■ Innocent World・・・writer:Yuka.A

いつだって君の傍にいて
いつも笑っていたい
ずっとずっと手を握り合って…
もう夢物語なのかい?

あれは夏休みの中で一番暑い日だったと思う。
短い間彼女だった君と『友人』として逢った日のことだった。 
 「今の私たちの生きてる時代ってまるで『innocent world』よね」

公園によくある長い木製のベンチに二人並んで座り君は空を見上げながらポロっとそんな台詞を口にした。

 「『innocent world』って和訳すると・・・『無邪気な世界』?実際どうなんだろな・・・」

誰に言った問いかけでもなく俺は座ったままストレッチをしてくう〜っと身体をベンチの背もたれ部分に預けた。頭上に広がる雲一つ無い空、風もそう強く吹いていなかった。

 「ん〜…どうなんだろ?」

ちょっと長めに沈黙を破った一言は…いつもの君らしさで溢れていた。
俺はそんな君にチョット安心して、身体を元の体勢に戻した。

 「でもね…今私たち17歳になってるでしょ?あっ私はまだだけど…そうするとね、今が一番楽しいんだよ?って言われるとちょっと考えちゃうの」

はにかんだ笑みで俺を見ると君はまた俯いてしまった。その一言が彼女にとって何を意味するのか、俺はすぐ悟れた。だが今俺に出来る事を考えてしまうと…考えない様
にしていた事までが頭を巡り何時の間にか膝においてた手が拳をつくり、そこに力が入っていた。

 「………」

続く言葉が見付からず俺はただ黙ってるしかなかった。だがそんな事で少しも彼女が救われる訳でもなく一生懸命、次の言葉を捜した。

 「じゃあ…色々考えてる中に俺っている?」

ホントはもっと気の利いた言葉を言いたかったが…その言葉は余計彼女を困らせてしまったらしい。今度はさっきより気まずい空気が流れていた。

 「なぁ!!そろそろ戻らないと!!ほら外も暗くなって来たし…戻ろう?」
 「そうね…もう5時?早いな〜もうちょっとココにいたかったね」
 「じゃああと5分だけココに居る?」

俺の提案に君は凄く意外そうな顔をしていたが満面の笑みでウンと頷いてくれた。

 「はぁ〜でも良かった。今日がこんなに晴れて!!だってこれが最期の外出許可だったかもしれないんだもん…ゴメンネ急に呼んじゃったりして」

俺はそんな恐縮しきった君を見るのが辛く目を閉じかぶりを振った。

 「俺…そんな役に立つようなヤツじゃないからせめてこういう時はな…一緒に居たかったのが本音だし…むしろ呼んでくれてこっちが嬉しかったよ…おっそろそろ行かないとヤバイな…戻ろうか」

そう言って俺たちはベンチを後にして白い棟のある建物へと向った。君と歩く時の癖がまた再発したのか、俺の歩くスピードはゆっくりになっていた。

「でも、ホント私の勝手なワガママで来てくれて…一緒に居てくれて…こんな私に…短い間付き合ってくれて―今更だけど本当に有難う御座いました」

そういって頭を下げる君、最後の方はもう涙声だったがそれはまるで最期の別れの台詞の様でもあった。
俺は何も言わず君を抱き寄せた。もう涙は見たくなかったから…。

 「なぁ…そんな事言うなよ…生きろ、俺はまだ―」

その先は今言うべき台詞ではないと咄嗟に判断して俺は君が声を殺しながら俺のTシャツを濡らしていくのを感じながら、力いっぱい君の存在をこの腕で噛み締めた。

今の自分に出来る精一杯の想いを込めて…。
幸い君が泣いた場所は棟と棟の間で傍から見ると死角の位置だった為周りを気にする心配はなかった。それから暫くして君は顔を埋めたまま口を開いた。

 「だって…本当は早く忘れて欲しかった…ホントは告白された時だって断ろう断ろうって考えたの。でも…自分の気持ちに嘘はつきたくなかった…それが返って貴方に甘える結果になって、苦しめちゃったんだけど…そうして貴方の負担になっていったわ、重荷に…だから!!」

