小説

「FTC―1の着艦を確認」
 微細なゆれとともに女性オペレータが声を放つ。
「了解。ご苦労様」
 そう言うと、ラナは軽くオペレータの方を叩いた。
 と、すぐそばで椅子から立ち上がる音が聞こえた。
「どれ、様子を見てこよう」
 ドクはそのままラナの後方にある扉の向こうへと歩いていった。
「気にしてるのは、みんなの様子かアレのほうか、どっちでしょうね?」
 オペレータに向かってラナはつぶやく。
「博士の場合、後者のほうが……」
「やっぱり? でもわかってても本人には言っちゃダメよ」
 ラナのほうを向き律儀に答えたオペレータを茶化すように、ラナは少し笑った。
「さて、それじゃあ仕事あがる前にもう一仕事お願いするよ?」
「先ほどの反応、ですね」
 ラナはうなずく。それをみたオペレータは再び目の前のディスプレイに向き直り、操作卓を叩き始めた。
「二つの反応はしばらくの間衝突しあい、片方は海に落ちました。もう片方はそのまま南方へ飛び去ったようですが、途中で反応は追えなくなりましたのでかなり遠くまでいってしまったようです」
 目の前の空間に現れたヘッドアップディスプレイに移された地図。右端に記された時間経過とともに、小さな丸印が二つ、くねくねと動き回っている。
「衝突って、音速超過で近接戦闘でもしてたってわけ?」
「この反応からすると、ドックファイトというよりDA同士の本当の近接戦闘の色合いがつよそうです」
 それを聞き、ラナは小さくため息をついた。
「航空戦闘のできるDAが二機か……これは面白そうだわ」
 そういうと、一歩引いてそのままくるっと一回転。そしてどさっという音とともに後方にあった椅子に綺麗に納まった。
「よし決定。そいつの残骸でもなんでもいいわ、引き上げちゃいましょ」
「あ、あっさり決めちゃっていいんですか?」
 ラナから向かって右方向にいる、別の男性オペレータが抗議の声をあげる。
「まあ、現行での指揮官私だしね。こういうときに決定権行使行使」
「決定権て……」
 呆れ顔のオペレータ。だが、ラナは少しうつむいて続けた。
「何かしらの成果がないと、犠牲だしたままじゃ気がすまないのよ」
 背もたれに身を預け天を仰ぐラナを、周囲のオペレータたちは静かに見た。
「そうですね……でも、万が一水中にもぐってるだけで、こちらを襲撃してくるようなことがないとも……」
「海中に熱源反応」
 男性オペレータの台詞をさえぎるように先ほどの彼女の声が部屋に響いた。
「さっきのDA?」
「いえ、これは……人間サイズです。でもこの速度は魚雷並ですよ」
 ラナはいぶかしげな表情になる。
「並ってことは魚雷ではないわけね」
「はい。向かってくると同時に救難信号をだしていますので」
 オペレータの声は落ち着いてはいるが、それが異質なものであることには間違いない。
「通信とかできそう? こちらからモニターできれば最高なんだけど」
「通信には反応なし。モニターも厳しいですね、こんな時間ですし照明もなしでは……」
 ラナが対応を考えあぐねていると、目の前にFHHDが現れた。オペレータが気を利かせて現在位置を表示させてくれたようだった。
 画面中央に位置する大きな船体の周りを、囲むように対象は移動している。
「乗り込もうとしてるのかな」
「そのようです。この様子なら今からでも迎撃もできますが」
 その台詞が終わると同時、別の女性オペレータの席から小さな警報が鳴った。
「ラナ様、『姫』が」
「どうしたん?」
 顔だけそちらを向ける。オペレータの手は高速で操作卓の上を滑っていく。
「反応しています。おそらくはそれに、だと思われますが」
 ラナは眉をひそめる。
「十二番ハッチを開きたいようです。招き入れるつもりでしょうか?」
「ふむー何を読み取ったやら」
