匠のつぶやき  Vol.32

桃の節句にときめいて・・・。


 「ひな祭り」。
 子供の頃は待ち遠しくてたまらなかった。
 でも、祖父母が他界し、二人の兄たちも相次いで独立、家を離れていくと、家族揃って祝う事が縁遠くなっていきました。
 そんな或る日。
 一人のご婦人から孫の初節句にとのご依頼があった。
 「忙しいお嫁さんでも簡単に飾れ、それでいて豪華な衣裳をまとったお雛様の掛け軸を作って欲しい」とのこと。
 さて、さて、「ちょっとばかり欲張りな注文だな」と思いつつ、これも「世相の流れ」と納得し、イメージに合うまで試行錯誤を繰り返して仕上げました。
 この雛まつりの起源は奈良時代。
 中国から伝わった「3月3日に身の穢れを人形に移して川に流す」という厄払いの行事『上巳の祓え(じょうしのはらえ)』。
 そして今は女の子の「ハレの日」として知られる。
 魔除けの『赤』、子孫繁栄と純潔の『白』、これに厄除けと健康の『緑』と、それぞれ意味のある三色で作られている菱餅にも、健やかな成長を願う親の気持ちが込められていたのですね。
 そんな思いを込めて今年も自作のお雛様を飾っています。
 えっ?私の心境ですか。
 いわれも何も知らずに、大人たちに囲まれてはしゃいでいた子供の頃にタイムスリップするとともに、家族と暮せる幸せをかみ占めております。
 春本番ははもうそこまで。


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