その先は言わなくても判っていたから俺はもう一度抱き寄せた。初めて訊かされた君の本音、友達の戻る時でさえ教えてくれなかった真実。俺は正直驚いたが…ひとつだけ大きな誤解があった。同時に『それくらいどうだっていうんだ?』とも感じた。

 「重荷?なら半分ずつ分ければイイじゃん。君が半分、俺も半分…まぁ俺の重荷なんて勉強以外ないに等しいがな…俺は少しでも力になりたいんだ…だから」

―共に…一緒に闘おう?

そういうと君はまた申し訳なさそうに首を前後に振った。俺はホッとして君の柔らかい髪を優しく撫でた。

 「そんな顔するなって、あのな〜…深く考え過ぎ。俺は単純な単細胞なんだから!!」

そういうと君はこの日初めて何の陰りも無い笑顔を見せてくれた気がした。


…あの日から今日で2週間近くが経った。季節は温かさを求める時期になり、流石の体力馬鹿も今日は長袖のYシャツだ。俺は今日も学校帰りに君の元へ向った。

白いカーテンのなびく部屋に居るあの部屋へ…。

 「おう、元気?クラスのみんなも心配してたぞ?でももう少しで退院だな…んで、これが今日の授業のノート」

ハイと渡すといつも有難うと君は笑う。

 「それと…こっちが―」

俺はワザとらしくもったいぶって学校鞄のリュックから大きな包みを取り出した。

 「Happy birthday!!」

昨日帰り際駅前で買ったクマのぬいぐるみを渡す。

 「手術の成功祝いも兼ねてな」

ホントは買う時とか凄く恥かしかった!!とは言えずただ頬を掻くだけだった。まぁあと2,3日で退院だというからその時はどこか出掛けようと密かに計画中だった。

 「…?その様子だと自分の誕生日も忘れてた??」
 「え…?あっ…だって私の誕生日知ってたの?」

そっちを突かれたかと思い、ああとだけ返事をした。本当はクラスの女子に言われて知ったとは言えなかった。俺はゆっくり君のいるベッドに座るのを見届けた。
これだけでも相当俺は勇気の居る行動だと思うのだが…

 「それとさ…ホント今更だけど俺たちやり直さない?」

更に意外な発言に君は戸惑いを隠しきれなかった様子。私なんかと終いに言い出したので俺は咄嗟に手で君の口を塞いだ。

 「…ったくまだ言う?それは言わない約束だろ?」

そしてお仕置きだと言わんばかりに口唇を重ねた。
君は受け入れてくれたから…また同じスタートラインに立った喜びも込めて…。外に出ると昼間の気温とはうって変わって思わず身震いしてしまうほどだった。


闇に包まれた空を見上げると星たちがまるで俺らを祝福してくれる様に散々と眩いていた。

 

参加者さまより:暇つぶしSTORY完結。授業2時間かけて完成に至ったと思います。
ただコレは改良版。しかも4回目(笑)
当時考えていた様々な疑問を彼らに課せてみた。
…彼らに名前が無いのは…まぁ気まぐれで(苦笑)
勿論Innocent Worldはミスチルから拝借デス!!
コレは完璧フィクションです。私の空想世界なので…
ただ…長過ぎですね(汗

管理人より:はいっ♪ありがとうございました♪
いやぁ〜♪サリオ、ミスチル大好きなんっすよねぇ〜♪
え?だから、櫻井なんじゃないですよぉ☆(焦っ☆)←だれも、聞いてない?
ま、それは置いといて♪授業中っ!!
って、まぁ、サリオも同じかことやってたな・・とふと思ったりして♪
笑ってしまいました♪
「innocent」を「無邪気」と訳すあたりが♪祐香さんらしいですね?
夏も終わる頃のお話なのに、何だか
小春日和な気分になってしまうのは、お話の温かみからでしょうか。
大切な時間を割いての投稿♪本当にありがとうございました☆