〜〜〜〜〜〜」
「・・・・・・今回は、かんべんしてやる」
「ほ、ほんとですか?ありがとうございます〜〜〜!」
「隊長がおまえをお呼びだからな。報告はちゃんとしておくから、そちらでしぼられてこい」
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・」

×

 ジュノン駐屯部隊長の部屋の前で、ザックスはたっぷり5分はつったっていた。
 こうやって呼び出しをくらうのは何度目かな〜〜〜、とのんきなことを考えながら、このあと飛んでくるに違いない怒鳴り声をかわすか真正面から受け止めるか、作戦を練った。
 そして腹づもりができると、いつまでもこうしていてもしょうがないから行きますか、と彼はドアをノックした。
「隊長、ザックス、出頭しました」
「入れ」
「・・・・・・・・失礼します」
中に入ると、彼はできるだけしおらしい表情を作ってうつむいた。
「どうした、元気がないな」
「隊長はご機嫌よさそうで。・・・・・・ということは、もしかして、叱責のために自分を呼び出したのではないのですか?」
「なんだ、また叱責を受けなければならないようなことをしていたのか?」
「いえいえ、とんでもありません!」
しまった、ヤブへびか??あせるザックスを、隊長は意味ありげな笑みを浮かべて見つめた。
「その話はあとにしよう。とりあえず、本社からの命令を伝える。おまえの異動が決まった。2週間後だ」
「異動、ですか。隊長の機嫌がいいわけだ・・・・・・。あんまり田舎なところじゃなければいいな・・・・・・・・」
「何を言っている。おまえのために喜んでやっているというのに、喜びがいのないヤツだ。異動先はミッドガルの神羅カンパニー本社・治安維持部だ」
「本社の治安維持部?・・・・・・ってことは・・・・・・・・」
「おめでとう、ザックス。これでおまえもソルジャーへの第一歩を踏み出すことになった」
「やった!・・・・・・・・ほんとですね?ほんとーですよね??」
「信じられないのは私もいっしょだ。おまえみたいな不良兵士があのソルジャー試験に合格するとは・・・・・・・。何度も聞きなおしたから、まちがいない。くわしくは、明日の午前中にジュノン支社の人事部に出頭して確認してこい」
「了解しました!ありがとうございました。では、これで」
と、きびすを返したザックスを、隊長は呼びとめた。
「ザックス、その話はあとにしよう、と言っただろう。まだ話全部は済んでいない」
「はあ?」
「またチョコボレースの元締めをやっていたそうだな」
「あ〜〜〜、本当に報告されていたか・・・・・・・・」
「ソルジャー試験に合格はしたかも知れんが、あと2週間はジュノン軍兵士だからな。軍律には従ってもらう」
「・・・・・・・・・・掛け金の没収は、自分の分だけでかんべんしてください。あとの連中のは・・・・・・・・・・・・・」
「自己犠牲か?同僚思いもけっこうだが」
「いえ、あいつらの分も負けたら自分が半分補填する約束になっているもんで。自分のギルだけで済めばその方が被害が」
「正直なヤツだな・・・・・・・。では、全員分全額没収!」
「わ〜〜〜〜、やめてください〜〜〜!!トイレ掃除でもなんでもやりますから〜〜〜〜!!!」



×××



 それから2年後−−−−−ミッドガル。
 ウータイとの戦いは終盤を迎えていた。その頃ミッドガルの作戦司令部は、嵐の前のひとときの静けさを楽しんでいた。
 ずっと前線の作戦に参加していたザックスも久しぶりに休暇をもらい、ミッドガルに帰っていた。そして、兵士たちが多く出入りする食堂の片隅で、そこでは初めて見る、しかし見覚えのある顔を見つけた。
「あれっ・・・・・・・・・。隊長??ジュノン駐屯部隊の隊長じゃないっすか??」
隊長、と呼ばれた男は、けげんそうに振り向いた。
「あ〜〜〜〜、やっぱりそうだ!俺のこと、覚えてませんか?以前、お世話になった」
「おまえ・・・・・・ザックス、か?」
「そうです!いやあ、覚えていてくれたんですね」
「忘れるはずがないだろう。あの当時、私の一番の頭痛のタネだったんだからな。しかし、トイレ掃除係としては非常に有能だったぞ」
「・・・・・・・・忘れられていたほうが、よかったかな・・・・・・・・・・・」
ザックスは苦笑いをもらした。
「そんなことを今のおまえに言っては失礼にあたるな。おまえ・・・・・・・いや、君は正式にソルジャーになったんだろう?瞳の色が、変わっている」
もともとは黒いザックスの瞳は、ソルジャーにしては暗い色だった。それでもやはり、ソルジャー特有の神秘的な青みがかった光を放っていた。
「はあ、なんとか。1年間の訓練期間中に三くだり半をつきつけられることもなく、無事ソルジャーの辞令をもらいましたよ。3ヶ月前には、2NDに昇格しました」
「2ND??試験に合格したのは2年前だったはず」
「運がよかったんですかねえ。ソルジャーになってすぐ、大きな作戦が続きまして」
「だからって・・・・・。よほど軍功をあげないと一年もたたないうちに昇格は・・・・。いや、それはともかく、クラス2NDか・・・・・・」
「たいちょ〜〜〜〜、もしかして、俺をどう呼ぼうか困ってるんですか??」
「2NDともなると、階級が私より上だ。今までどおりの対応では示しがつかないだろう。しかし・・・・・・・・」
「そんなめんどくさいこと、やめましょうよお。俺、別に隊長の直接の上官になったわけじゃないですよ。なのに、いきなりかしこまられても気持ち悪いです」
「そうは言っても、やはり軍隊というのはだな」
「だったら俺、隊長に命令しちゃいますよ。今までどおりにいばれってね」
「おいおい、そんな命令はないだろう」
「とにかく、固い話はヌキね。隊長、メシ、これからなんですか?だったら俺におごらせてください。おとといチョコボレースで大勝ちして、今、ふところがすっごくあったかいんです」
「・・・・・・・・・・おまえ、ソルジャーになっても全然変わらんのだな・・・・・・・・・・・・」
そのことを喜んでいいのか嘆くべきなのか、彼にはわからなかった。