 ふう、と小さくため息を付いた後、口を開く。
「んむ、三分後に十二番ハッチ開放。手の開いている兵は火器装備で集合かけなさい。私も出るわ」
「外で撃たないのですか?」
 男性オペレータの問いに対し、ラナは静かな微笑みで返した。
「話くらいは聞いてあげましょう。何か得られるかもしれないし。さっきの反応について知れるのならベターだわ。もっとも、意思疎通できる相手かどうかもわかんないわけだけど」
 言っている事は怖いことではあるが、それに反して彼女の声は少し楽しそうだった。
 それを聞くと、彼はそそくさと操作卓に向きなおる。異論は無いらしい。
「了解しました。注水を開始します」
「念のためにガイドを出してあげなさい。暗くて見えないだろうしね」
 椅子にかけていたロングコートをつかむと、振り上げ着込む。なびく裾はそのまま椅子の後方にある金属製のドアへと流れていった。
 音もなく開くドアを、しかしオペレータたちは見ない。想定外の仕事をも、彼らは着々とこなし始めた。

         ●

 艦艇に備えられた水中艇発着用のスペース。走り回れるくらいの広さのあるその一角、海水で満たされたプールのような空間の縁にあたる部分に、人垣ができている。その中心で、ラナは呆然とそれを見ていた。
 それもそうだ。深海を高速で突き進んできたのが何かと思えば、本当に人間だったのだから。
 しかし語弊もある。確かに人間ではあったが、一人は下半身に足がない。
 うろここそ無いものの、末端に大きなひれを携えたそれはさながら魚。人魚族によく見られる形態だった。確かにそれならあの速度も出せなくは無いだろう。
 ただ、可能と限界とはわけが違う。少なくとも、一般の人魚があの速度の圧力に長時間耐えられるとは到底思えない。
「感謝します」
 そのひれを携えた、腰まであるであろう長い金髪の少女が口を開いた。下半身を横に流すように座り込み、ラナを見上げるそのエメラルド色の瞳には強い光がある。
「ああ、いえいえ」
 彼女の一言で我に帰ったラナは、平然とした表情に変える。何もその程度のことに驚いている場合ではないだろう。
 呼び寄せておいた兵たちが一斉に火器を構えなおした。
 人魚の姿をした彼女の隣に寝かせられたもう一人の銀髪の青年。意識を失っているようだが、着ている服は間違いなくザフュセル帝国軍の軍服であったのだから。
「唐突で驚かれているかもしれませんが時間がありません。この艦の救護施設を貸してください」
 急かすように人魚の少女は言う。
「その前に、あなた達の所属を答えてもらうわ。場合によっては別の対応をとらなければいけないかもしれないし」
 至極真っ当ではあるが、ラナはその台詞を吐いた。
「所属は……いまはしていません。先ほど帝国軍から抜け出してきたので」
「それを裏付ける証拠はあるかしら?」
 確信が得られるまで容赦はしない。相手の事情など、こちらは知ったことではないのだから。
 だが彼女は首を横に振った。
「そう。まあ、こういうことを聞くのは見ての通り、この船は一般の輸送船や客船の類じゃないのはわかるわよね? そういうわけで、生半可な対応も処置もできないんだけどそういうのはわかってて入ってきたわけ?」
「このあたりに船はありませんでしたし、彼を死なせるわけにはいかないんです! 選択肢なんか……」
 悲痛な顔で彼女は訴えた。
 ラナは苦笑する。周りは彼女の後ろで眠るように倒れている青年を見てしっかり指が引き金にかかっている。
 荒事は避けたい、とラナは思っているが、その反面この相手が本当に弱っているのかどうか、助けるべきなのか判断する要因が少ない。
 思い当たる節があるのだ。もし、この二人が先ほど自分の部下とぶつかり合ったものたちと同質だとしたら。
