匠のつぶやき  Vol.3


「装芸画」にいざなう力




高校生の課外授業で装芸画の説明をする筆者

 今、建築用語が風化しているようです。三和土(たたき)・長押(なげし)・鴨居(かもい)・欄間(らんま)・床の間等々。そんな中、表装用語は更に現実離れしていっております。掛け軸、屏風、衝立てなど美術館や骨董市でしか見られないものになっています。
 明治維新以降でしょうか、西洋の文化に傾倒していった原因はどこにあったのか定かではありませんが、着る物や住宅様式、音楽や芸能、スポーツも一時期は“ご飯粒”までが「和」のものというひとくくりにされて、時代遅れのように思われていた感がありました。それらすべてのものが、見直されてきたのは、つい最近ではないでしょうか。カルチャーセンターなどで地道に日本の伝統文化を広めていらした諸先生方には心から敬意を表します。
 私も機会が与えられれば、これまで、なるべく多くの資料を携えて、表装の技術と、それを根幹とする「装芸画」の存在を一人でも多くのかたに知っていただくよう努めてまいりました(つぶやいてばかりではないんですよ)。
 海外展のオープニングにも、たった十五分のデモンストレーションのために、重量オーバー覚悟で必要最小限のすべての道具をトランクに積んでいきました。実技による無言のアピールは、言葉の壁を越え現地の人をうならせました。それは私個人の力でなく、紛れもなく師匠の力、更に言えば日本人の先人の知恵の賜物です。その実感と誇りに感謝の気持でいっぱいです。
 また、地元の高校生の課外授業でも、若い世代の予想外の反応に、確かな手応えを感じ、表装を通して装芸画の明るい未来が見えてくるのです。


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