「で、隊長はどうしてミッドガルに?」
パンの最後のひとかけらを口にほおりこみながら、ザックスは訊いた。
「私は今も『隊長』に変わりはないんだが、任地は変わった。現在は、ロケットポートエリア第2補給部隊をまかされている。しかし、近々ウータイに総攻撃をかけるとかで、作戦会議のために呼び出されたんだ」
「今度の作戦で、戦争は終わりますよ。・・・・・・・・・・たぶん、ね」
「ああ。ウータイにはもう戦いを続けるだけの国力がない。今度の攻撃は、降伏を求める示威行為にすぎなくなるだろう」
「たぶん。・・・・・・しかし、実際の戦闘に入ったら、どうなるかはやっぱりわかりませんよ」
「それはもちろんだ。どんな戦いでも、最大の敵は『油断』だからな」
「それだけじゃなくて。・・・・・・相手は、ウータイですからね」
「どういう意味だ?」
「単純に戦力の問題だったら、この戦いはこんなに長びかなかったはずです。しかし、ウータイの戦い方は神羅とは全然違う。ゲリラ的で戦略が読めず、おかげでこちらの攻撃は、戦力こそ圧倒的に優勢だったのにもかかわらず、無駄やすきが多かったせいで苦戦を強いられた。それでもなんとかウータイの同盟勢力をけずった結果、ウータイはほとんど本国だけになり、その本国の人間ももう戦いに疲れている。もはや戦うことの意味を見失ってるんです。だからこそ、神羅に勝機がある。しかし、ウータイの戦い方なら・・・・・・・・・もしほんの一握りでも有能な連中が戦いを捨てていなかったら、まだこの戦況をひっくりかえしかねない、と俺は思ってるんですよ」
「ザックス・・・・・・・・・」隊長は苦笑しながら言った。「おまえの頭の中にはチョコボと女しか入っていない、と今の今まで思っていたぞ」
ザックスは飲もうとしていたコーヒーをのどにつまらせた。そして涙を流してせき込みながら、言った。
「隊長、それはないでしょう。俺、これでも前線で命張って戦ってるんですよ〜〜〜」
 それは十分わかっていた。表情、体格、ちょっとした身のこなし。たった今彼が見せた、戦争に対する冷静かつ適切な分析。そして魔晄の瞳。たんなる一般兵士とは異なる戦いのプロらしい雰囲気と実力を、わずか2年の間にザックスはすっかり身につけていた。
 それでも、ザックスの本質は変わっていない。
 変わらずにいるということ。常識はずれで、人を困らせるのがうまくて、しかし誰からも好かれる明るさ。そんなおちゃめなところをなくさずにいるということ。それはソルジャーである彼にとって、もしかしたらソルジャーの激務以上に難しいことかもしれない。
 だが彼はそれを、あたりまえのこととしてきっと自覚すらしていないだろう。
 その不思議な強さ。
 それが、ザックスがソルジャーになれた理由か。隊長は妙に納得した。
 ソルジャーには、肉体の強靭さ、戦いのセンスはもとより、精神的な強さこそが要求される。ソルジャーの選考基準は最重要機密のためよくは知らないが、その程度のことは聞いていた。
「なんですか、いやにうれしそうに」
「まあ、それより。休暇が終わったらまた大変だな」
「たぶんウータイに戻ることになるんじゃないですかねえ。俺、ソルジャーになってからほとんどあっちにいましたし。決戦の時にはソルジャーの大半が最前線に配置されるとも聞いてます」
「だったら、戦地で会うかも知れんな。私の部隊は、ウータイからは海をはさんですぐのところだからな」
「それよりも、戦争が終わったらまた会いたいですよ。ここまで来たんだ、生きて終戦を迎えてくださいよ」
「お互いにな」



