■ 想々・・・writer:Yuka.A

稲妻が地上に轟き、私は導かれる様にそのお店へ入っていった。 
―― ココに来たのは何年振りだろう?

店内は、ほぼ満席の状態で私は待ち合い様の椅子に腰をかけた。相変らず年代層も幅広く老若男女が楽しそうにお喋りをしていた。
私も待ち合わせなどでよくココを利用してた一人だ。お店の雰囲気と店長サンの絶妙なキャラがダイスキだった。
暫くすると…2、3分くらいだけど…一人の男性が足早にやって来た。

 「いらっしゃいませ」

接待に応じてくれたのはココの店長サンだった。私が通い詰めていた学生時代と全く変わらない店長サン。

―― …彼は一体幾つなのだろうか?

そんな疑問を抱きながら私は一瞬だけ学生気分に浸ってしまった。
今はれっきとした社会人なのに…

 「一名様でしょうか?」
 「はっハイ…!!」

私は我に返り思わずマジマジと店長サンを見てしまった。

 「只今店内込み合っていて相席になってしまいますが…」
 「あっ構いませんよ?」
 「そうですか…では2階席の窓際へどうぞ」

私は店長サンの後に続き螺旋階段を昇り案内された席へと向った。

店長サンが相席の件をそこのテーブルに座ってたサラリーマン風の男性に説明すると彼は快くOKしてくれたようだ。私を手招きで呼び寄せた。

 「あっ…今、鞄どかしますね…」

私はその声にどこか懐かしさを感じたが気のせいだと思い、彼はよいしょと言いながら自分の席の下へ革の鞄を置いた。

どうぞと言われ、私はやっと声の主が判り、回れ右をしてお店を出ようとさえ思った。

 「…雅黄?…」

思わず呟いてしまった彼の名前、無論呼ばれた本人も私に気付き、やぁと片手を上げた。

―― …参ったなぁ

と内心では溜息をついたけど一応驚いた表情のまま席へ着いた。

まさか本人目の前に『逢いたくなかった人NO.1』とは言えず…。
それは彼が私の高校時代付き合っていた彼氏だったからだ。

 「久し振り…こんなトコで逢うとは思わなかったよ」

私も…と本心を伝え店長サンがやってきた。

 「こちらホットココアになります」

コトっとカップを置き、クッキーがのせられた小皿を置いた。

 「有難う御座います。でも…クッキーは…」
 「私からのサービスです。お口に合わなければ残して構いませんから」

それではと言ってまた螺旋階段を降りて行った。

 「流石店長…常連だった私の頼む飲み物覚えてたんだ…」

 「?もう何年もココに来てないのか??」

私はええと言ってホットココアに口をつける。つられる様に雅黄もブラックコーヒーをすすった。

 「そう言えば…雅黄大学院には進まなかったの?」
 「ああ。何だか行く気無くしてな…就職先はまたこっちにしたんだ」

そう…何だか複雑な心境になってきたな〜と思いつつ私はサービスクッキーをひとつ摘んだ。

 「雅黄もどうぞ」
 「じゃ、遠慮無く…」

大きな手が小皿に伸び、彼の口へと運ばれた。

 「「相変らず美味しいよね」」

何故か同じ台詞を吐いてしまい、お互い笑った。ただ私は乾いた営業スマイルだった…。

私は窓の外に視線を移し、駅前を彩る傘を眺めていた。まだ外の雨は酷い様子だ。

 「何だか変わらないな…ココ」

―― 急にどうしたの?

と私は彼に言った。いやなんとなくねと少し照れた様子でまた答えてくれた。

 「でも…あれから5年経つんだな…覚えてる?ココで僕ら別れたの」

彼の台詞に私はワザと無反応でカップのココアを見つめた。
何を今更…振ったのは貴方なのに…思い出したくない古傷が一瞬のうちに開いた。

 『…友達に戻ろう…』

何の前触れも無く言われた一言…突然の出来事に私は戸惑ったけど…
最終的に私たちは友達に戻った…。
ただ、この後に及んでどうしてそうズバズバ酷い台詞を浴びせられなきゃいけないのか?
私はウンザリしながらそうねと言った。
まだ昔の殻に閉じ篭ってる自分を馬鹿だと思いながら…
 
 『諦め悪いからね?』

確かそんな台詞を最後に言い残した気がする。
残りの学校生活も友達として過ごした…大学に入っても…。

―― でも私はー…

 「ずっとね…忘れられなかったの…別れた後も…言ったよね?諦め悪いって…」
 「…………」

私の話に彼は黙って耳を傾けてくれた。
もうその時は気持ちを偽りたくなかったから私は必死で言葉を捜した。

 「…今更何だよぉ、とか思うだろうけど…ずっと、今でも―雅黄が好きなの」

もう7年も経ってるのにね、と自嘲しつつ彼の反応を窺った。
これで私の諦めの悪さがどれだけか判ったでしょ?そう思いながら長い長い沈黙が過ぎていった。

 「有難う…」

私は振られるの覚悟で言ったのに…その返事の意味が判らなく首を傾げた。
彼はそんな私を見て小皿に残ってた最後の1枚のクッキーを差し出してきた。

 「あの時はゴメン…やっぱ遠回りしたけど僕も咲音が忘れられなかった」

私はクッキーを半分だけ受け取った。そして私たちは笑ってまたあの頃の話をした。

 

店内は暖房はかかってない筈なのに…不思議と温かかった。


 

参加者さまより:ちょっと長くなってしまいました。
でもこんなカフェも有りかと思って書きました(笑)
もうサリオさんのカフェぶち壊す勢いで(イヤそりゃあヤバイけど)
ちょっと実体験含めて見ましたけど…如何でしょう??
また第3弾など書けたら書かせて頂きます☆YUKA
サリオ様
ホント申し訳無いくらいカフェワ〜ルド壊しました(焦)
偶然の再会をテーマに舞台をこのカフェにしてみました。
店長サン私ダイスキなので(笑)脇役ながら美味しいトコを…(エヘ)
出してみたりなんかして♪(もう日本語ヘンです)
次は…書けたらまた報告に上がります(まだやる気です)
ではA以上祐香でしたm(_ _)m

管理人より:

ありがとうございましたぁ♪
タイトルお任せ♪とのことだったので、サリオ的カフェ思考で
それらしい造語を作ってみました☆笑
ごめんなさいねぇ〜・・・。ラブストやらカフェやら、うすうす気が付いてると
思うんだけど・・・サリオ基本的にタイトル考えるの苦手なんです・・・。
何か、趣味悪いですよねぇ〜・・とほほっ☆

ま、それは置いておいてっ♪
祐香さんのカフェイメージは、ファーストフード店♪ぽい明るい感じがしますね♪
2階があったことに個人的には驚いたっ☆笑
マスターっ?!そうだったのっ?!
と詰め寄ると、笑って流されそうだ☆
忘れられない思いってありますよね☆うんうん。
忘れられない思いを「忘れる」必要って本当にないのだと思います。
それは生きていれば、一つや二つありますしね・・。
「人」に対する思いは千差万別。
「私」はその思いをここで、きっかけを得て吐き出すことのできた
とっても強運の方だと思います♪
転がっているチャンスを見逃したくないものですねぇ♪

今回も、cafe参加本当にありがとうございました♪
また、ご入用の際は何なりと・・・。