「この海域にいた理由としては、やっぱしさっき墜落した機体に関係あると見て間違いないかしら」
 つぶやくようにラナが言うと、目の前の彼女は驚いたように目を見開いた。
「…………」
 無言。だが反応はあった。自分達がこの海にいた理由を彼女は話していない。この反応は、判断材料のひとつとしては大きかった。もし、先ほどの機体が迷彩処理で姿を隠して近づいてきたつもりでおり、先ほどの衝突らしき行為も何らかの演技だったとしたら、果たして今のような反応をとったかどうか。
 だが、これだけでは押しの一手にはまだ遠い。
 腕を組み、彼女を見据える。
 と、後方からざわめきが聞こえてきた。
「なんだなんだぁ、この騒ぎは」
 人垣を掻き分けて、金髪を逆立てた大男が割り込んでくる。
「ジェストール、あんたもう検査おわったの?」
 肩越しに振り向いてラナは声をかける。彼はにっと笑った。
「あいつの検査長過ぎんだよ。他の奴先にしてもらって自分は後回し」
「あんたねえ……」
 ラナは繭をよせ眉間に指先を当てる。
「で、そいつらはなんだ」
 言うなり、空気が変わった。ジェストールと呼ばれた男は身構え、少女に向かって気迫を叩きつける。
「敵か」
 その一言で周囲の兵たちの顔つきが変わった。
 場の雰囲気でおろされかけた火器が再度構えなおされ、視線が一点に集う。
 だが、変わったは一同だけではなかった。
 人魚の下半身が突如流動し、表層がのたうつ。中心から裂けるように二つにわかれ、溶けるように組成が組み変わり、それは一瞬のうちに一対の足を形成した。
 ざわめきが一瞬で広がる。
「変身(トランス)能力……」
 ラナの呟きをよそに、彼女もまた、身構える。姿勢を低く保ったまま、しかしすぐに飛び出せる体勢だ。
「これ以上……」
 いつの間にやら一触即発の場が作られている。だがどちらも動き出さない。
 その唐突な重い空気を、少女の続けるべき台詞を、だが強烈な打撃音が突き破った。
 動いたのは、少女の前の漆黒のコートだ。
 少女のほうに意識を向けていた一同は、ラナの動きをまったく捉えることができなかった。
 流れるような速度で打ち出された右フックは吸い込まれるようにジェストールの顔面に突き刺ったのだ。
「勝手にわめくな馬鹿。誰が噛み付けといったのよ」
 たった一撃で後ろの数人を押し倒すくらいに吹っ飛んでいったジェストールに対しラナは容赦なく叱責する。すぐさまラナは構えた少女に向き直った。
「ごめんなさいね、部下が失礼をしたわ」
 そういって、ラナは彼女に近づいていく。構えは解かないが、その目はいまだ疑惑に満ちていた。剣呑な気を放ってはいるが、ラナはそれをものともしていない。
「ここで争うのはどのみちどちらにとっても得策じゃない。そこの彼がこれ以上の被害を受けるのは、あなたの望むところではないでしょう?」
 やさしく説くようにそういって、彼女は手を振り上げる。その合図を機に、一同は火器を下げた。いまだその目には戦いの意思が残っているが、上司の命令は絶対であるらしい。
 それをみて、彼女も少しずつ力を抜いたようになる。
「よろしい。ただ、こちらとしても敵味方の確証の取れない人間を素直に引き入れるのは抵抗のあるものが多いわ。ここは一つ、私と取引してもらえるかしら?」
「取引?」
「もし本当に、あなた達が軍を抜けてきたというのなら、あなた達の知ってることを他の人間に教えてしまうのは別に問題ではないでしょう?」
 そこまで言って、少女は意味を汲み取ったらしい。一瞬ためらうようなそぶりをしたが、ちらと後ろを見て、すぐにラナに向き直った。
「わかりました。こちらも四の五の言っていられませんし、その条件を受け入れます」
「上出来よ」
 にっこりと微笑むと、後ろに振り返る。