×××



「・・・・・・・・・・ミッドガルで待機、ですか?」
休暇が終わってソルジャー部隊本部に出頭したザックスは、自分の耳を疑った。
「そうだ。もうしばらく、自由にしてもらってかまわない。ただし、いつでも招集に応じられるようミッドガルからは出ないこと、PHSは必ず携行すること。以上の2点は守るように」
「・・・・・・・・・・・・・・了解しました」
文句のひとつも言ってやりたかったが、ザックスは言葉を飲み込んで本部を退出した。
 最後の総攻撃、自分も前線で戦いたいと思っていたし、そうなると信じていた。まだクラス2NDではあるが、十分すぎるほどの功績をあげていると自負していた。
 それなのに、なぜ最後の作戦からはずされる?
「ちくしょう、気に入らね〜〜〜〜〜〜!!!!」
 そう叫ぶと、ザックスはスラム行きの列車に飛び乗った。そこで酒でも飲むか、女をひっかけるかしてうさばらしをするつもりだった。
 それから1週間。
 さまざまな理由で集まっていた兵士達も出兵予定の者はすべてウータイに向けて出発してしまい、一時期にぎやかだったミッドガルはすっかり静かになっていた。もっとも、ずっとスラムにいりびたっていたザックスはそれをニュースで知っただけで、実感はなかったが。
 そして呼び出しがあったのはその翌朝だった。
「・・・・・・・・ちょっと、ザックス、起きてよ」
「ん〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼は寝返りをうっただけで、ふとんをかぶってしまった。
「さっさと起きなさいってば!」
彼女はふとんをはがすと、彼の耳元で怒鳴った。
「なにするんだよ、メイファ!耳が壊れるだろう!!」
ザックスは心臓をばくばくさせながら飛び起きた。
 そこは彼が今つきあっている女性の家だった。この3日ほど、宿舎には帰らず彼女の家に泊まっていた。
「耳が壊れそうなのはこっちの方よ。さっきからPHSが鳴っててうるさいったら。それでもあなた、全然目を覚まさないんだもの。さっさと出たほうがいいんじゃない?」
言われてみれば、そのとおり。
 ザックスは半分ねぼけたままPHSに応答した。
『遅い!!』
メイファ以上の大きい声に、ザックスの眠気が一度にふっとんだ。
『0900時までにソルジャー部隊指令室に出頭しろ。いいか、遅刻は許さんぞ』
命令を復唱すると、そのまま通信は切れた。
「何?やっぱり軍からだったの?」
「ああ。9時までに出てこい、と。今何時だ?」
「7時半」
「こいつはシャワーを浴びている時間もないな・・・・・・。すぐ出ないと。ごめんな、世話になりっぱなしになっちまって」
「ま、いつものことだけどね・・・・・・・・」彼女はあきらめ顔で答えた。「いいわ、しかたのないことなのもわかってるから。だけど、今度の非番には、何かおいしいものを食べに連れていってよ。もちろん、おごりでね」
「そうする」
 急いで着替えを済ませ、あわただしく彼女にキスすると、ザックスは彼女の家を後にした。

