鉄道ストラクチャー電子工作(KNA9)


 筆者KNAの制作したギミックストラクチャーについて、回路図を紹介します。またPICプログラム(C言語/HEX)をダウンロード頂けますので、情景制作のご参考にご活用頂ければ幸いです。
(製作には電子基板を組み立てる工作と、プログラムをICへ書き込む装置が必要となります。)
 自分には作れないという方へ、製作の代行(頒布)やカスタマイズを致しますのでお気軽にご連絡メール下さい。ご質問も大歓迎です。
皆さまのジオラマレイアウトと共創できることを楽しみにしています。


<頒布について>
左から、①IC(書き込み済み)、②ブレッドボード回路kit、 kit内容物、③ストラクチャーパーツ、の例

②ブレッドボード回路kitには①IC(書き込み済み)が含まれます。③ストラクチャーパーツは②kitのオプションとして追加可能です。
ブレッドボード回路kitの配線図と組み立て例(ブレッドボード組み立て済み提供も可)

踏切警報装置(警報灯+警報音):KNA9_cross
踏切警報装置(警報灯+警報音+特殊信号発光機)Ver.2:KNA9_cross_pentaV2
電球型場内/遠方信号機:KNA9_signal
特殊信号発光機(ペンタゴン信号):KNA9_pentagon
レーザー遠隔ポイントマシン:KNA9_point
蛍光灯/ネオン点灯(アーク溶接光付き):KNA9_lumi
電源電圧 DC/AC 6-15V (006P乾電池対応)
※全ての回路は、PWMパワーパックによる線路からの受電に対応

○踏切警報装置(警報灯+警報音)
①IC(PIC12F1572プログラムzip)/ ②ブレッドボード回路kit / ③リード付き交互LED2組(頒布価:¥500 / ¥1,500 / ¥1,600 )

 踏切警報音(カンカン音)を作りこみました。リアルサンプリング音とシンセサイザー音を小さなICで実現するために 長く試行錯誤を重ねましたが、ようやく納得いく音にたどり着きました。スピーカーから少し離れて聞くと、家の外で 本物の踏切が鳴っているのかと聞き違えるほどです(個人の感想)。PWM出力を用いたD級ドライブは、模型に用いる 20mmΦ程度の小さなスピーカーでは帯域特性が狭いため、フィルタ回路レスでダイレクトに鳴らしても孫色ないのですが、 ICとスピーカー保護のためあえてフィルタ回路を設けました。4種類の踏切音(ローカル線ベル、JR、シンセJR、シンセ私鉄、 サイレント)をスイッチで切り替えて再生できます。ローカル線とJRは津軽鉄道とJR一本松踏切を3bit8kHzのパートサンプリングで再現しています。 交互点滅灯は2組(対抗)用意しており、交互周期を微妙にずらして実感を出しました。もちろん実物どおり警報音と点滅周期も同期していません。
1.ローカル線ベル(パートサンプリング)
2.JR(パートサンプリング)
3.JR(シンセサイズド)
4.小田急電鉄(シンセサイズド)
 ※ダウンロードプログラムはJRパートサンプリング{Data on SRAM}とシンセ音2種です。なお添付した踏切音データ2種は、{Data on FlashMEM}用 (1word14bitのProgramエリアで上位6bitと下位6bitの2byte)のデータです。

○踏切警報装置(警報灯+警報音+特殊信号発光機)Ver.2
①IC(PIC16F1705)/ ②ブレッドボード回路kit / ③aリード付き交互LED2組 / ③b支柱なしペンタゴン信号機(頒布価:¥700 / ¥1,700 / ¥1,600 / ¥1,500)

 上述の踏切警報装置をグレードアップした超リアルな6bit8kHzフルサンプリングによるICも用意しました。是非、実際に鳴らした下記のサンプル音をご視聴下さい。本物と言っても過言ではない出来栄えです。警報器1基分のシングル音と対向2基分の合成音、及び旧シンセ2種の6種の音を載せた容量の大きい14ピンPICです。 踏切に支障があるときに回転発光する特殊信号発光機(ペンタゴン信号)のドライバも実装済みです。
A.津軽鉄道(フルサンプリング)
B.JR一本松(フルサンプリング)
C.津軽鉄道(フルサンプリング)対向合成
D.JR一本松(フルサンプリング)対向合成
 ※このkitは給電部(レギュレータ等)がブレッドボードに載らず(入力電圧DC3.3-5.0V仕様)となりますが、部品は同梱します。

○電球型場内/遠方信号機
①IC(PIC16F1503プログラムzip)/ ②ブレッドボード回路kit / ③支柱なしLED信号機3種[場内/通過/遠方](頒布価:¥400 / ¥1,400 / ¥3,100 )

 電球のようにスーっと消えてボーワッとLEDが点く信号機です。場内信号に連動した遠方信号と、通過信号を再現しました。 場内信号が赤5秒→橙5秒→青25秒と切り替わり、追従して遠方信号が橙→橙青→青と変化します。通過信号は場内信号の繰り返し毎に 青⇔橙が交互します。手動操作で赤20秒へ切り替えるSW端子があり、センサーを付ければ列車が通ると赤へ切り替わる動作をします。