「誰か、そこに寝てる彼を医務室へ。客人に粗相のないよう、丁重に扱いなさい」
 人垣の中から二人ほど前へ出てきた。近くの数人に火器を渡し、青年に駆け寄って担ぎ上げる。
 それを満足そうに眺めるラナ。運ばれていく青年に、少女はついていこうと立ち上がった。しゃがんでいたのでわからなかったが、背丈はラナより頭一つ分くらい低いらしい。
「あなたは私と来てちょうだい。大丈夫、ところどころ怪我してるみたいだけど特に大きな外傷もないようだし、検査も徹底させておくわ」
「変なことはしないでください。確約が得られなければ私も行きます」
下からにらみつけるような上目遣いで少女がラナの目を見る。この少女にそんな顔をさせるほどの関係が築かれているのだろうかと、ラナはなんとも言いがたい心持で少女の目を見据えた。
「OK、約束しましょう。もし何かあったなら私の首を掻き切ればいいわ」
それが可能かどうかは別として、それくらいの覚悟がある、という意味の台詞は、確かに少女に通じたようだった。視線を交えたまま、しかし少女の目から急速に力が抜けていく。
「……体内にナノマシンを注入されているんです。できればそちらのほうを重点的に調べていただけますか?」
 少女は懇願するようにラナの目を見る。ラナは一瞬眉をあげたが、すぐにもとの表情にもどる。
「伝えておきましょう。じゃあ、こっちへ」
 少女を促し振り返る。と、数歩進んで立ち止まった。
「あー、ちょっとまって」
 そういうと、近くにいたロングコートを羽織った兵を手招きする。
 不思議そうな表情でよってくる彼に対し、
告げた。
「ちょっとそのコート貸してくれる? 後で乾かして返すから」
 言われて、彼は何かを察したようだ。いそいそと脱ぐ彼を尻目に、ラナは自分のコートの側面にあるポケットを探り、一枚のハンドタオルを取り出した。脱ぎ終わったコートを受け取ると、少女のほうに振り返る。ハンドタオルを彼女の頭に載せ、後ろに回ってコートを彼女が着込んでいたジャケットの上から掛けた。
「とりあえずはあなたも応急処置よ。後で着替えも用意してあげるから、移動する間は寒いだろうけどこれで耐えて頂戴」
 あっけにとられて呆然とする少女。

 不思議な人だ、とイルセナは思う。
 引き上げられてから直後、ざわめきとともに私を囲んできた数人を押しのけて彼女が現れたとき、その場の空気が一変した。
 先ほどもそうだ。一度は一触即発な場面になったというのにそれをものともせずに飲み込んでしまった。
 一見したところでは、彼女はかなり若い。それこそ二十台後半かそこらだと考えられる。それほどの若さの人間が、果たしてこれほどの統率力を持てるものなのだろうか。
 掛けられたコートの裾を引き、身を隠すように手繰る。
「……さて、こういうときはなんて言うのか知ってるかしら?」
 前に回りこんできた彼女は少しうつむいていたイルセナの顔を少しかがんで覗き込む。
「……ありがとうございます」
 私は寒くありません、とは言えなかった。とりあえずは素性を明かさないほうがよさそうだ。先ほど同意したとはいえ、うかつなことは言わないほうが良いだろう。
 この船。発見できたのはほぼ偶然といってもいいだろう。今運ばれていく彼を背負ってなんとか一度海中から飛び出したとき、偶然ガイドビーコンが光っているのを発見したから良いようなものだ。体内のセンサーにはまったく引っかからなかったことから、船体は迷彩処理が施されていると見て間違いない。
 だとすれば、この船はどこかの軍属、あるいは何らかの組織に所属していると見て間違いない。見た直後は帝国軍の可能性も考えたが、この近くにファマルダとは別の海軍基地があるという話はデータにはなかった。