×

 かろうじて時間前に指令室に出頭すると、治安維持部304号会議室に行けと言われた。
 ほとんど最低限の人員を残すだけになった治安維持部は静かだった。今さらどうして呼び出されたのか・・・・・・ザックスには見当がつかなかった。
 会議室のドアを開けた時、なおのことなぜ自分がそこにいるのかわからなくなった。そこには十数人の男たちが集まっていた。そして一番奥の席には−−−−。
 セフィロスがいた。
 彼だけではない。そこにいる男たちの少なくとも半分はクラス1STのソルジャーだった。あとの顔に見覚えのない者も、雰囲気からしてやはり1STに間違いないだろう。
「遅かったな」
セフィロスが、大きくはないがよく通る声で言った。
「は。すいません・・・・・・・」
「まあいい。まだ指定時刻前だ。さっさとそこに座れ」
 ザックスはひとつだけ空いていた椅子に腰掛けた。
「さて」全員の顔を一通り見渡すと、セフィロスはおもむろに語りだした。「明日1700時、ウータイへの侵攻作戦が開始される。それは全員が了解しているとおりだ。しかし今、ここに諸君に集まってもらった理由は、この中の3名しか知らない。極秘指令のため、表向きは待機、または近隣都市の警備命令を下しておいた。これからその作戦について説明する」
 それは、神羅側に潜入している可能性のあるウータイ戦士の追跡だった。何人かの忍者の行方がわからないこと、ウータイに一部不穏な動きがあることをセフィロスは説明した。
「それで、ウータイ忍者が潜入するとしたらどこだと思う、ザックス?」
セフィロスは唐突にザックスを指名した。彼は重ねて驚きながらも、つとめて冷静に質問に答えた。
「ミッドガル、またはジュノンでしょう」
「なぜそう思う?」
「ミッドガルは言わずと知れた神羅の本拠地。そしてジュノンは、神羅の支配地域の中で最上の軍備を保有し、軍事的にはミッドガル以上に重要な拠点です。各地の部隊への指示も、直接にはジュノンから出しています。少数の人員で神羅軍の攪乱を狙うには、この2カ所が最適ではないでしょうか。現在、こちら側の兵士の大多数はウータイ近くに配置されていて、警備も少々手薄になっていますし」
「ウータイはこれまで、同じような方法で補給部隊を攻撃してきたが?」
「今回にかぎってはないと思われます。我々が短期決戦のつもりで軍隊を配置しているのは向こうにもわかっているでしょうから」
「正解だ」セフィロスは言った。「今、彼が述べたとおり、ミッドガルまたはジュノンに潜入計画があるか、すでに潜入されている可能性が高い。この2カ所の警備に二人一組であたってもらいたい。念のため、主要補給線2部隊にも一組ずつ配置する。現在所在が確認できていないウータイ戦士の資料を配付する。この場で記憶して、この部屋からは持ち出すな」
 注意事項を述べた後、個々の配置場所が発表された。そしてザックスは、セフィロスともうひとりクラス1STのソルジャーと唯一3人でチームを組んでジュノンに向かうことになった。
「俺が・・・・・・・・セフィロス隊長と、ですか?」
「実質的には、こいつとふたりでだ。オレが動くのはさすがにめだつからな。おまえはこの作戦に参加する唯一のクラス2NDとはいえ、それは失敗の言い訳にはならん。その点を理解した上で慎重に行動しろ。明日0400時、ジュノンに出発する。絶対に遅れるな」
 クラス1STの極秘作戦に俺が参加・・・・・・?
 他のメンバーが三々五々次の行動に移り始めると、ザックスははたと我に返った。そしてすでに部屋から退出していたセフィロスを追った。
「ちょ、ちょっと待ってください、セフィロス隊長!」
「なんだ、まだ質問があるのか」
「あります。・・・・・・・・なんで俺が、この作戦に?」
「おまえは単なるバカじゃないらしいからな」
「はあ?」
「訓練終了後の辞令伝達式に、オレも訓辞のために出席したことは覚えているな」
「はあ」
「その時、おまえはオレのことを評してなんと言った?」
「俺・・・・・・なんか言いましたっけ」
「『あんな美人ならば相当もてるに違いない』とかなんとか」
「あ〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・」
そういえば、そんなことをぼそっと言ったこともあったようななかったような・・・・・・・・・。
「オレの回りにいるのは、オレをやたら恐れるか、意味もなくへつらうか、便利な道具としてしか見ないか、そんなヤツばかりだが。面と向かってではなかったが、初対面でそんな気の抜けることを言ったバカはおまえくらいだ」
「す、すいません、ですが、あの言葉にそれほど深い意味は・・・・・・・・・・」
「まあ、おまえがそういうレベルの問題でオレとはりあおうと考えたのも、わからないでもない。おまえが根っからの女好きだということも了解しているからな。今日も女のところから直行してきたんだろう?」
「ど、どうしてそれを??」
「ふん・・・・・・・・。図星か」
ザックスにはもう、赤くなったらいいのか青くなるべきなのかすらわからなくなっていた。
「その時は、ずいぶん毛色の変わったのが部隊に入ってきたな、と思っただけだが、その後の実績は立派なものだ。ウータイ忍者どものゲリラ攻撃の可能性にも気がついていたようだし」
確かに、話のタネにそんなことをしゃべったりもしていたが、どこで聞きつけてきたんだろう?
「今度の戦いで、戦争は終わるだろう。しかし、これで絶対に終わると言い切れないのはおまえの妄想なんかじゃない。事実だ。だというのに、そのことに気づいたのは上層部でも数人しかいなかった。どこからみてもこちらがわに有利な戦況に惑わされてな。しかしおまえは、たいして情報を持っていないだろうに、正確に状況を分析した。その分析力、観察力は今回の任務に必ず役に立つ」
「はあ・・・・・・・・・・」
「納得したか?」
「は、はい」
「だったら、さっさと宿舎に帰って準備をしろ。今日のところは不問に付すが、明日、酒や女のにおいをさせて来たらはりたおすぞ」




Home NovelTop Next