<列車センサーについて>
 PWM常点灯パワーパックではセンサーが簡単に済むことを見つけました。+/-どちらの極性のレールもOFFデューティー時には-極となるので、回路から線路へ電流が流れたかどうかにてセンシングできるのです。 (+極レールはOFFデューティー時、車両のモーターやパワーパックを通して-極となります。) これを利用するとどちら側のレールでも良い、車輪が触れるだけで列車通過を検知できるセンサーが作れます。動力車の車輪は他の同じ側の車輪と導通していますので、 一つの車輪がセンサーへ触れれば他の車輪を通してレールと導通し、-極へ電流が流れます。
試したセンサーは線路のジョイント部のレールギャップに挟みこむとても簡単なものですが、 小さくて目立たなく、良い信頼性で通過を検知しています。
(なお列車の進行方向は、受電電圧のパルス(Hレベルやエッジ)有無で判定できるので、進行方向に応じて点灯パターンを変えることも可能と考えています。)


○特殊信号発光機(ペンタゴン信号)
①IC(PIC12F1501プログラムzip) / ②ブレッドボード回路kit / ③コンクリート支柱ペンタゴン信号機(頒布価:¥300 / ¥1,100 / ¥1,900 )

 この警報機は踏切の非常ボタンが押されたり、支障検知器が反応した時に点灯するらしいです。発報時を実際に観たことがないため、クルクル回る前後に少し脚色しています。全点灯→回転発光→バースト発光 、この方が緊急感が出たようです。プログラムは30~150秒間隔で45秒間の発報する自動発報を標準に、SW端子の導通で任意に手動発報することもできますので、実物の機能さながらの使い方ができそうです。 (ちなみにPICを使わず汎用ロジックICで構成した回路も上手く動きましたので、ご参考まで)

ATS/踏切警報機付きペンタゴン信号機
 試作したATS(自動列車停止装置)は、警報発報時に規定時間内で列車を停止しないと、レール間をトランジスタでショートして強制停車させます。これは線路受電PWMならではの機能で、ショートさせても電圧フィードバックや過電流保護の働かない パルス駆動時のみ動作可能で、DCパワーパックの車両走行には使用できません。(ショートと言っても完全に短絡される訳ではなく、もう一車両分の電力を使ってしまうことで、走行中の車両を止めるもの ですので、車両によってはパワーパックから線路への給電線へダミー抵抗を追加する必要があります。)
線路間がショートされるとこの回路への給電も断たれてしまうため、スーパーキャパシタを実装してATS作動中でも動作を止めずにペンタゴン信号を点灯できるようにし、 数分以内であれば自動でATS解除できるようにしました。現バージョンは、ペンタゴン信号発報16秒間以内に安全停車させないと、ATS強制ブレーキ12秒間が働きます。 安全区間を設けて信号を観ながら停車させる、緊張感のある運転を楽しむことができました。
全ての車両での動作を保証できるものではなく、自己責任による使用に限られますが、ご希望の方へはICのみご提供いたします。


○レーザー遠隔ポイントマシン
①IC(PIC12F629プログラムzip) / ②ブレッドボード回路kit / ③入れ替えLED信号機(頒布価:¥400 / ¥1,600 / ¥1,800 )

 PWM常点灯のパルス電圧で動くポイントマシンドライバを作りました。遠い場所への分岐器の設置に便利かと思いレーザーポインタで切り替えられるようにして、パワーパックからポイントへの配線を不要にしました。 TOMIXのDCポイントマシンは6V以上で動き出し8Vで確実に動くようでしたので、コンデンサに8V以上の蓄電できるかが鍵でした。切り替えパルス幅はオシロで確認し最適化して40mSecに設定しています。 PICを使わずに汎用ロジックICで構成すると、スマートでカッコよい回路図になったのでそちらもアップしておきます。最終バージョンは分岐方向を入れ替え信号機で表示するものに改良しています。

○蛍光灯/ネオン点灯
①IC(PIC12F150プログラムzip1) / ②ブレッドボード回路kit / ③リード付きLED4種(頒布価:¥300 / ¥1,200 / ¥1,700 )

 ジージーピカッとネオンが切れかける中、電球がボ~ワッと、蛍光灯がピカッピカッツーッと点灯。SW端子の短絡で、点灯開始と踏切警報機の交互点滅をON/OFFできます。ICを2つ以上チェーン接続すれば、蛍光灯が遅延して徐々に点灯する LEDチェーンドライバです。SWを短絡したままで電源を投入すれば、ネオンLEDがアーク溶接光モードとなりバーーッババッバッと発光を繰り返します。繰り返し周期にはランダム性を入れてみました。 (アーク溶接光に特化したバージョンAもあります)


<パルス制御型(PWM)パワーパックについて>
 現在、鉄道模型を走らせるための電源パワーパックは、直流(DC)電圧制御からパルス制御型が主流となり、 常点灯の機能が一般的になっています。常点灯機能とは車両が走行するためのモーターが回らない程度の 短いパルス電圧(DC12V)を線路へ給電して、停止させた状態で車両に仕込まれたLEDだけを点灯させる機能で、 パルス幅を長くすればDCモーターも回せるため、パルス幅を可変するタイプのPWM(パルスワイズモジュレーション) コントローラで実現されています。(私の調べたところ、各社パワーパックのパルス周期(周波数)は20KHz程度で、 TOMIX車両はパルス幅50us以下で停止点灯しますが、KATO車両は周期20KHzでは制御できず5KHz以下でないと 点灯しないものが多いようです。周波数を可変できるオールモードPWMコントローラの制作記事は追って紹介します)
 通常、常点灯は車両のヘッドライトや室内灯を点ける機能ですが、折角なのでストラクチャーの灯りやギミックの駆動に 使ってみようという発想で回路を設計しました。もちろん、従来のDCやAC電源(6-15V)でも動作するコンパチビリティを持たせて いますが、実は線路のパルス電圧を使うとストラクチャー専用電源には出来ないことを実現できる可能性を持っています。 そしてなにより、ストラクチャーは線路際に配置されますから、線路からフィーダーを使って受電すれば配線がとても楽になります。