先ほどから見た感じ、ここの人間が着ている服は軍服ではない。一応特定の規律の制服のように見えるが、一部私服とおもわれるものも数名いるようだ。特殊な組織であると考えるのが妥当だろうか。
ディエラスといい、イルセナといい、抜けてきたとはいえそういう組織に身をゆだねるのはかなり危険だとも判断できたが、それでもこのまま沈み行く機体とともに深海に伏せるわけにもいかず。
 こんな形でも、とりあえずは両者ともしばらく生き残れそうなのは大いに助かる。
 しかし、先ほどの形態変化については後々聞かれるのは覚悟しておこう。どう答えるべきか、ディエラスの意識が戻るまではなんとか黙って置くようにしておきたいと彼女は思う。
「んむ……」
 ハンドタオルをつかんでみたはいいが、腰まである髪は長すぎてすべてを片手ではひどく拭きづらい。とりあえず前髪と顔だけさっと拭いて、後は部屋を移動してからにする。滴り落ちる雫は自分が気にするところではないだろう。
 歩き出したラナに歩調をあわせ、歩みを進めることにした。
 ちらと視線をながすと、ジェストールが周囲にいた兵に助け起こされているのが見えた。どう見ても、その辺りにいる兵よりは体格がいい。そんな彼を、たった一撃で体勢をくずすとは、一見細身に見えたが意外と力があるのだろうか。
 長い黒髪、背丈は周囲にいる男性兵より若干低い程度だから、ザフュセル帝国の哺乳系人間の女性の平均で考えると高いほうだろう。
 ちょっとうらやましい。
 そう、一瞬だけ彼女は思った。
(何を考えているんだろう、私は)
 時折、無駄な思考が入る。今はディエラスが起きるまでの間、そして起きてからをどうすべきか考えねばなるまい。
 不安は多い。色々と思考をめぐらせながら彼女は歩く。なぜ不安などというものを感じるのかは、彼女は考えなかった。
 あと一つ、不安とは別口なのだが、気になっていることがある。
 先ほどから、どうも体内の計器の調子がおかしい。
(まさか、ね)
 そちらに関しての思考を止めておく。
 明らかに先ほど身を浸したのは海水だった。周りには生物の反応もあったのだ。間違いなく海であった。
 それなのに海抜が零より高い数値をはじき出すなど、故障以外の何者でもあるまい。
(思考に故障か……)
 機械の身を持ちながら、内部でそんな処理が行われている自分を、彼女は小さく自嘲気味に笑った。いったい自分は何なのか、と。

「……ってえなあ」
 ジェストールは立ち上がって首を振る。先ほどの一撃が妙なところに入ったらしくうまい具合に体に力が入らなかった。
「悪いなおめえら」
 やっとこさ立ち上がると、引き上げてくれた兵に礼を述べる。
「大丈夫ですか?」
 左隣の男性兵が心配そうに声をかけてきた。
「いきなり殴るかぁ? 普通」
 憤慨したように声を荒げる。首を思いっきりひねると、派手にごきごきと鳴った。
 視線を流すと、先ほどの少女が出口を出て曲がっていくところが見えた。ラナの姿が見えないところを見ると先導しているのだろう。
「何者なんでしょうか、あの二人」
「俺が知るかよ。……まあ、敵だろうがなんだろうが、ラナが責任もって面倒みてくれんだろうよ。俺達がでる幕じゃなくなっちまった」
 眉を寄せ、頭をかきながら彼は言う。男性兵は怪訝な顔をしたが、かまうことなく彼は続けた。
「まあ、なんかあってもあいつが『処理』しちまうだろうから問題ないだろ」
 軽くため息をつくと、彼は今しがた少女が出て行ったほうへ足を向ける。
「……どちらへ?」
「検査まだだって言ったろ? いい感じにそろそろだ」
 足取りが微妙に重そうなのは気のせいだろうか、と彼を見送る兵達はふと思った。




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